【故事熟語・朝三暮四】人間の心理を巧みに操る術【言葉のアヤ】

学び

朝三暮四

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は故事熟語について勉強しましょう。

漢文にはたくさんの知識が詰まっています。

中国4千年の知恵とでもいえばいいのでしょうか。

今日学んでも少しも古びていません。

そこが魅力ですね。

今回の出典は『列子』からです。

中国戦国時代の諸子百家の1人です。

『老子』『荘子』と並んで老荘思想を説いたものが多いです。

伝説や寓話がたくさん含まれています。

内容が具体的でわかりやすいです。

それは朝三暮四だよ、といったような使い方をします。

ここに出てくる宋は春秋戦国時代の国名です。

内容についてよく知らなくても、この表現は聞いたことがあるでしょうね。

故事熟語は国語力の基礎です。

最低限のものは知っておかなければなりません。

「朝三暮四」はその中でも最も有名な四字熟語のうちの1つです。

猿にトチの実を与えるのに朝3つ、夕に4つと決めたところ、少ないと抗議した猿が、朝を4つ、夕3つとしたら喜んだという話です。

ストーリーはごく単純ですが、ここには人間の心理をうまく操る術が潜んでいます。

辞書によれば、「目前の違いにばかりこだわって、同じ結果となるのに気がつかないこと」「口先でうまく人をまるめこみ、だますこと」とあります。

朝令暮改

これと似ているのが「朝令暮改」です。

言葉の組み立て方が似ているので、つい間違えて使ってしまうことがあります。

こちらは「命令や方針がたえず改められてあてにならないこと」を指します。

その違いがわかるでしょうか。

現代ではちょっとゴチャゴチャにして使ってしまっているケースがあるようです。

朝三暮四とはかなり意味が違いますね。

十分に注意してください。

原文にあたってみましょう。

漢字だけの文を白文といいます。

短いので読んでみてください。

難しい漢字もいくつかあります。

原文

——————————–

宋有狙公者。

愛狙養之成群。

能解狙之意、狙亦得公之心。

損其家口、充狙之欲。

俄而匱焉。

將限其食、恐衆狙之不馴於己也。

先誑之曰、與若芧、朝三而暮四、足乎。

衆狙皆起而怒。

俄而曰、與若芧、朝四而暮三、足乎。

衆狙皆伏而喜。

書き下し文

宋に狙公(そこう)なる者有り。

狙(さる)を愛し、之を養ひて群れを成す。

能く狙の意を解し、狙も亦(また)公の心を得たり。

其の家口を損じて、狙の欲を充たせり。

俄(にわか)にして匱(とぼ)し。

将(まさ)に其の食を限らんとす。

衆狙の己に馴れざらんことを恐るるや、 先づ之を誑(あざむ)きて曰はく、

若(なんじ)に芧(しょ)を与ふるに、朝に三にして暮に四にせん、足るかと。

衆狙皆起ちて怒る。

俄にして曰はく、

若にを芧を与ふるに、朝に四にして暮に三にせん、足るかと。

衆狙皆伏して喜ぶ。

————————-

芧(しょ)というのはとちの実のことです。

どんぐりの一種だと考えてください。

現代語訳

宋に狙公という者がいました。

公は猿を愛し、これを養っており、その数は群れをなすほどでした。

彼は猿の気持ちを理解することができ、猿もまた公の心をつかんでいました。

公は自分の家族の食料を減らして、猿の食欲を満たしていました。

ところが急に貧しくなってしまったのです。

そこで猿のエサを減らそうとしました。

エサを減らすことで、猿たちが自分になつかなくなるのではと心配したのか、初めにこう言ったのです。

「お前たちにどんぐりを与えるのを、朝に3つ夕方に4つにしようと思うが、足りるだろうか。」と。

すると猿は皆立ちあがって怒りました。

そこで彼は言いました。

「お前たちにどんぐりを与えるのを、朝に4つ夕方に3つにしようと思うが、足りるだろうか。」と。

猿たちは皆ひれ伏して喜んだのです。

———————————

狙公とはサルを飼っている人に対するあだ名です。

公は年長者に対する尊称の1つなのです。

問題の先送り

この故事熟語はどんな時によく使うのでしょうか。

眼の前の違いだけにとらわれて、結局は同じであることを知らないというのはかなりありそうなことです。

口先だけで人を欺したり、その場だけ適当にあしらうことの意味などにもっばら用いられます。

この表現は政治の場面で使うとなぜかピッタリとくるんですね。

政治の決着はどうしても妥協の産物になりがちです。

よく玉虫色の決着などという言い方をするのを耳にしたことがありませんか。

あちらにもこちらにも花をもたせて解決する方法です。

結局、誰にとってメリットがあるのかよくわからないのです。

しかし一見すると、両者ともに満足できる部分もあります。

第一次補正予算で凍結した財源を第二次補正に回すというのはどうでしょうか。

面倒なことを先送りすることは「朝三暮四」だと分かっているものの、なかなか改めることができないものです。

一時金として国民に与えた現金はあとで国債として国が借金をする。

もらったつもりの国民は喜びますが、あとからその分を税金として徴収されるということになります。

ダイエットをしっかりして一時的に痩せてはみたものの、後ですぐにリバウンドしてしまうというパターンはどうでしょうか。

詐欺の手口に共通しているのは、投資家を最初に儲けさせることです。

その後で追加投資をさせ、結局すべてを持ち去ってしまいます。

これなどは朝三暮四の典型的なパターンですね。

人間の心理の襞をよく読み取った古典的な手口です。

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ぜひ、この機会にしっかりと胸に刻んでおいてください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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