【小論文の技法】課題文の趣旨をそのままコピーしないで斜めに切ろう

学び

課題文型が主流

みなさん、こんにちは。

小論文添削経験20年、元都立高校国語科教師のすい喬です。

小論文の難しさは文章を書くことの苦しさに通じますね。

その時の自分の気分をまとめるぐらいならなんとかなる人でも、いざ小論文を書こうということになると、つい尻込みしてしまうものです。

なぜでしょう。

つまり自分勝手に書いてはいけないからです。

そこには問題という大きな枠が設定されています。

多くの場合、課題文があります。

それを読んでいくつかの問題の指示にあわせて書くということになるのです。

具体的にはどんな問題のパターンがあるのでしょうか。

1 課題文全体をふまえた上で自分の考えを書く問題
2 文章の一部に下線が引かれ、その点についてだけ書く問題
3 最初に要約をし、その要約の内容について自分の考えを書く問題
4 要約問題をし、それとは違う別の下線部の点について書く問題
5 課題文や資料はあくまでも補足でしかなく、自分の考えを独自に書く問題

ここに示した5つのパターンが代表的です。

要約のある問題とない問題に別れるのがこれで理解できたでしょうか。

一番多いのは1のパターンです。

Larisa-K / Pixabay

なぜかというと、1型の問題に答えるためには、自分で要約をしなければなりません。

つまり読解力がなければ、何も書けないのです。

文章をよめば、きちんと課題文を理解して答案をまとめたのかどうかがわかります。

多くの設問を出す必要はありません。

採点する側からいえば、なるべく少ない労力で短時間に正確な評価をしたいのです

それだけに1型が多く出されるというわけです。

無茶な論理展開

長い間の添削経験で、課題文を全く無視して文章を書く人はあまりいませんでした。

たとえわずかでも課題文の内容に即して書いていこうとする努力をしています。

全く無視して、自分の意見をただ書いた答案は、とても読めたものではありません。

このタイプの文章を書く人は、小論文にまったく不慣れな人に多いようです。

「話は全く違うが、自分は~と考える」などという無茶な論理展開をしているようでは、とても合格はおぼつきません。

自分の意見を展開することは確かに大切です。

しかしそれはあくまでも課題文の枠にのっとって進まなければならないのです。

自分の都合で勝手に論理を展開しても高い評価を得ることはできません。

課題文を無視するタイプの人は、小論文の求めている内容にきちんと対応できていない人なのです。

本当のことをいえば、何を書いていいのかよくわかっていません。

課題文の中にあるキーワードの幾つかに反応して、そこから言葉をひっぱりだしてきただけということになります。

これは一番避けなければなりません。

特に意見提示や展開部でこの手法をとることは厳禁です。

最低の評価になると思ってください。

対立概念や、そうでないにしても一般的な概念が示されている時、なんにもそれとは関係のないテーマを繰り広げられて、読もうという人はいません。

国語力のなさを露呈しているようなものです。

課題文を読むときは、必ずキーワードを探すことです。

それについて、自分の知っていることをメモにしてください。

課題文の背後には、出題者がいます。

なぜこの問題を出したのか。

そこには当然出題者の意図があります。

それを逆探知するくらいの心のゆとりがなければなりません。

出題者は何を書いて欲しいのか。

どのキーワードに鋭く反応して欲しいのか。

そこまで考えてください。

そこにピタリとあたれば、合格に近づきます。

とんちんかんなことをいくら自分勝手に書いてもダメ。

これだけは守ってくださいね。

イエスかノーか

ポイントはイエスかノーで答えられる問題かどうかです。

最近の小論文のテーマは大変に複雑で、簡単にイエスまたはノーと言えなくなっています。

逆にいえば、対立する概念がもちこまれているものなら書きやすいのです。

しばらく前にあった「ゆとり教育」などというテーマはその是非を問うことで、それぞれの教育観をまとめることができました。

つまり学力とは何かということです。

しかし今日の喫緊のテーマとなっているAIやロボットなどは、もう止められない段階にあります。

それが是か非かという論点では成り立ちません。

mohamed_hassan / Pixabay

ここまで進んでしまった科学技術を、これからの社会にどうつないで、人間にとって有用なものにしていくのか。

それを書き込んでいかなくてはなりません。

当然、課題文の中に自分が考えているのと似た視点も出てくるでしょう。

あるいはそうしたものを全く拒否して生きていくという論点の文章もあるかもしれません。

開発そのものが止められないとしたら、人間には諦めしか残されていないという考え方もあります。

あとしばらくして、AIが人間を超えた時、人類はどのように未来を持てばいいのかというテーマに対して、何らかの考えを書かなくてはなりません。

当然、仕事の質も変化するでしょう。

消える職業についてまとめた文が出るかもしれません。

全く予想がつかないのです。

その時どうするか。

どの方向から書き込んでいくのか。

これは予想以上に難しいと言わざるを得ません。

ポイントはそのまま課題文の主旨をなぞってはいけないということです。

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ノーの立場になれない。

イエスも難しい。

その間の微妙な狭い路線を書き込むということもあるでしょう。

課題文と同じ趣旨で書き込んでいければ、とても楽です。

同じキーワードを使っていけば、800字くらいはすぐに埋められます。

しかし採点者の立場からみれば、あまり面白くない文です。

つまり独創性がどこにもない。

必要もない要約が入っていたりしますから、読んでみると、課題文の切り貼りだったりします。

こういう時は本当にがっかりしますね。

どうしたらいい文になるのか

まずキーワードに関係する内容で、自分の知っていることをメモしてください。

Mediamodifier / Pixabay

実際の経験、人から聞いた話、本で読んだ記憶。

全てをフルに動員します。

そのメモを見ながら、課題文とまったく同じ方向のものはボツにします。

反対でなくてもいいです。

斜めから切れるものはありませんか。

内容的になぞったものはダメです。

筆者が言っていることは本当かと疑ってみた時、自分の知っている事実がヒットしませんか。

その際にメインテーマをはずしてはいけません。

その周囲にあることである現象、結果、理由、対策など、思い起こしてみるのです。

場所を変えてみるのも1つの方法です。

日本の話だったら、アメリカの場合はどうか。

東南アジアだったらどうか。

アフリカの問題として考えたらどうなるのか。

必ず違った展開が見えるはずです。

少子高齢化などという大きなテーマも、難民の移動が行われたヨーロッパや南アメリカの諸国ではどうなのかと想像するだけで、ぐっと世界が広がります。

なるほどこういうことかと思ったら、もう一段深掘りしてください。

それはなぜなのか。

どうしてそのようなことが起こるのか。

この繰り返しです。

賛成とか、反対のレベルではなく、もう1つ次元の高いテーマにもっていけるかもしれません。

哲学でいうところの「止揚」です。

congerdesign / Pixabay

どうしても反論することすら難しいテーマもあります。

その時に役立つのがこの斜め切りの方法です。

切り口が鮮やかであれば、評価は一気に高まります。

是非試みてください。

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大きな今日の問題については、一応自分なりの問題意識をまとめておくことを勧めます。

実際の試験の時に大いに役立つはずです。

鋭い知識を仕込んでおけば、どんなに厄介なテーマが出ても転用がききます。

それくらいの気持ちでいないと、本当に最近の小論文は難しいのです。

というより、世界が混沌としています。

解決への糸口が容易にはみつかりません。

それだけにみなさんの文章力が要求されているのです。

頑張ってください。

合格の吉報をお待ちしています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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