【100冊の本】時代とともに生き続けてきた文庫本の未来は

本は世につれ

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

いよいよ夏休みですね。

今年はコロナとオリンピックで終わってしまいそうです。

どこへも行けないのかもしれません。

せめて本でも読んで、想像の世界へ羽ばたくしかないような気もします。

以前ふとしたことで、授業中に夏休みの読書の話をしたことがあります。

せっかくの機会だから大いに本を読みなさいと勧めたのです。

しかしどんな本を読んだらいいのかよくわからないと言う生徒がいました。

もっともな疑問です。

本屋を覗いてみれば、何千、何万という本が所狭しと並べられています。

さてどれを読んだらいいのかさっぱりわからないというのもわかりますね。

新刊書はあっという間に、また次の本にとってかわられ、長い間同じ棚に置かれるということもありません。

ましてや平積みになるようなものは、誠に命がはかないのです。

そこでつい新潮文庫の100冊のことを思い出し、その話をすることにしました。

これは随分前から夏休み前のイベントのようになっています。

その中に載っている本の感想を書くのです。

以前は800字くらい書かせるものが主流でした。

しかしいつの頃からか、長いものでは大変なのでごく短くなりました。

題して「ワタシの1行大賞」がそれです。

好きな1冊から気になった1行を選び、その1行に対する想いやエピソードを記述するという趣向です。

なぜその1行を選んだのかを100~400字で書くというものなのです。

これならば読書感想文より、ずっと垣根が低いですね。

角川文庫のはもっと今風です。

おススメの作品を読者に伝えるためのPOPを作ってみようというのです

読んだ作品の手書きのPOPを送ればいいワケです。

どうですか。

隋分と時代がかわりましたね。

夏の定番

以前なら読書感想文いうのが夏の宿題の定番でした。

今は全員に書かせるというのもなかなか大変なことなのです。

さて問題の100冊とはどのようなものなのでしょうか。

薄い無料の冊子が店頭に置いてあります。

手にとって眺めてみてください。

ここまで売れ筋の本はかわったのだなあというのが正直な感想です。

かつては名作の誉れ高い本が、これでもかと並んでいました。

この時期は平積みになって書店の入り口を飾っていたのです。

今でも同じように息はしているものの、ちょっと心細い印象を受けます。

もちろん出版社も商売です。

自社が囲い込んでいる作家のものをなるべく売りたいというのが本音でしょう。

しかし、そこにはまた出版人としての誇りや自負といったものもあります。

ただ売れればいいというものではないのです。

こんなことを口走る感覚がもう古いと言われれば、それまでかもしれません。

最近の100冊に対するぼくの感想はいくつかあります。

その1つは随分と甘口になったものだなということです。

これでは読者が鍛えられるということが少ないような気さえします。

もう1つ、長い間定番と呼ばれてきた作品は、やはりすごいということです。

夏目漱石の『こころ』や、安部公房の『砂の女』、カミュの『異邦人』、カフカの『変身』など、書きあげていけばきりがありません。

新潮文庫のロングセラー20冊というページもありました。

1 こころ 2 人間失格
3 老人と海 4 坊ちゃん
5 異邦人 6 友情
7 雪国 8 斜陽
9 破戒 10 悲しみよこんにちは

作者の名前を全て言えるでしょうか。

映像化作品

柔らかいものばかりをよく噛みもせずに飲み込んでいれば、そのうち、顎は退化するに違いありません。

漫画を原作とする作品ばかりを並べてしまうと、やはり想像力は衰えていくような気がしてならないのです。

もちろん、すぐれた漫画もあります。

それは大いに認めるとして、今後この100冊シリーズはどうなっていくのでしょうか。

voltamax / Pixabay

試みにカドカワ文庫の索引を少しだけ紹介しましょう。

50音順に並んでいます。

「あ」の行は誰か。

顎木あくみ、芥川龍之介、浅田次郎、あさのあつこ、芦沢央、阿泉来堂、荒俣宏、有川ひろ、伊岡瞬、伊坂幸太郎、一条岬、岩井恭平、岩井志摩子、上橋菜穂子、宇山佳祐、江戸川乱歩、乙一、小野不由美、恩田陸

以上です。

正直に告白しましょう。

この中でぼくが読んだことのある作家は5人だけです。

時代は明らかに変わりました。

その事実をあらためて痛感します。

作家の命も短いですね。

それでもここに取り上げてもらえた人は幸せなのかもしれません。

来年もここに掲載してもらえるかどうかさえ、わからないのです。

今はあまりにも媒体が多すぎます。

youtubeの時代

今は活字媒体よりも、やはり映像でしょうね。

その方が手っ取り早いです。

インパクトもかなりのものです。

小学生がなりたい職業のトップは今やユーチューバーなのです。

本当に時代がかわりました。

ちなみにカドカワ文庫のフェスティバル対象書籍の帯についている券を集めて応募すると、賞品がもらえます。

何だと思いますか。

A賞の6本は「EJアニメホテル」のペア宿泊券です。

EJとはEntertainment Japanの意味だそうです。

geralt / Pixabay

「好きな物語に泊まる」がコンセプトです。

アニメ、ゲーム、コミック、映画、特撮、アイドルなどとともに過ごせるホテルだとか。

去年オープンしました。

映像、音響、ライティングを駆使した新感覚のホテルらしいです。

いかにも現代を象徴していますね。

カドカワの戦略を見せられた印象が強いです。

ディズニーとはまた違ったエンタメの形なんでしょう。

いずれにしても動画の時代です。

活字がその流れの中にどこまで食い込めるのか。

その結果も見てみたいような気がします。

最後にぼくのお勧めの1冊を。

新潮文庫の100冊に入っているサイモン・シンの『フェルマーの最終定理』です

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無理して難解なものにも首をつっこんでみてくださいね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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