疑うことの意味
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は非常に短い設問の問題について考えてみます。
最近の傾向はある程度長さのある課題文が提出され、それを要約しながら内容を練り上げていくタイプのものが多いです。
しかしそれに反して、ごく短い文章を示し、考えたことを書きなさいというタイプの問題もあります。
実際に解答を試みてみてみれば、その難しさがよくわかるはずです。
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どのような問題が過去に出たのか、実際の設問にあたってみましょう。
かつては哲学者、科学者の箴言などが、テーマ型としてよく出題されました。
現在でも、都立西高校では毎年、短い文章が提出され、600字程度での解答を求められます。
過去問については、文末にリンクを貼っておきます。
時間のある時に読んでみてください。
多くの受験生は自由度の高い問題だけに、毎年かなり苦しんでいるようです。
問題が短ければ短いほど、内容は高度なものが増えます。
ヒントが非常に少ないので、はずれた時は惨憺たる結果に陥ります。
ここでは1行だけの入試問題に挑戦してみましょう。
具体的な問いは以下の通りです。
2020年、早稲田大学スポーツ科学部の入試問題に出ました。
問題はわずかな長さです。
「科学とは疑うことである」という書き出しで、その文字も含めて601字以上、1000字以内で論じなさい(制限時間90分)という、まさにこれだけの文章です。
主題を何にするか
この問題を読んで、あなたはどんな印象を持ちましたか。
何を主題にしてまとめたらいいのか、悩んでしまいますね。
書き出しだけが決まっています。
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「科学とは疑うことである」から書き始めなければなりません。
それ以外には何も指示がないのです。
ヒントはいくつもありません。
スポーツ科学部で出題されたという事実です。
論文を書くときに役立つヒントはなにかといえば、この学部で出題されたということだけです。
「スポーツ科学」という学部名こそが最大の足がかりです。
ここから山を攀じ登らなければならないのです。
キーワードは「スポーツ」と「科学」の2つだけです。
この両者の関係は近年、大きく変化していますね。
以前には考えられないほど、スポーツに科学が取り入れられているのです。
従来、スポーツの世界は精神論で進もうとする傾向が強かったです。
いわゆる「根性」もののコミックそのものの世界です。
汗をかき、涙を流して監督の指示に従う。
やがてその果てに、栄光が待っているという構図です。
しかし今や、その常識は180度覆されたといってもいいでしよう。
例えば、筋肉を鍛えるという基本的な考え方1つでも、以前とは全く違います。
インナーマッスルを豊かにするなどいう発想は、かつてありませんでした。
つまり全てが科学的な疑問から始まるようになったのです。
従来、筋肉はどこにあれば理想的だと理解されてきたのか。
それも医学の発達で大きく様変わりしました。
スポーツと言語化
現代のスポーツ科学の発達は目を見張るものがありますね。
人間の肉体の構造をより科学的に分析することが可能になりました。
その結果、ウェアから靴に至るまで、想像以上の進歩を遂げています。
従来の記録を塗り替えるようなスポーツ用品が、巷には溢れているのです。
このあたりをうまく利用して、文章をまとめていくというのはどうでしょうか。
科学とスポーツの接点としては、好材料です。
自分自身の経験があれば、なお説得力が増すでしょう。
さらにスポーツと言語化の問題もあります。
理論よりも直感に頼る時代が長く続きました。
データは監督やコーチの脳の中にしかなかったのです。
それをAIが可視化することに成功しました。
大画面に精彩な画像で、競技の様子を映すことができるようにもなりました。
わずかな傾斜の差や、力の入れ方を瞬時に判断することさえ、可能になったのです。
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まさに科学がスポーツの背後から、力を貸せる時代がやってきました。
それも1つの疑問から始まっているのです。
データをなぜ誰もが平等に見られないのか。
熟練した人の脳髄だけが最後の砦ではないはずです。
従来は余計なことを言わず、黙って指導者に従うという考え方が中心でした。
それだけに、スポーツを学びたいとする学生に、言葉での説明を要求しているこのような小論文は非常に新鮮にうつります。
きちんと言葉が操れる学生が欲しいという、大学の考え方が如実に表れているのです。
文章の自由度が高いだけに、どこからテーマを切りひらいていけばいいかという点が最大の眼目です。
それだけ難易度が高いともいえるでしょう。
スポーツの未来
ここでの論点のポイントは、科学がスポーツをどう変えてきたのかということと、これからの将来像でしょう。
その根底には、従来のスポーツ観があります。
科学への疑問から始まった現在のスポーツ科学の可能性を論じる必要があります。
トレーニング効果を向上させるためのメソッドや、アスリートのパフォーマンス向上のための科学的なサポートとは何か。
それをあらゆる科学的側面から分析していきます。
疑問から始まったという、最初の文言をうまく利用してください。。
これからのスポーツ科学は、栄養学や生理学の側面だけでなく社会学や心理面からのマネジメントが必要になります。
それも疑問から開始するのが当然という視点が大切です。
そうした意味で哲学、医学の知識も必要になります。
あなたの持っている知識や識見が、この文章でどの程度有効に生かされるのか。
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それを1000字までの文章にできるか。
スポーツという範疇に懐疑的な精神を持つことがどの程度、私たちを変えてきたのかという論理を中心に添えてまとめましょう。
その際、自分が過去の精神論に苦しめられ、科学的に解明されたトレーニングに憧れていたことなどを実感をこめて論じていく方法もあります。
うまくまとまれば、かなり説得力のある文章になるに違いありません。
経験をうまく利用して、文脈を広げることも可能です。
根拠のない常識が跋扈していたのは、スポーツをしていた人ならば、誰もが知っています。
熱中症のリスクをさげるために、現在では水分の補給は必至です。
それがかつては禁じられていたこと、1つをとってみても、疑問から始まった科学の力は大きいと言わなければなりません。
いずれにしても、まず文章を書いてみることです。
そこからあなたの勉強が始まるのです。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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