【小論文】傍観者の姿勢を捨て当事者意識を持ってテーマにぶつかる

学び

当事者意識を持つ

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。

今までいろいろな観点から小論文の書き方を説明してきました。

接続詞の選び方も文末表現ももちろん大切です。

しかし小論文の難しさは実はそこにはありません。

それは何回も書いて次第に馴れていけば、誰にでもできるものです。

では本当のポイントは何でしょうか。

それはズバリ自分の考えを持っているかどうかにあります。

そんなこと当たり前だという人もいるでしょうね。

しかし長い添削歴の中で、本当にそのことをきちんと把握していた人は、それほど多くありませんでした。

最終的に自分の意見がなければ課題文を繰り返す以外に方法はないでしょう。

最後の手です。

でもこれでは高い評価を得られるワケがありません。

課題文をコピーして終わりという文章をいくら書いたところで、誰にもアピールしないのです。

しかし添削していると、このパターンが圧倒的に多いのです。

信じられないかもしれませんが、本当です。

これでは大学で学んでいこうとする意志が本当にあるのかと疑わしくなります。

今回のテーマは技術論ではありません。

この言葉とこの言葉で挟めば、論文の形になると言われても、中身がなければ、やはりNGなのです。

だからこそ、小論文は難しい。

自分というものの意見がないために、課題文に載っている誰かの意見をただ繰り返す。

これは最悪の方法です。

ではどうしたらいいのか。

そんなこと言われても急に自分の考えなんてまとまらないという人も多いでしょう。

今回のキーワードは当事者意識です。

自分がその立場になったら、どのような行動をとるのか。

あるいは自分だったら、どのように考えるのか。

そこを起点にしましょう。

少子化、晩婚化

入試問題にはその時々の最も先鋭的なテーマが出ます。

つまり問題意識のかたまりです。

つねに自分でいくつかのテーマを把握し考えておかなければなりません。

自分の周囲で起こっていることの中で一番喫緊のテーマはなんでしょうか。

異文化理解、情報化、格差、環境、遺伝子、高齢化、AI、災害、グローバリゼーション。

少し考えただけで、いくらでもテーマは出てきます。

政治、法律、文化、経済、教育、医療。

どれ1つとして、すぐに解決する問題はありません。

今回はその中の1つのテーマを題材にとりあげ、どのように文章を書いていけばいいのかを一緒に考えてみます。

テーマは「少子化、晩婚化」です。

これも難しい内容ですね。

受験生の立場からみると、自分にはほとんど関係がないと思うかもしれません。

しかしそれでは小論文は書けないのです。

最初に基本的な考えをまとめます。

1 近年の日本では少子化問題が発生し、出生数は減少している。
2 このことは労働力減少につながり、経済力の減退をもたらす。
3 同時に未婚化、晩婚化の傾向も増している。
4 女性の高学歴化が著しいので、就業率が高まっている。
5 仕事と家庭の両立が難しい現状の中で、少子化がさらに進行中である。
6 結婚年齢も上昇し、キャリア志向の強い女性は出産にも消極的である。

