【教育の経済学・エビデンス】非認知能力を鍛えてサバイバル可能に

エビデンスは雄弁

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は5年前に出版された慶応大学教授、中室牧子さんの『学力の経済学』について考えます。

2年ほど前には漫画版も出て、版を重ねているようですね。

子供を持つ親の悩みは誰も一緒です。

なんとか幸せな人生を送ってもらいたい。

とんでもない出世を望むワケではありません。

しかしあんまり苦労しないで、そこそこの生活をしてほしい。

それが望みだということになります。

ところがこれがそんなに簡単な話じゃないのです。

そこそこの生活といいますが、今やコロナ禍で格差が再び広がっているのが現状です。

非正規社員は次々と仕事を失い、満足な生活などできません。

かつて専業主婦になればいいなどと言っていたのも今では夢物語です。

ほとんどの女性たちはパートに出なければならなくなりました。

しかし現在その仕事も切られつつあります。

現代の合言葉はエビデンスです。

全て目に見える結果を求めるのです。

そこで親たちは子供をどう教育すればいいのか、右往左往します。

いい大学に行ってほしい。

有利な就職口を探してほしい。

人生の選択肢を広げてほしい。

できれば勝ち組になってほしい。

これが究極の本音でしょうか。

まさに明確なエビデンスそのものです。

そのために塾に行き、習い事をして、教育の恩恵にあやかろうと必死なのです。

教育経済学とは

教育経済学という言葉を聞いたことがありますか。

数字で教育の効果を計算するという学問です。

単純にいえば、高等教育を受けた人の方が生涯年収が高いという事実がそこにあります。

まさにエビデンスそのものですね。

そのためにはどうすればいいのか。

人的資源の収益率をあげることです。

ものすごい表現ですが、どの時期に投資すると、その後どのような効果があるのかという数字です。

教育という言葉はすぐに知育と直結します。

新しいことを学ばせればそれで完結するとつい考えてしまいがちなのです。

実際はそんなに簡単な話ではありません。

人間は遠い将来のために長く我慢はできない生き物です。

だからこそ、目の前にニンジンをぶらさげるということになります。

しかしそのためにどうすればいいのか。

ここが1番難しいところです。

まさにインプットご褒美作戦の意味がここにあります。

本を読んだり、宿題をしたりすれば何かあげるのです。

テストでいい点をとるというのはずっと後の話です。

目の前でやったことについて、1つ1つご褒美をあげるのです。

よくありますよね。

成績が上がったらお小遣いを増やすという類いのインセンティブです。

これはダメ。

人間は所詮目の前のささいなことに触発されて進む生き物なんです。

未来にこれだけのことがあるから、今我慢しろと言われても、それは無理な話。

目の前のご馳走はやはりすぐ食べたいのです。

だからこそ、やれたことのたびにちょっとずつというのが正解なのです。

努力と能力

人はどちらを褒められたら伸びるのか。

努力の度合いですか。

能力の高さですか。

これも興味ある問題です。

褒めて育てろという表現はよく聞きます。

しかしあまり褒めると、次には褒めてもらいたいばかりに難しいテーマにチャレンジしなくなるという現実もあります。

加減がすごく難しいのです。

褒める時はどのようにしたらいいのか。

これにもちゃんとした法則があります。

基本は努力を褒める。

これに尽きます。

あなたはすごく頭がいいんだからというような話し方はNG。

次にもしできなくなると、自分の能力に対して疑問を持つようになります。

そうではなくて、努力の程度を褒める。

これが全てです。

よくここが理解できたね。

やればできるではなくて、1時間きちんと勉強したからできるようになったのね。

すごいねといって具体的に褒めるのです。

それと同時によく言われることは、読書をするから学力が高いという言い方です。

実はそうではありません。

学力の高い子が読書をしているだけなんです。

むしろ、子供が本を読んだら一緒に褒めながら感想をそれとなく聞くぐらいがいいんじゃないでしょうか。

子供に対する親の関心の高さの方が大切なのです。

最終兵器は非認知能力

親はどうしても学力にばかり目がいきがちです。

はっきり成績になって出てきますからね。

しかし長い人生は成績だけじゃ決まらない。

これは誰もが知っていることです。

会社に入ってまで通信簿をぶら下げて歩いていたらバカです。

むしろ人間関係をうまくこなせる人の方が人望が厚くなります。

それが最終的には最も強い武器になるのです。

しかしこれは目にみえません。

数値化もできません。

だからこそ厄介なのです。

ポイントは自制心とやり抜く力。

ゴールに向けて興味や意欲を持ちながら、努力し続けることのできる力です。

このパワーを持った人が最後はもっとも豊かな人生を歩むのでしょうね。

どうしたらいいのか。

生まれついたらもうそこで出来上がっているものなのか。

そんなことはありません。

こころの持ち方が大切なのです。

自分はできないと思い込んだ時が最も危険です。

継続は力なりとはうまいことをいったもんです。

年齢が年齢だからといって自分をきめつけてしまうと、そこで全ては終わりです。

どこからでも伸びるというある意味での神話を信じることでしょう。

中室さんは最初、こんな本が多くの人に読まれるのだろうかと疑問をもったそうです。

しかしここにあることは、全て数字が示した事実です。

多くの大学の先生たちがさまざまな実験をして、数値化しました。

ミシガン州のペリー幼稚園の研究などは、なるほどと思わず納得させられてしまうものです。

手厚い就学前の教育がいかに大切かという典型的な例です。

興味があったら是非この本を手にとってみてください。

貧困家庭には家庭の知的資源が少ないという不幸があります。

ランダムに選ばれた子供たちへの教育が、その後の人生を変えたことはいうまでもありません。

あらゆる点において豊かな人生を歩むことができたのです。

今回久しぶりに読み直してみて、なるほどと何度も感心した場面がありました。

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ここに少しだけ紹介させてもらった次第です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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