【小論文・接続詞】順接と逆説を1つ間違えただけで合否が逆転する怖さ

学び

接続詞

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

新学期が始まりました。

いよいよ今月の下旬は都立高校の推薦入試です。

過去問をやったので添削してほしいという生徒もやって来ます。

小論文はいわゆる作文を少し延長させたタイプのものと、完全に論理展開を目指した内容の複雑なものに分かれています。

特に進路指導重点校などを中心にして非常に難解な問題がでます。

どちらのタイプが主流なのか、あらかじめチェックしておかなければなりません。

全体のバランスからみると、30%くらいの学校の小論文は相当練習をしなければならないタイプのものが多いです。

ことに昨今は文章の内容がレベルアップしています。

世界の複雑な問題をそのまま取り上げ、どの程度の知識を持っているのかをまず知ろうとします。

次に与えられた字数制限の中でどこまで思考を伸ばしたのかをみようとするのです。

bgphotographyllc / Pixabay

つまりこれからの時代にあった論理的な思考力を持っている生徒を選びたいという高校側の思惑が色濃く滲み出ています。

何が今、1番喫緊のテーマでしょうか。

様々な考え方があると思います。

基本はSDGsに関連した内容です。

17の設定目標の内部に多くの現実がとりこまれています。

飢餓、貧困、環境、ジェンダーと並べていくと、もうそれだけで問題ができます。

地球温暖化と脱炭素という内容はリンクしていますね。

炭素を減らすことが、すなわち地球温暖化を防ぐための方法なのです。

しかしそれを実践することは至難です。

その実態をどの程度把握しているのか。

そこが大きなポイントです。

岩波ジュニア新書

今日、生徒が持ってきた問題は2020年の都立町田高校に出題されたものでした。

清水真砂子『大人になるっておもしろい?』(2015年)が出典です。

都立高校の入試にはよく岩波ジュニア新書からのものが出題されます。

内容がわかりやすく噛み砕いてあり、理解しやすいのです。

このレベルの本をある程度読める生徒を高校側が求めていることを示しています。

岩波新書となると少しレベルが高くなるので、その中高生版といったところでしょうか。

内容は「自信」に関するものでした。

長い教師生活の中で自信を持てない生徒をたくさんみてきたと彼女は言います。

しかし実際に自信をもっているような人も、それをいつか失うのでないかという不安を抱えているというのです。

つまり自信が人を幸福にするとは思えなくなりました。

彼女はそんなことより自分自身を無条件に肯定できるようになることが大切だと言います。

あるがままの自分を好きになることが大切だというのです。

こんな自分でも受け入れてやるかというところまでくればいいのです。

まるごとの自分を引き受けてしっかり生きること。

自分自身を生き抜くことが大切だという論点の内容でした。

どうでしょうか。

こういう内容の文章はよくみかけますが、自信のない生徒をたくさんみてきただけに説得力があります。

正面からNoをいうのは難しいタイプの文章ですね。

問いは次の通りです。

筆者の考え方に対して、あなたの「自信」についての考えを、これまでの経験や見聞をもとに、400字以内で述べなさいというものです。

原稿用紙1枚というのは結構厳しいです。

字数が少ないと大変難しくなります。

経験と見聞

中学生にとって経験や見聞と言われても、それほどに多くのことはないに違いありません。

やはり学校生活の中でのことに傾くのは当然です。

それでいいのです。

しかし字数も決まっています。

実際に部活動で経験した内容で十分でしょう。

他人と比べながら技術を磨いていった。

しかしどうしても越えられない一線があった。

その時顧問の先生に自分の力を信じろと言われた。

友達と比べてもなんの意味もない。

自分の力量が以前より増したかどうか。

そこにだけ目を向けていくことで、無駄な不安を打ち消すことができるようになった。

例えば以上のような内容をさらに細かくまとめれば十分です。

mohamed_hassan / Pixabay

他人と比べることで作られる自信は必要ないのだという論点に持っていくことが大切です。

筆者の文章で説明しきれなかったところを補うのです。

同じ内容を繰り返してはいけません。

無駄です。

むしろ筆者の言い足りなかったところに自分の考えを接ぎ木するのです。

そうすれば、文章の強さも増します。

Yesで進むタイプの文章はだいたいこの方法でうまくいきます。

絶対に同じ内容を繰り返さないこと。

これが鉄則です。

このまま結論にもっていければ、ある程度のレベルに必ず滑り込めます。

致命的なミス

今日持ってきた生徒は最後に接続詞の使い方を間違えてしまいました。

それは何か。

確かに他人と優劣を比べる自信はいらないのである。

しかし自分が積みかさねてきた努力に対する自信は自分自身の肯定につながるのだ。

この文章を読んで首をひねりました。

なぜ「しかし」なのか。

「しかし」は強い逆説の接続詞です。

ここで「しかし」を使ったら、内容を全てひっくり返さなくてはいけません。

つまり自分だけで持った自信など何の意味もない。

他者との比較が大切なのだという論点にもっていくための「しかし」です。

実際の文の内容は順接のままでした。

こういう接続詞1つのミスが致命的なのです。

ここで大きな減点をされます。

せっかくの文章が、いっぺんにひっくり返ってしまうのです。

接続詞は怖い。

いい加減に使うととんでもないことになります。

論理の筋道が完全に見失われてしまうのです。

それではなんと書いたらいいのか。

結論、なんにもいりません。

「しかし」を消してください。

それで文章は最後まで真っすぐに意味が通ります。

「だから」「そして」などといった表現も不必要です。

添削を返した後、自分でも言葉は怖いと感じました。

この答案を最初に読んだ時のまとまりのなさの理由はたったこれだけの接続詞の存在にあったのです。

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あなたも試験では十分に注意してくださいね。

健闘をお祈りしています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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