日本文化の独自性
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
いよいよ秋の気配が濃くなってきました。
これから大学入試に必ず出るテーマについて、少しずつ解説を加えていきましょう。
しっかりとついてきてくださいね。
今回は出題頻度の高い日本文化の特徴についての問題です。
世界中の中で日本はかなり文化の特殊性を自認している民族だと考えられます。
それだけに、たくさんの文化論があります。
入試ではその中から特徴的な文章が課題文として出題されます。
かなり多くの学校で取り上げられているのです。
扱いやすいテーマだということもあります。
それだけに独自性を出しながら文章をまとめあげるのは容易なことではありません。
最初に過去問をチェックしてみてください。
参考図書もたくさんあります。
いくつか挙げておきましょう。
『菊と刀』ルースベネディクト
『甘えの構造』土居健郎
『日本人とユダヤ人』イザヤベンダサン
『タテ社会の人間関係』山根千枝
『縮み志向の日本人』李御寧
『日本辺境論』内田樹
他にもたくさんの本があります。
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日本は四季や自然が豊かな風土によって成り立っています。
繊細な感性が育まれた結果、非常に特異な文化が生まれました。
島国特有の気候や、季節の変化が日本人の心をつくってきたのです。
さらに米作を中心とした農業の形態が、日本人の和を尊ぶ感性を作り上げました。
集団で心を1つにしないと、農業は成立しません。
狩猟を中心としていた欧米の労働形態とは全く環境が異なるのです。
西洋文化は自然との対立を目指しているとよく言われます。
その反対に日本文化は、つねに人間と自然との共存を目指してきました。
これがなによりの特徴です。
この基本を完璧におさえておいてください。
日本文化についての課題文に対して、最低これくらいの知識は蓄えておく必要があります。
ポップカルチャー
今日の日本文化で最も話題になるのはポップカルチャーの存在です。
このテーマは伝統的な日本文化とは一見、切り離されているように見えます。
しかしその内実は底深くで繋がっているのです。
この点を見逃してはいけません。
近年、日本文化といえば最初に思い出すのはアニメ、マンガ、ゲーム、音楽、ファッションなどでしょう。
以前は国内だけの現象でしたが、最近ではアニメのキャラクターに扮してコスプレを楽しむ外国人の姿も多く見かけるようになりました。
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それが刺激になって日本への観光客が増えているという現実もあります。
ここ数年はコロナの影響でインバウンドは下火になっています。
しかしそれもやがて復活する日が来るに違いありません。
クールジャパンの代表はまさに現代の日本のポップ文化そのものなのです。
政府は成長戦略の一環として新しい文化の輸出に力を入れています。
ただし労働環境は少しも改善されていません。
若い労働力が低賃金で我慢を強いられています。
それでもアニメ制作などを希望する人は減らないのです。
新しいタイプの日本文化のあり方を同時におさえておきましょう。
このテーマそのものがすぐ入試に出題されることはないかもしれません。
しかし現代の文化の底流には確実に存在しています。
チェックしておく必要があるといえます。
なぜ日本で盛んになったのか
こうしたポップカルチャーが盛んになった背景もあわせて考えてみます。
海外ではアニメもマンガも子供向けのものが大半です。
しかし日本製のものはジャンルも広く対象年齢も広範囲なのです。
さらにいえば、そのクォリティの高さです。
スタジオジブリなどの作品などは世界的なファン獲得に大きな役割を果たしました。
ディズニーなどがアニメにかける膨大な製作費用とはケタが違います。
それにも関わらず、品質は大変高いと絶賛されています。
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費用をかけずにさまざまなジャンルの作品を無理なくまとめ上げていくという手法には、諸外国の手法では太刀打ちできません。
ここには日本人の民族的な特徴も関わっています。
個人の持っている力を集めて、それを大きなパワーにかえる能力は、日本文化の在り方かと関係があるのです。
「和をもって貴しとなす」という聖徳太子の言葉を待つまでもありません。
日本人が得意とする集団的な作業の緻密さは、他の国では真似ができないのです。
品質に対するこだわりも、日本民族が誇る繊細さにあります。
日本の縫製品は技術的にキメが細かく精度が高いと言われています。
糸のかけ方、生地の裁断に至るまで、神経が行き届いているのです。
工芸品の1つ1つをみてみればそのことはよくわかります。
陶器、漆器などへの感性の細やかさ、色の重ね方などは一朝一夕には真似のできないものです。
ポップカルチャーは日本が生んだ新しい文化の形に間違いはありません。
しかしけっして古来のものと無関係に生まれたワケではないのです。
その点をきちんと把握しておいてください。
国際的意義
今後、日本の文化を語る時の視点をどこに置くのか。
これはなかなかに難しい問題です。
あらゆる芸術作品にある程度は目を通しておいてください。
そこに宗教の影響が色濃く滲んでいることはすぐに理解できるはずです。
奈良平安の貴族文化から鎌倉の武家文化にいたるまで、神道や仏教の影響があります。
造形、色などをよくみておいてください。
仏像だけに限りません。
禅の考え方から茶、花、絵画などへの影響はどうであったのか。
能、狂言、歌舞伎、文楽との関係はどうか。
日常生活の禁忌や作法はどこから生まれたのか。
死の概念に対する意識はどう変化してきたか。
住居、庭などへの関心はどのようであったのか。
1つ1つ検証しながら、日本文化が形成されてきたプロセスを捉えておいてください。
方向性としては、国際的意義や役割、評価などを考えなくてはいけません。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2020/12/undraw_Faq_re_31cw1.png)
日本文化がグローバルな時代に生き残れるとすれば、それはどこにあるのか。
何が多くの人々を引き付けるのかを意識することで、かなり日本と世界の今後の関わり方がみえてきます。
どのような問題が出ても、十分に対処できるだけの基礎になるはずです。
2022年度入試においても、文化の問題は必ず出題されます。
何にも知らなくて書けなかったということがないようにしましょう。
図書館などで調べ、わからなかったらインターネットに頼る方法もあります。
近くに博物館などがあるのなら、1度は実物を見るのも大切です。
さらに参考図書などを読み、自分なりの日本文化観を身につけてください。
必ず役に立つに違いありません。
勉強は際限がないからこそ、面白いのです。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。