制限字数
みなさん、こんにちは
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は実際の入試で、土壇場を迎え、何も書けなくなった時の脱出技をお教えします。
できれば、こんなことはしないで済む方がいいに違いありません。
しかし実際の試験では何が起こるかわからないですからね。
もちろん、それまで勉強してきたことがそのまま応用できて、十分に書ききったという気持ちになれれば最高です。
ところがいつもそうだとは限らないのが入試です。
むしろなんとか字数だけは埋めてみたけれど、これでよかったのかという不安の方が強いのではないでしょうか。
小論文の採点は非情です。

決められたレベルをクリアした答案しか、実際は採点の対象になりません。
どこを最初にみるのかといったら、第1は全体の文字数です。
あらかじめ基準を設けていますので、それをクリアしていないものは、採点の対象になりません。
あるいは大幅に減点されると考えてください。
小論文は文字数だけで、評価が大きく違ってしまうのです。
それではどこが最低のラインになるのか。
これだけは絶対に覚えておいてください。
基本は制限字数の80%以上書けた答案からと考えておけばいいでしょう。
厳しいところでは90%以上という学校もあります。
800字ならば640~720字を超えるレベルです。
もちろん制限字数ギリギリまで書ききって欲しいことは、いうまでもありません。
しかしどうしても書けないケースがあると思われます。
その時は最後の力を振り絞りましょう。
内容は後回しでいいのか
そんなことを言っていて、内容は後回しでいいのかという疑問が出てくるかもしれません。
もちろん、そんなことはないのです。
コンテンツが不明確なものは当然、合格点には足らないことの方が多いでしょう。
しかし試験は水物です。
やってみないとわかりません。
最低点で合格したとしても、とにかく合格なのです。
応募者の倍率によって、何が起こるかわからないのが入試です。
すなわち読んでもらえないことには、話になりませんね。
とにかく基準を超え、採点の対象になることが最も大切なのです。
試験は真剣勝負です。
受験をするのなら、どんなことがあっても最後まで諦めてはいけません。
文章の書き方については、いくつもの記事にまとめました。
それを読んでいただければ、理解してもらえると思います。

全体を通じてどんな答案がNGなのかを、きちんと把握しておきましょう。
➀内容の首尾一貫性がない。
②一般論で終わっている。
③論拠が提示されていない。
④結論が不明確である。
⑤「てにをは」の使い方が不正確である。
こういう類の文章を読まされる採点者の立場を想像してください。
どこかで聞いたような内容の文をダラダラと読まされたら、辟易するのも無理はありません。
しかし実際には課題文の内容を繰り返しているだけの文章が、実に多いのです。
どこかで読んだと思っていると、課題文そのままだったという笑い話もあるくらいです。
書けなくなった時の脱出技
一般論でいうと、未来志向の解決策を示す余力もなく、繰り返しが多い文章の評価は低いです。
内容のレベルを超えて、最も評価を下げるのは「助詞・助動詞」の使い方が曖昧な文章です。
日本語は非常に難しい言語です。
段落分けが不正確だったり、接続詞の使い方が誤っていると、それだけで意味が全く通らなくなります。
さらに最もひどいのは課題文の内容に正対していない答案です。
全く問題の趣旨を捉えられず、ポイントを絞りきれていないものです。
自分はあまりこの分野に詳しい知識を持っていないなどと、最初に書きこむ受験生もいます。
こうなってくると、採点者の立場としては、評価をつけたくなくなりますね。
では書けなくなったらどうすればいいのか。
いわゆる文字稼ぎのワザです。
1番いけないのが課題文の引用です。

これをすると、テキメンに評価が下がります。
ではどうしたらいいのか。
キーワードをあらかじめ、問題用紙の脇に抜き出しておきましょう。
課題文の中に何度も出てくる抽象的な表現がそれです。
小論文は具体と抽象から出来上がっています。
読者に理解しやすいように具体的な話題を示しながら、最終的には抽象的な結論に導くものが多いのです。
具体はキーワードになりません。
抽象的な表現の中から、これが核心だというものをいくつか探してください。
文化、教育、社会、産業、科学、医療などあらゆる分野に入り込んだ先端的な言葉があるはずです。
それを抜き出すのが最初の作業です。
別の角度から膨らませる
いたずらに文字数を稼くのはNGです。
しかし内容を別の角度から膨らませるのはかまいません。
筆者が書ききれなかったことを補うのもいい方法です。
「膨らませる」というのは、内容を別の角度から増やしたり、読みやすく噛み砕いて工夫することを意味します。
たくさん文章を書いて練習を続けると、全く別の表現で、テーマをさらに深めていくことができるようになります。
そんなことは無理だと今は思っている人もいるでしょうね。
しかし嘘ではありません。
多くの文章を読めばわかります。
同じことを別の角度から再び繰り返して説明しているケースが、圧倒的に多いのです。
もちろん、課題文と同じ表現を使ってはいけません。
許されるのはいくつかのキーワードです。
できたらそれを別の言葉で言い換えてください。
あるいは説明してください。
そうするだけで、100字くらいはすぐに稼げます。
それでもどうしても足りない時は比喩表現を挟みます。
抽象が本質ですが、そこに具体的な例を入れます。

自分の体験を短く挿入する方法もあります。
もちろん関連した内容を付け足すのも効果的な方法です。
その他には必ず解決案を提示して、それをより細かく説明する方法もあります。
それてもどうしてもダメな時は、課題文の要約を短く最後に確認事項の形で入れます。
それに対する自分の考えが次の通りだったというまとめを書いてしまうのです。
それだけで100字は稼げます。
どんなことがあっても80%のラインを超えること。
これだけは守ってください。
合格するのが目的です。
その条件をクリアしないと、どんなに内容がよくても評価は高くなりません。
この基本だけは絶対に忘れないでください。
小論文は、採点者の心に響くものを書けばいいのです。
名文である必要はありません。
多少表現が拙くても真摯であること。
結論も等身大のもので十分です。
論理的で未来志向であることが大切なのです。
今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
