生物は生き残れるのか
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は最近さまざまな場面で使われる生物の多様性ということについて考えてみましょう。
理系に進学する人はもちろん、文系の受験生にとってもおさえておくべき大切な内容です。
このテーマで1番大切なポイントは何でしょうか。
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それは、生物多様性という言葉に単純に惑わされてはいけないということです。
なんのためにこの問題が存在するのかというのが最大のヒントです。
私たち、人間のためですか。
それだけを目標にして進むと、足元をすくわれます。
それはあくまでも進む道のりの上にある事実です。
もちろん、無視していいワケではありません。
しかしもっと深く考えてください。
地球上のあらゆる生命は、人間のためだけに存在しているわけではないのです。
その事実を直視し認識するだけで自ずと文章が先に伸びでいきます。
言葉に踊らされてはいけません。
「生物多様性」とは、地球上の生物がバラエティに富んでいることを意味します。
つまり、複雑で多様な生態系を保っている事実そのものをさすのです。
これ以外に大切なポイントはありません。
私たちはこの表現を使うことで、なんとなく理解できたような気がついしてしまいます。
これだけでなんとか小論文を書けそうな印象を持てるのです。
しかしそれは落とし穴です。
言葉だけに酔っていると、先が見通せません。
もっと事実を知ること。
問題点を把握することが大切です。
SDGsの確認
国連が2030年を目標にして設定したSDGsとの関連も探ってください。
17に及ぶ目標と生物多様性はどういう関係になるのでしょうか。
主なものはつぎの2つです。
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさを守ろう
これには生物多様性の損失をとめるという表現が追記されています。
生物多様性とは、陸と海のすべてにわたる重要テーマなのです。
第15回締約国会議(COP15)が2021年10月、中国で開催される予定です。
目標設定と実施策にはこれまで以上の真剣な取り組みが求められます。
問題解決のための視点をどこにおけばいいのでしょうか。
簡単にいえば地球という天体との関連なのです。
「母なる地球」という言葉は大変にやさしく美しいイメージを持っています。
しかし現実は偶然が作り出した金属の塊にすぎません。
地球は多くの物質を含みこんだ天体の1つです。
たまたま温度、湿度などの条件と水があったことが生物の繁栄を約束しました。
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しかしそれが侵されてしまえば、生物のいない冷たい天体に戻るだけの話です。
「母なる」という言葉をかぶせる要素はなくなってしまうのです。
生物多様性というのは、生きものたちの豊かな個性とつながりを意味します。
地球は46億年以上の歴史の中で、3,000万種ともいわれる多様な生きものを生み出しました。
どれ1つとして勝手に生命を維持しているワケではないのです。
全て直接、間接的に支えあって生きています。
食物連鎖の微妙なバランスの上で成り立っているのです。
産業革命が起こるまではよかったとしましょう。
特に問題が見えてきたのは20世紀になってからです。
高度な産業の成長が全てのバランスを崩してしまいました。
自然災害だけでなく、在来種の持ち込み、薬品の過剰摂取などにより種の絶滅を招いたのです。
それが連鎖反応となり、生物の多様性が著しく損なわれています。
絶滅危惧種
20世紀に入り、動植物の絶滅が目立つようになりました。
レッドリストに記載される絶滅危惧種は増える一方です。
失われた生態系を人間の手で回復させるのは至難です。
いくら努力をしても限界があるのです。
何が根本的な問題なのでしょう。
一言でいえば、生物多様性が失われ、生態系が単純化すると、外からのさまざまな刺激に対する柔軟性が失われるのです。
地球温暖化の影響で気候変動が進み、局地的な豪雨が地域を襲うという現象がよく報告されています。
日本の夏の気候をみれば一目瞭然ですね。
明らかに熱帯の気候に近づいています。
線状降水帯などという表現は以前にはありませんでした。
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このケースは柔軟性損失の典型だといえるでしょう。
海洋資源も同じです。
海水温の変化で、海流が変化しています。
その結果、漁獲高に大きな影響が出ています。
以前なら大量にとれた魚が全くとれません。
当然、海の中の食物連鎖は変化を余儀なくされるでしょう。
人間だけの問題ではないのです。
結果として、食物連鎖の生態系が著しく損なわれるのです。
自然環境の悪化が、生物の多様性を、これまでにない早さで奪っています。
原因はどこにあるのか
人類そのものにあるのです。
人間が生物多様性を自ら壊しています。
最初はそこまでの意識はなかったのかもしれません。
しかし科学や工業の発展が、あまりにも急激であったため、動植物の数は急減しています。
地球上の生命はすべてが繋がっています。
特に目には見えないさまざまな菌類、バクテリアにいたるまで、多様な姿の生物が含まれているのです。
「生物多様性」は、この地球の環境そのものです。
たとえば空気の存在を考えてみればすぐにわかりますね、
光合成をするには植物中の葉緑素が必要なのです。
植物がなければ、酸素は供給されません。
「生物多様性」(Biodiversity)という言葉が生まれたのは、ごく最近のことです。
2つの言葉「生物的な=biological」と「多様性=diversity」を組み合わせた形で作られました。
以来、この表現が独立して世界を駆け回っています。
その理由は未来に対する危機感から始まりました。
今のまま進んだらどうなるのかという恐怖感です。
地球の環境悪化があまりに急激だったのです。
自然破壊のスピードがあまりに早すぎました。
保健や医療に関しても、生物多様性が果たしている役割があります。
人類の医療を支える医薬品の成分には、5万種から7万種もの植物からもたらされた物質が貢献していると言われています。
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しかし今、このさまざまな恵みが、広く失われようとしています。
資源の消費スピードがあまりにも早すぎました。
誰のために生物の多様性を守るのか。
人間だけのためにこの考え方があるとするのでは、必ず行き詰まります。
開発をしない保護区域を作ることや青少年世代への教育も大切です。
小論文でこのテーマが出たら、必ず次の世代の問題に繋がるとして、考察する視点を加えてください。
それが評価の大きな分かれ目になります。
今世紀のうちに方向を正確に決めなければなりません。
難しいテーマです。
生物多様性の価値と守るための施策に重点をおいてください。
ポイントは保護と教育です。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。