【苦し紛れの小論文】あいまいで抽象的なテーマの問題にはこの方法で

学び

ぼんやりした問題

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

小論文には時々、実に苦しいテーマが出てきます。

どこから書いていいのか、さっぱりわからないパターンです。

特に哲学的な内容の問題が出されると、完全にお手上げです。

どのように書けば高い評価が得られるのかもわかりません。

課題文があれば、それが大きなヒントになるのです。

そのことは今まで何度も書きました。

しかしたった一文で、あなたの考えを書きなさいという問題の時は、本当に困ります。

制限字数800字を60分間でという指定があれば、最大限それに見合った内容でなければなりません。

ちなみにどんな問題があるのでしょうか。

過去問から少し見てみると…。

1番よく出るのが「人間の幸福」に関するテーマです。

人間にとって幸福とはなんでしょう、あなたの考えを自由に書きなさいというタイプの漠然とした問題です。

「幸福」というのは実に厄介な抽象語です。

人によってこれほど異なる概念はありません。

あるいはどの国のどのような人にとっての幸福なのかということでも、全く違うものになると思われます。

さらに面倒なのは「自由に」書きなさいという表現です。

自由に書けというのだから、自分の思ったままに書けばいいと思っている人もいることでしょう。

ズバリ言っておきます。

それはNGです。

「自由に」というのは思った通りに文章を綴っていくことを意味するのではありません。

そこにきちんとした構成意識がない場合、評価しませんと言っているのと同じ意味なのです。

小論文というのは、本当に面倒くさい試験です。

キーワードは論理性、一貫性です。

好きなように自由に書けばいいというのではありません。

そのことを絶対に忘れてはいけないのです。

具体的にまとめる

例文

人間には幸福になる権利がある。
争いのない社会がそこにあれば、人は幸せを感じることができるのだろう。
人間にとって大切なことは、心が平穏であるということだ。

最初に少しだけサンプルを書いてみました。

読んでみてどんな印象を持ちましたか。

こういう文に感心しているようではダメですよ。

これははっきり言えば感想文です。

雑記とでもいえばいいでしょうか。

論文にはつねに問題があり解決への糸口が必要なのです。

つまり問題が発掘できない限り、高い評価がつくことはありません。

このように「幸福」といったような抽象的問題の場合、具体例を探さなければなりません。

ここが1番のキモです。

何が問題なのかということが見つかれば、あとはそれに対する解決策を考えていけばいいのです。

当然、その前提として、なぜそれが問題なのかという理由の開示が必要です。

こういう理由があるから、この内容が問題なのだとはっきりしてくるワケです。

そこに鋭く光る眼があるかないかが、勝負の分かれ道になります。

あいまいなテーマの問題であればあるほど、確かな視点が必要になります。

自由に書きなさいという表現に踊らされてはいけません。

けっして自由に書くことを推奨しているのではないのです。

いわば言葉のレトリックだと考えてください。

ではどういう問題意識を持てばいいのでしょうか。

「幸福」というテーマからあらゆる具体的なキーワードを見つけ出すことです。

それ以外に成功への道はありません。

社会へ目を向ける

幸福というのはある意味、心の問題です。

哲学的にそれを追いかけていくことは当然可能でしょう。

しかしそれだけでは小論文としては大変に苦しいです。

採点者たちはどのような文章を期待しているのでしょうか。

そこを考えてみてください。

期待に沿ったものを書くという姿勢も大切なのです。

自分は人間の幸福についてこう考えるということを哲学的につきつめたものもあっていいでしょう。

しかしそれをするのはかなり難しいです。

相当の知識を必要とします。

多くの哲学者たちが、この問題に挑んできました。

3D_Maennchen / Pixabay

ある程度、確実な知識が蓄積されていないと、必ず途中で破綻します。

心の内部の幸福ということを追求できる人は、その方向をとってください。

しかしそれが無理な人は、全く別の論点から切り込まなければなりません。

そういう時はむしろ社会制度、システムのレベルからみていくと、問題を発見しやすい場合があります。

これなら、心の問題より誰にでも可視化できる部分が多いのです。

たとえば、実際的な生活の側面からみていきましょう。

憲法25条には生存権の項があります。

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないというものです。

ここを基礎にして生活の保証という側面からみていくことも可能です

別の角度から光をあてる

健康で文化的な最低限度の生活という文言は幸福と大きな関係を持ちます。

幸福には当然金銭的な裏付けが必要だからです。

今回のコロナ禍において、リストラされた人々がどのようにして、生活を再建しようとしているのか。

そのため、国は何を試みたのか。

そこに目を向けたらどうでしょうか。

国民全体に配布された補償の他にどのような措置が講じられたのか。

フリーランスの人々の暮らしはどうなったのか。

あるいは店舗を経営していた人たちに対してはどんな方法がとられたのか。

日本の経済システムの根幹を揺るがす問題だけに、具体的なテーマに即して書くことができると思います。

もちろん、経済だけが幸福をもたらすワケではありません。

差別のない人権を守って生きられる環境も幸福をもたらします。

あるいは自分の意見を自由に発言できる民主的なシステムも大切でしょう。

香港における昨今の政治状況をみれば、そのことが自ずと明らかになるはずです。

ポイントはどの視点からでもいいということです。

自分に書けるだけの内容があれば、哲学的な展開だけに頼る必要は全くありません。

自在に内容を整理していくことです。

geralt / Pixabay

ただし字数にもよりますが、いくつものテーマを並行して書くのはやめましょう。

たかだか800字程度では多くをまとめることはできません。

2000字レベルになれば、話は別です。

しかしその類の小論文の場合、長い課題文が出るのが普通です。

自由に書きなさいといったような出題方法ではありません。

自分の中にいくつもの切り口を用意することです。

必ず問題意識を明確にし、それに対する解決策を提示すること。

それが構成意識に繋がります。

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論理の一貫性を忘れないでください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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