未来への展望
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は少し未来のことを考えてみます。
今の時代に未来のことを考えるというのは、少し無謀かもしれません。
なかなか先が見えない時代ですからね。
SDGsに代表される喫緊の課題は、山積しています。
飢餓、貧困、地球温暖化、環境、ジェンダー。
どれも持続可能な課題として、解決への糸口を探るのは重いです。
どこから手をつけたらいいのか。
残念ながら、これが特効薬だというものはありません。
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以前、NHKの教育番組で、興味ある特集をしていました。
それはなぜ今の子供たちがあまり自宅で勉強をしないのかというものでした。
20年ほど前の高校生は平均95分、家で机に向かったといいます。
しかしそれが現在では55分だということでした。
現場にいたぼくの実感としてはもっと少ないかもしれません。
多くの高校では全く机に向かわない生徒が、約半数近くにのぼっているという実態もあります。
もちろんクラブ活動で疲れ、勉強どころではないという事情もあるでしょう。
あるいはアルバイトも原因の1つかもしれません。
最近はお金のかかることが多いですからね。
スマホの通信費を維持するだけでも、かなりの金額が必要です。
しかしそれだけが理由とも思えません。
いったいなぜなのでしょうか。
面接調査
NHKでは、約2000人を対象に面接調査を行ったそうです。
その結果、次のような回答を得たというのです。
その最大公約数は、勉強しても未来が拓けないというものでした。
以前は勉強をすれば、何かが変化したと言います。
確実な未来が見えたのです。
それは進歩であり、豊かな暮らしでした。
しかし今その親たちの世代がどういう状況にあるのか。
実に95%の親たちがこの国の将来は暗いという回答をしているのです。
その雰囲気が子供たちに伝わらないワケはありません。
つまり子供たちの勉強時間が少なくなったのは、親世代の自信喪失の反映だというのです。
親をみて、自分の明るい将来像をそこに重ねることができない子供たちが増えているのです。
もちろん、これだけが理由であるはずはありません。
新しい娯楽も以前とは比べものにならないくらい増えています。
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ゲームを始めれば、時間は瞬く間に過ぎていきます。
しかしやはり大きな問題は未来の構図にあるのかもしれません。
2月にはロシアのウクライナ侵攻がありました。
世界の安全保障の枠組みが大きく変化しています。
中国の台頭が世界に投げかける不安の量も大きくなるばかりです。
いざとなれば、核という最終兵器にも手がかかるところまできました。
一方では新しい感染症が猛威を奮っています。
コロナウィルスの収束にも時間がかかって苦しんでいるのです。
簡単に解決のつかない問題が山積しています。
救い
唯一の救いはいえば、まだ中高校生の40%ぐらいが日本に未来はあると答えている点です。
しかし逆にいえば60%の生徒はこの国の未来を明るいものとはみていません。
特に日本の青少年は、他の国に比べて自分に自信が持てずにいるという結果も出ています。
だからというわけではないものの、その中で勉強をして、大学へ入ってサラリーマンやOLになれというのかという悲痛な叫びも聞こえてきます。
一方で親は将来の安定を第1に望みます。
大企業や官庁への就職を希望する流れも厳然としてあります。
格差社会の現実が、この動きを助長しているのかもしれません。
一方は勝ち組になれ。
もう一方はそれが無理なら、今を楽しみたいと考えても仕方がないのかもしれないのです
しかし若い世代の人たちが、まったく勉学を放棄したのかといえば、そんなことはありません。
好きなことならどこまでも関わっていくのです。
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従来とは違った新しい職業観をもっていることも事実です。
ケーキや和菓子の職人を志向したり、割烹料理、フランス料理などの味をもとめて学ぶ若者もいます。
それ以外にもゲームや、コンピュータ、福祉、医療、ボランティアといった今までにない新しい分野を切り拓いていこうとするエネルギーも一方にはあります。
若い世代の人たちは教室でただ覚えるだけの授業に、根本的な懐疑を抱いているともいえるのかもしれません。
進学だけが人生ではありません。
ましてや有名校に入学したことで、人生が保証されるほど、単純な時代ではないということも一方ではしっかりと見抜いています。
ところが親たちは過去の価値に縛られています。
そこにしか安全な道がないような気さえしているのです。
同時に特別な資格取得に走る方向性も見えます。
特に医療関係などを志向する人には、そうした側面が強いようです。
生徒個人の特性を顧みず、成績がよければ医学部を受験させるなどといった学校もあると聞きます。
大きな変化
しかし現実は刻々と変化しています。
それを鋭く見抜いて行動しているのは、むしろ若い世代の人たちなのかもしれません。
大人たちに造反有理を叫んでいる子供たちの姿が、そこには垣間見えてきます。
新しいステージをどのようにして、一度限りの人生の中でつくりあげていくのかと若者たちは、今悩んでいるのです。
そうした試みと勉強時間との関係を今回のアンケートは結果として示したといってもいいでしょう。
子供たちの学業に対する関わり方を、スチューデント・アパシーと一言では片づけられないのかもしれません。
確かに時代は難しい局面にさしかかっています。
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宇宙飛行士の野口聡一さんは、インタビューに応じて次のように語ったという記事を読みました。
宇宙は自分が手を離せば無の世界に行ってしまう場所でした。
360度、光が来ない何もない景色が続き、星すら見えない暗闇に恐怖を覚えたと。
死の世界がそこにあったのです。
その時、彼は目の前にある、光を浴びたISSと遠くにみえる地球に力づけられたそうです。
そこにしか自分が生きられる場所がないという感覚は、体験した人にしかわかりません。
確かに地球がなくなったら、人間の未来はそこで消えてしまうのです。
次の時代を築く若者たちが、どのように展望を切り拓いていくのか。
それを見守るのも大人の仕事でしょう。
どうしたら未来へ向けての大人の自信と生きざまをみせられるのか。
先行する世代に課せられたテーマは想像以上に深くて重いものがあります。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。