【小論文】ぶっちゃけホンネとタテマエのどっちに軍配が上がるのか

小論文

採点は難しい

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はかなりビミョーなテーマです。

日本人の最も得意な分野と言えないこともありません。

グローバル社会がこれだけ進化しているというのに、日本人の体質はそれほど変化しているとは言えないようです。

まさにホンネとタテマエの民族といってもいいのかもしれません。

かつて『「NO」と言える日本』というソニーの盛田会長と石原慎太郎によって共同執筆されたエッセイがありました。

刊行されたのは1989年です。

なぜこの本が売れたのか。

それは「NO」と言えない日本人の時代が長く続いていたからです。

というより、今もずっと同じ状況を引きずっているのではないでしょうか。

「考えておきます」という常套語は日本人にとってはまさにNoそのものなのです。

しかしそれを知らない外国人たちは、当然考えておいてくれるのだろうと思い、しばらくしてから返事を聞こうとします。

日本人の方はとっくの昔に話の内容も忘れているというワケです。

何の話でしたっけと返事をされて、外国人はキョトンとしちゃいます。

笑い話のようですが、ここに日本人のメンタリティが表現されているといってもいいでしょう。

小論文を書く時にもこれと同じ現象があります。

文は人を表します。

それだけにどの立場でまとめればいいのか、かなり迷いが生じることと思います。

「NO」を言わずにきれいに論点をまとめてしまうこともできないワケではありません。

わかりやすく言えば、どこに本論を持っていけばいのか。

自分らしい文章はどうすれば書けるのか。

本当に難しいのです。

解決がつかないテーマ

総論賛成、各論反対では論理的な文章にはならないのは当たり前。

しかし小論文に出題されるテーマはどれも解決の難しいものが多いのです。

確かに筆者の言う通りだが、さてどうしたらいいのかという本論に入っていく時に悩んでしまうのです。

どこから手をつけて解決への糸口を探ればいいのかということになると、全く手が出ません。

それでも入試に出されたら、何かを書かないワケにはいかないでしょう。

常識的な内容だけで書いたとしても、当然高い評価は得られないのです。

何度も小論文を書いていると、どこかで読んだような内容だなと自分で感じることもあります。

いわば手垢のついた表現が増えてくるのです。

ここが要注意点です。

環境は保護しなければならない。

経済の発展をおさえつつ、成長は続けなければならない。

人権はつねに守られるべきだ。

貧困と学力格差を是正しなければ、国力が低下する。

どれももっともな論理です。

反論の余地はありません。

どのテーマも、ここに示されたことを結論として出されると、何も言えなくなります。

しかしそれでは具体的にどのような方策を試みたらいいのでしょうか。

何を目途として先へ進めばいいのか。

本当に悩ましい話ですね。

論点をどうまとめていったらいいのか。

考えれば考えるほど、いよいよ深い泥沼にはまり込んでしまいます。

タテマエはきれいごとなのか

試みに公害病1つをとってみましょう。

日本にも過去に大きな公害がいくつもありました。

その結果として水俣病やイタイイタイ病など幾多の悲惨な例があります。

経済の成長を最大の目標として走り続けてきた結果、自然環境などに目を向ける余裕がなかったのが主な原因です。

そこまでわかっていて、さてそれでは他の国で起こっている同様の環境汚染に対して、何が言えるのでしょうか。

アジア、アフリカでの河川や大気の汚染について、どうしろと書けばいいのか。

どの国も経済的な発展を望んでいます。

3D_Maennchen / Pixabay

一足早く経済成長を遂げた日本に何が言えるのか。

今までに取りまとめられた幾つもの環境に関する条約には欠陥が指摘されています。

その中で1番大きいのは、最大の資源消費国が温室効果ガスの協定に加盟していないということです。

アメリカは「パリ協定」から離脱する方針を決めました。

今後どこまで二酸化炭素が地球を温め続けるのか、予測はつきません。

そうした中で存在感を示しているのは中国です。

中国は世界でも強大な二酸化炭素排出国で石炭大国でもあります。

同時に電気自動車の半分が走っているエコロジー大国でもあるのです。

しかしPM2.5などといった大気汚染の問題も抱えています。

1866946 / Pixabay

日本は京都議定書以来、CO2を削減するために神経質になっています。

だからといってどこの国にも同じようにしろということができるのかどうか。

目標を達成するのに必要な予算は想像を絶します。

開発途上の国々に、同じ質の削減を求めたいと口では言えますが、実際問題は大変に困難な道のりなのです。

だから経済の発展にブレーキをかけるべきだなどという暴論はもっと無理でしょう。

現実を直視する

どの立場から見ても、これは難問です。

自分のことを棚に上げてしまえば、どんなことでも言えます。

しかしそれでは論理的な構成の文章にはなりません。

どうしたらいいのか。

現実を直視する以外にありません。

最終的に大切なのは周囲の状況です。

その現実を自分がどのように理解しているのかを示すことが最も大切でしょう。

環境の問題にしてもそうです。

プラスチックフリーという表現を聞いて、すぐに自分が知っている海洋汚染の実情が書ける人は多くありません。

誰もが事実を知っているワケではないのです。

新聞で読んだことも雑誌や本で読んで知ったことは、1つのまぎれもない現実です。

その中で考えたことを素直に書いていくことも大切でしょう。

ポリ袋をやめ、多くの人が買い物のためのエコバックを持参するようになりました。

自分自身常に持ち歩いているということも現実そのものです。

しかし同時に家でごみをまとめる時、ポリ袋を有料で買うようになりました。

それももう1つの現実です。

その結果、何が言えるのか。

何をどの視点から書けば、今回のテーマに合致するのか。

1つずつ自分の中で咀嚼しながら書いていくことです。

その結果が本当に力のある小論文になるのではないでしょうか。

こういう風に書いたら評価が高くなるはずだと言ったような予測で文章をまとめてはいけません。

そんなことができるはずもありません。

口当たりのいいきれいな言葉を並べても、それは上滑りしていくだけです。

大地に根をはった刺さる文章を書いてください。

自分の本当の考えを絞り出していくことが大切です。

それ以外に採点者に評価してもらえる論文はありません。

小論文にタテマエもホンネもありません。

どちらの立場で書いてもダメです。

真剣にギリギリまで問い詰めた結果であれば、必ず採点者の胸に響きます。

人間にはそうした感受性が宿っているのです。

入試のその日まで頑張ってください。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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