【小論文・生活保護】コロナ禍で失業者と高齢者に世間の目が厳しく

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生活保護

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

昨日の新聞を読みましたか。

生活保護を拒んだ82歳の女性が、介護をしている姉を殺害したという事件の裁判結果が載っていました。

裁判員裁判の結果は懲役3年執行猶予5年の判決でした。.

いわゆる「老老介護」の問題です。

生活保護を受給して姉を施設に預ける提案を受けていたそうです。

しかし「税金をもらって生きるのは他人に迷惑をかける」などと考えて受給せず殺害に至りました。

姉の顔にウェットティッシュを置き、手で押さえて窒息死させたのです。

死亡した姉は5年前から介護が必要になり、その後寝たきり状態になりました。

2人の収入は1カ月あたり約10万円の年金だけだったと言います。

現在、生活保護を受給しているのは全国で約164万世帯。

この数字を多いとみるのか、少ないとみるのか。

生活保護は「最後のセーフティーネット」と考えられています。

憲法の第25条がその根拠です。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という国民の生存権に由来しています。

生活保護法がそれです。

最低限度の生活が送れるように、国が生活費を支給して自立を促すシステムが生活保護なのです。

最近は高齢者を中心に生活保護受給者が増えています。

その金額は現在、総額で3兆円を超えているのです。

小論文でこの内容を扱う時の基本的なスタンスはどのようなものでしょうか。

課題文の内容に左右される難しいテーマであることも事実です。

逆転現象

最近では生活保護で支給される額の方が、国民年金の支給額よりも多いケースも見受けられます。

制度の逆転現象が起こっています。

耳にしたことがありますか。

支給額の不均衡が起こっているのです。

つまり国民年金を払わず、最終的に生活保護をもらった方が得だという考え方に辿り着く現実です。

さらに虚偽の申告をして、不正受給する問題も起こっています。

あるいは役所の相談窓口にいっても、きちんと対応してくれないという話もあります。

担当者によって、扱い方が全く違う例もかなり見受けられるようです。

しかし生活再建の見込みを確実なものにするために、最も必要なセーフティネットには違いありません。

実際の試験ではグラフや統計などを資料として提出されることもあります。

生活保護受給世帯数の推移や年齢層などを読み取る問題が出題される可能性もあります。

特にグラフの問題では、典型的な差があらわれる年度などについてその背景とともに論じなければなりません。

一般的な論点でいえば、格差社会との問題とも深くリンクする内容です。

貧富の差が激しくなるにつれて、自分で生活を再建できない人々が最後の手段として、生活保護にたどり着くこともあります。

それを側面から援助するNPOなどの存在もクローズアップされています。

生活保護が制度としてある背景をあらためて考えておく必要があるでしょう。

生存権との関係をどこまで明確にできるかが、この問題のポイントだと考えられます。

もう1つのポイントが扶養義務の運用に関する実態です。

生活保護を受給するにあたって扶養義務が履行されるべきかどうかということなのです。

申請する人の中には、親族との関係がうまくいっていないケースがよく見られます。

そういう場合、申請を抑制したい場面で行政側の武器になるのが扶養照会です。

生活保護を申請したことが、親族に照会されますよという一言は、有効な抑止力になりかねません。

本人を虐待した親やDV加害を行った配偶者が存在する場合にも全て通知されてしまいます。

その結果、深刻な事情を抱える人々が親族に連絡されることを恐れて受給をためらうケースがあるのです。

ケースワーカーの現場

ここで基本をおさえておきましょう。

生活保護を受給する条件は、最低生活費である13万円よりも世帯全体の収入が少ないことです。

ただし最低生活費が13万円と決まっているのは東京都内に1人暮らしをしているケースです。

住んでいる地域と世帯人数によって金額はそれぞれ異なります。

生活保護を受給するための条件のなかで、世帯収入が最低生活費以下であることは最も重視されています。

しかし収入などに関しても不正な申告があるのは周知の事実です。

どうしてそのようなことが起こるのでしょうか。

1番の問題は福祉現場の現状にあります。

実際、ケースワーカーは受給状況を把握するために受給者宅を個別に訪問します。

ところが、その件数があまりにも多いため、正確に判断しきれない場合が多いのです。

若い世代の自立支援なども同時に行わなければなりません。

高齢者を中心に生活保護の受給希望者は増え続けています。

さらにコロナ禍で受給希望者者が急激に増加しつつあります。

geralt / Pixabay

自立支援も同時に行わなければなりません。

ケースワーカーは受給者の内情を正確に調べている余裕がないのです。

親族の言い分を信じて申請を通してしまうケースもあります。

あるいは本当に支援が必要な人を見逃してしまうという結果にもなっています。

NPOなどが積極的に関わろうとしていますが、あくまでも外側からの支援にとどまっています。

仕事量が飛躍的に増え始めると、つい扶養義務の強化を打ち出したくなるのです。

親族との関係が悪い人にとって、扶養照会をされるということは、事実上申し込みを断念しなさいといわれているのと同じです。

経済的援助

収入が最低生活費以下であっても、身内から経済的援助を受けられる場合は生活保護を受給できません。

家族や親族など身内からの援助を受けられない人だけが受給できるというシステムなのです。

本当に離れて暮らしている家族や親戚などから援助を受けられないのかこちらから聞きますと言われて、どうぞと強く言える人は多くありません。

仕送りをしてくれる可能性があれば、行政は保護よりも先にそちらを優先します。

担当者は聞き込みを元に申込者の戸籍を取り寄せ、3親等以内の直系血族に対して書面で扶養調査をおこないます。

次の内容がそれにあたります。

1親等 父母、子供
2親等 祖父母、兄弟、姉妹、孫
3親等 おじ、おば、甥、姪、曾祖父母

どうでしょうか。

1人でも援助するという返事が届いた場合、生活保護は支給されません。

実際には血族の人達もそれぞれの生活で手一杯なのが現実です。

援助を断られるケースがほとんどなのです。

しかしそこまでしなくてはもらえないのかとなったら、申請希望者はどう考えるでしょうか。

あるいはうつ病やパニック障害などの精神疾患は、担当者からの認定がなかなかされにくいという現状もあります。

その他、生活保護を受けるうえでは、預貯金を始めとした財産を所有していないことも重視されます。

自分の持っている資産を売却して生活費をカバーできるのであれば、生活保護は不要だとみなされます。

さらにパソコンやテレビなども行政の自治体ごとに対応が異なります。

年金を支払わずに、最後に生活保護にすがるというパターンが今後増えてくる可能性もあります。

コロナ禍で仕事を失い、精神的に病んでしまった人が辿り着くセーフティネットとしての役割も果たさなければなりません。

さまざまな思惑をはらんで、現在、このシステムが稼働しています。

格差社会の中で、他者に対する厳しい目が降り注いでいるのも事実です。

生存権を錦の御旗にして、法の網を潜り抜けようとする行為は断じて許されません。

同時に真に必要な人には、権利として与えられなければならないのです。

両者のせめぎあいの中で、今日的課題が山積しているのが、まさに生活保護の現場なのです。

十分に内容を吟味してください。

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この制度のプラスとマイナスの両面をきちんと認識しておく必要があります。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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