年内入試
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
最近よく聞く言葉に「年内入試」というのがあります。
試験の合否結果の発表時期がはやいのです。
このタイプの試験は2つのパターンで構成されています。
総合型選抜と学校推薦型選抜(指定校推薦、公募推薦)がそれです。
合格したら、必ず入学しなければいけません。
これが大原則です。
辞退ができない仕組みになっているのです。
絶対に後戻りできないだけに、受験には覚悟が必要ですね。
年内入試という表現は同じですが、総合型と学校推薦型はそれぞれ全く性格が違います。
この差をきちんと理解しておかないと、あとで取り返しのつかないことになってしまいます。
基本的な違いとは何なのでしょうか。
それは出願条件です。
総合型選抜は高校の卒業見込みがあれば、誰でも出願できます。
しかし、学校推薦型選抜は大学が定める出願条件をクリアし、高校長の推薦を得た人だけが対象なのです。
さらに総合型選抜は一般的に審査期間が長いです。
数か月にわたって、論文審査、プレゼンテーション、小論文などの試験が続きます。
特に大切なポイントは適性の判断ですね。
受験生がその学部、学科で学び続けことができるのかどうかを大学は判定します。
そのために提出された探求内容などを精査するのです。
独力で学べる人
アピールポイントを自分で探し、作業を独自に進められる人にとっては最適でしょう。
その反対に、指示を待って勉強をしてきたというタイプの生徒にとっては、なかなか苦しい試験だといえます。
近年は、国公立の大学なども非常に熱心です。
共通テストを受験しなくても合格できるケースが多いので、早くから情報を集めて注力すれば、かなり確率が上がります。
倍率も一般入試に比べたら、低いことが多いです。
大学によっては併願可能な場合もあります。
いわゆる一般入試では、入学が困難なレベルの学校に、チャレンジすることもできるのです。
少子化の影響で、質の高い学生をとるのに、大学は躍起になっています。
以前は青田刈りなどと揶揄されていました。
しかし今は、そんなこともありません。
共通テストを受けなくていいという条件があったら、それだけでコスパが高いと言えますね。
学校推薦型選抜
学校推薦型選抜は、評定平均や資格、学校外活動の成果などの基準があり、それらを満たさなければ推薦を得られません。
これが総合型とは全く違う厳しいところです。
学校推薦型選抜では高校の成績が最重要視されます。
特に指定校推薦は、大学が指定した高校の生徒のみが対象です。
大学側から9~10月頃、指定された成績と人数が学部、学科ごとに知らされます。
どんなに高校側が希望しても、指定されない限り生徒は受験できません。
ここが指定校推薦のシステムのポイントです。
近年はほとんどの大学が、この制度を利用しています。
一般入試で学生が集まらない大学などは、ほぼすべての高校を指定校にしているような状態です。
年内入試で、定員を充足するのが目標だとはっきり公言している大学まであるほどです。
これは一種の禁じ手と言えるでしょうね。
しかし学生が集まらなくてはどうしようもありません。
では、このパターンを続けたらどうなるのか。
明らかに高校側は大学を甘くみる事態になるでしょうね。
10年後まで、こうした大学が存在していられるのかどうかも疑問です。
逆に言えば、高校側が推薦すれば、その瞬間に合格が確定します。
入学者が容易に集まらないから、指定校を乱発するというのは、本道でないことは明らかです。
難関私大の指定校推薦
ここでの話題は難関校の指定校推薦についてです。
いくら入学したくても、あなたの進学した高校が指定校になっていない場合は対象外になります。
都市部の高校などでは、あらかじめどの大学から指定されるのかを調べて生徒が入学するケースもあると聞きます。
シビアですね。
今は情報網を張り巡らせて、高校へ進学する時代でもあるのです。
通常、大学は進学実績に応じて、高校を指定してきます。
1つの高校から推薦できる人数は当然限られています。
希望者が多い場合は校内選考で選抜されることになります。
推薦入試のオファーを一覧表にして貼り出した時の、掲示板の前の風景を想像してみてください。
あっという間に、生徒の人垣ができます。
志望の大学が指定校推薦の対象になっていれば、あとは希望届を提出し、会議の結果を待つだけです。
そのための校内選考に、ぼく自身も何度か出ました。
生徒はどの大学に推薦希望を出したのか、担任にも告げません。
知っているのは、進路指導部の数人の先生だけです。
会議の席で、はじめて希望者の一覧表が公開されます。
出席者は担任団と進路部の先生のみです。
選考では評定平均値や課外活動実績、生活態度などを総合的に判断します。
よほどの難点がない限り、評定平均値が決め手になります。
4.3以上がA段階、3.5~4.2がB段階です。
通常は1年の3学期、2年の3学期、3年の1学期の成績を足して、科目数で割ります。
これを評定平均値と呼んでいます。
難関校の場合はそれ以外に、英語や数学などの成績のしばりがあるケースもあります。
基本はA段階をとっていないと、審査に通るのは難しいです。
希望者が多い学部などでは、限りなく5.0に近くなります。
つまり3年間、ほぼ満点を取り続けてきたということの証明です。
指定校推薦は、そういう生徒たちの中での勝負になるのです。
なかにはもちろん、見向きもしない生徒もいます。
志望する大学から指定校がこなかったということです。
国公立の大学を受けたい人の中には、このパターンが多いです。
希望者は総じて真面目な生徒が多いです。
中間や期末などのテストをコツコツとやり、いい成績をとった学生ばかりです。
なかには生徒会、委員会、クラブ活動などで活躍した生徒もいます。
会議の結果は、その日の夜、各家に電話で連絡をします。
その様子はまさにドラマそのものです。
以前、勤めていた学校の審査の様子を書いたブログがあります。
リンクを貼っておきましょう。
一般選抜との両立も
もう1つの推薦型が学校型推薦です。
こちらも学校長の推薦が必要です。
学業成績や外国語検定などで成果をあげた生徒のポテンシャルを評価します
試験の内容は出願書類、小論文、面接、プレゼンテーション、評定、欠席日数などが勘案されます。
出願時期は11月頃、合格発表はその1カ月後くらいです。
まさに年内入試です。
この試験のポイントは一般選抜試験と両立できることです。
最大のポイントは、志望する大学の内容をかなり正確に知る必要があることです。
どのような学問を誰が教えているのか。
そこまで調べておきましょう。
近年は国公立大学も積極的にこのタイプの試験を行っています。
チャレンジする価値は十分にありますね。
合否判定は提出書類、資料による第1次選考。
その後に行われる、各学部ごとの面接です。
面接といってもかなりの時間を使い、受験生の持つ資質を問います。
付け焼刃では、とても合格はおぼつかないと考えておくべきです。
最後はこれらと共通テストの成績を総合的に評価します。
共通テストの得点割合は、大学によって異なります。
基本は学業以外にも優れた実績を持つ、個性の豊かな学生を求めているということです。
アピールできる活動や探求していた内容などがあれば、その分有利になると思われます。
こうしてみてくると、メリットがたくさんありますね。
第1は低倍率だということです。
さらにいえば、私立大学の総合型選抜ほど書類審査が厳しくはありません。
長くなりました。
今回はここまでにしておきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。