【人間関係力・齋藤孝】全国を歩いたという宮本常一の章段が1番刺さった

斎藤孝氏の著書『人間関係力』の中で1番刺さったのは、民俗学者、宮本常一の章段でした。どこに惹かれたのか。それは宮本がとにかく聞く人だったということです。人は必ず話したいことを持っている。それを拾い集めていくだけで、日本の構造がみえたのです。

【太宰治・清貧譚』中国の短編集『聊斎志異』に取材した怪異な小説

太宰治の小説は教科書にもかなり所収されています。代表的な作品には、高い評価が与えられています。どの小説を読んでも、やはり太宰治はうまいと感心させられてしまうのです。今回は中国の短編に題材をとった『清貧譚』をご紹介します。

【13歳からの地政学】遠交近攻という戦略を初めて知る【深海が核貯蔵庫】

ロシアによるウクライナ侵攻以後、地政学の本が書店に並ぶようになりました。どこに国があるのかという地理的な問題が、今や大きな意味を持つようになっています。『13歳からの地政学』という本は大人が読んでも十分に耐えるだけの内容を持っています。

【俳句・縮み志向の極致】松尾芭蕉の俳句に宿る美の魂を知る【日光】

松尾芭蕉の『奥の細道』は俳句の世界を大きくかえました。旅行記でありながら、そこには創作者の魂が宿っていたのです。多くの人々に今も感銘を与えています。今回は日光の段を扱います。その地で詠んだ俳句を味読してください。

【枕草子・宮に初めて参りたるころ】殿上人への憧れが清少納言を緊張させた

『枕草子』にはユニークな章段がたくさんあります。その中でも清少納言が初めて出仕した時の記述は素晴らしいものです。当時の宮廷がどのようなものだったのか。もちろん、高級貴族以外の人には知る由もありませんでした。彼女は突然中宮の女房になったのです。

【正徹物語・一字の違ひ】歌人は己れの感性をひとつの文字に託すのです

『正徹物語』というのは歌論書です。学校ではめったに扱いません。それだけに新鮮ですね。一つの歌を分析し、そこに描かれた世界をイメージしながら鑑賞するのです。歌人たちが、わずかな言葉の中に、心血を注いだことがよくわかります。

【枕草子・中納言参りたまひて】思わず微笑むユーモアたっぷりの章段

『枕草子』の筆者、清少納言は実に機知にとんだ頭の回転の速い人です。そのことがよくわかる日記の章段がいくつもあります。その中の1つが、このクラゲの話です。立派な骨をみつけたと自慢している中納言に向かって、軽口をたたく彼女の愛らしさといったら。

【枕草子】どうしてこのタイトルになったのかという不思議【三大随筆】

『枕草子』は日本を代表する随筆の1つです。清少納言がその時々に書いたエッセイが千年後の今読んでも、ちっとも古びてはいません。それだけ彼女の観察眼が鋭いということなのです。しかし「枕」などという言葉が本の題名になぜのっているのでしょうか。

【落窪物語】継子いじめの果てに掴んだシンデレラ姫の幸せストーリー

継子いじめの話として有名な『落窪物語』を取り上げます。あまり学校では扱うことがありません。授業でも数回しかやりませんでした。今回の話は義理の息子が父親に自分の官職を譲るという美談です。最後まで味わってみてください。

【小論・外山滋比古】反論しにくい文章の場合は違う角度から内容を補足

指示語をチェック みなさん、こんにちは。 元都立高校国語科教師、すい喬です。 今回は数年前に亡くなった外山滋比古氏の文章を読みましょう。 英文学者としての生活のかたわら、多くの鋭い評論を発表しました。 高校の教科書でもいくつかの文章を扱っています。 ...

【日本文化の雑種性・加藤周一】代表的な日本論の構図を頭に叩き込む

日本文化論、日本人論の代表と言われるものの中に加藤周一の『雑種文化論』があります。西洋に留学し、日本とを比べた時、その違いは歴然としたものでした。特徴がどこにあるのかを彼は真剣に考えます。それがかつての西洋模倣だけではない、日本の方向性でした。

【今昔物語・説話集】盗人さえも騙してしまった強心臓の男の話【傑作】

今昔物語はユニークな説話集です。たくさんの話が3部構成で語られています。今回は盗人を騙して、何もとられずに済んだという強心臓の男を題材にした噺です。どうやって泥棒を煙にまいたのか。その手口を一緒に考えていきましょう。

【大鏡・三船の才】歌人藤原公任の才能を知り尽くしていた道長の眼力

『大鏡』に載っている藤原公任の話です。三舟の才とか三船の才などと呼ばれています。道長が公任に訊ねる場面が、2人の緊張感を誘います。政治の力関係とまた別に、2人の間にあった相互の力が見え隠れしているからです。この故事を覚えておいてください。

【和泉式部日記】恋多き女性の心の襞を細かく描き切った中世文学の粋

中世日記文学の粋を勉強しましょう。和泉式部は歌人として活躍しましたが、同時に彼女の書いた日記には、女性の生き方が示されています。2人の親王に愛されたにもかかわらず、2人ともに早く死なれてしまいました。それでも自分の愛の世界を描こうとしたのです。

【蜻蛉日記・嘆きつつ】夫・兼家との苦悩に満ちた結婚生活を赤裸々に

『蜻蛉日記』の筆者、藤原道綱母は実に複雑な内面をもっています。それが文章に如実にあらわれるところが、この作品の味わいですね。日記文学の中でも特異な位置をしめています。『源氏物語』などにも大きな影響を与えました。

【考える身体・三浦雅士】精神と肉体の二元論から想像力が跳び立つ日

人間は長い間、肉体と精神という2つの命題に分けて、哲学を論じてきました。しかしともすると、精神の領域を重く見る傾向が強かったのです。しかし今や肉体の復権が叫ばれ、人々はスポーツや舞踊の持つ根本的な意味を考え始めています。