ここにあげたような内容が課題文として出題されたとしましょう。

考えられる課題とその対策について自分の考えをまとめなさいという問題があったらどのように書きますか。

問題によってはグラフが例示されているケースも考えられます。

あるいは新聞などの投書欄などから、育児に対する不安を述べた文を出題することも可能です。

テーマが決まれば、あらゆる角度から問題を吟味するというのが、大学側の方法なのです。

傍観者では評価されない

では実際に、どこから書き出せばいいのでしょうか。

ここで問題になるのが、書く人の立場です。

一般的な文章なら誰にでも書けるかもしれません。

しかし自分の立場を真剣に考えたならば、そう簡単に結論を出すことはできないものです。

それが当事者意識です。

自分自身にとって結婚するメリットは何か。

lavnatalia / Pixabay

特に女性にとっては高学歴化とともに結婚して家庭に入らなくても経済的に自立していきたいとする欲求が強いケースも多いのです。

特にキャリア志向の強い女性にとって、結婚出産は不合理な選択とならざるを得ない場面も多々あります。

自分の場合はどうか。

そこを考えてください。

社会に活躍できる場を作り上げた時、出産によって完全に断絶してしまうケースが、日本では圧倒的に多いのが現実です。

周囲を見回してください。

親、兄弟、親戚の現状はどうですか。

女性だけではありません。

男性にとっても状況は似たようなものです。

結婚して子供が生まれた後、育児休暇を現実にとれるでしょうか。

制度があるということとこの話は別のことです。

夫が外で働き、妻が家で家庭を守るという図式から、なかなか抜け出せないのが現状なのです。

「イクメン」などという言葉は確かに存在しています。

しかしそれがマスコミに取り上げられるということは、まだ世間ではそれほどに広まっていないということの証拠にもなりうるわけです。

この問題を自分につきつけてください。

あなたなら、どのような考えを持ちますか。

育児を終えてからパートで働くという非正規労働も現実には多いのです。

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保育園の数が足りない。

保育士が足りないというニュースも、流れ続けています。

男女の性別役割分担は解消しつつあるとはいうものの、それほど簡単なものではありません。

非婚化の流れも相乗的に起こっています。

現在も結婚適齢期の人の多くが非婚です。

これには収入の問題もからんでいます。

もう一度言いましょう。

自分自身の問題として、考えてください。

そうすると、文章が現実味を帯びて一気に強くなります。

自分には関係ないとか、一般的に言えばこうだなどといった書き方は許されません。

どうですか。

書けそうですか。

今までの文章とは明らかに違ってくるのがわかるはずです。

採点者もすぐにその差に気づきます。

この受験生は自分の問題として考える柔らかい思考力を持っていると判断されるワケです。

対策を明確に

結論として必ず最後に対策を付け加えましょう。

もちろん、それほど簡単に解決するようなテーマは出ません。

切り口を鮮やかにすることなどはできないケースもあるでしょう。

それでもギリギリまで自分で考えたという姿勢を示すことが大切です。

そんなことは考えてもムダだなどという態度ではダメです。

ここでは男女の性別役割分担をどうしていけばいいのかというのが主要な命題でしょう。

少しずつ改善していることは間違いがありません。

この流れをさらに確かなものにするにはどうしたらいいのか。
女性の立場からみた場合、出産育児をしながら自己のキャリア形成を犠牲にしない社会的な仕組みをどうすればいいのか。
夫婦で育児負担を分かち合うための方策。
社会の考え方。
仕事と生活のバランスをどう調和のあるものにするのか。
本当の意味で豊かな社会を築くための方法とは何か。

そのための具体例を自分で考えていくつか提示していく必要があります。

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たとえば以前から女性の就業率が高かったスエーデンやデンマークなどの北欧諸国は育児休業システムと所得補填や託児所充実などを次々と実施したという事実があります。

育児と就業の両立しやすい環境を整えて、急激な少子化傾向に一定の歯止めをかけることができたのです。

あるいは夫や妻の残業時間と夫婦依存度には深い関係性があります。

夫婦相互の信頼関係が強く築かれている場合、第2子、第3子への希望も強いことがわかっています。

自分の周囲を見回してください。

そこから発想を広げるのです。

自分を傍観者にしてはいけません。

一般論では絶対にダメです。

たとえばという表現を使って、自分の周囲に起こっていることを無理に書く必要はありません。

あまりやり過ぎると冗漫になるだけです。

むしろそこからの発想を応用してください。

どのような課題文にもこの方法論は使えます。

練習してください。

何度でも書いてみてください。

それが一番の方法です。

先生に添削してもらうのも、1つの方法ですよ。

みなさんの小論文がよりよいものになることを念じています。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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