2022年度は難化か
みなさん、こんちには。
小論文指導歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は来年度の入試小論文の予想をしたいと思います。
2021年度はコロナとの戦いでした。
入試の動向を見極めるのが大変に難しかったのです。
大学入学共通テストもどのような問題になるか、全く予測できませんでした。
結果的には従来のセンター入試によく似たパターンに落ち着いたのですが…。
しかし来年度は難化の予想が出ています。
今までも2年目に入ると難化する傾向がありました。
データ分析が行われた後なので、試験をつくりやすくなるのです。
今年の平均点が高かった分、もう少し全体に下げようという機運があるようです。
もちろん、今までになかったような突飛な問題が出るというワケではありません。
基礎基本を着実にマスターしていけば、きちんとした結果が出るタイプのものであるはずです。
その点では安心して勉強を続けて下さい。
もう1つ、大切なのが推薦入試の動向です。
コロナの影響で推薦のためのデータをどうまとめればいいのか。
大変に苦しんだ1年間でした。
全国大会などの結果も出ず、どのような基準で評価してもらえるのか不安だったにちがいありません。
入試前の予想より、志望する受験生の数が少なかったのです。
今年はどうなるのでしょう。
事情は昨年とあまり変化していません。
今年も全国的な大会などは開けないようです。
つまり蓄積された評価データがあまりないということになります。
願書を出す人が減るのでしょうか。
態度や関心のレベル
そんなことはないと思います。
小論文に特化して勉強をしている人は一定数います。
推薦入試が増加する傾向はかわらないのです。
面接がリモートになるか、対面方式になるかは現在のところ予測できません。
しかし昨年の反省にたって今年はさまざまな方式で、面接も行われるものと思われます。
回線の不調でリモートが切れる可能性を不安視したケースが昨年は大変多かったのです。
今年はそこをどう乗り切るのかが大学側にも求められていくでしょう。
それとともに実績の評価基準をさらに明確化していくものと思われます。
つまり研究テーマや実績に対する興味、関心のレベルがはっきりとわかるものであれば、外部の公式評価だけにはこだわらないという態度です。
本来なら、優勝、準優勝、大会何位といったお墨付きがほしいところです。
さらに学芸や文化の面で際立った評価を得たという実績があればいうことはありません。
しかしコロナ禍の中、そんなこともいっていられないようです。
ポートフォリオへの信頼もまだ十分ではないのです。
担任や進路担当の先生方と知恵を絞りあってあらゆる努力の結果とプロセスを示す以外に方法はなさそうですね。
それと同時にもっとも重い比率になるのが小論文です。
文は人なりです。
文章を書いてもらうだけで、学力、理解力、学問への適応力などがわかります。
大学にとっても必須の入試形態なのです。
推薦入試を受験する人は、そこに照準をあわせて勉強していくことが大切でしょう。
ポイントは何のテーマが出るのかです。
新聞を丹念に読んでいる人は、世界が混沌としていることを日々感じているでしょう。
小論文にはしかし政治、経済よりも、もっと日常的な内容の課題文が出やすいのです。
少し予想してみましょう。
今年出た問題にさらにバイアスをかけてみると、2022年度入試の全体像がみえてきます。
2022年度入試予想テーマ
最大のテーマはズバリ何でしょうか。
それはSDGsです。
2022年はこれにつきると思います。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
ただし内容は単純ではありません。
一般的には17項目の目標ばかりが先にでています。
しかしその内部にはたくさんのターゲットが含まれているのです。
全部で169あります。
少し調べればすぐに出てきます。
全てダウンロードして印刷しておいてください。
その内容を調べることをこれからの日課にしましょう。
どれもが2030年度の達成目標の年に完結しているのが理想なのです。
しかし現実には今度のコロナ禍で今世紀中の達成は不可能だろうといわれるようになりました。
根本は貧困と飢餓の撲滅です。
貧困に関する第1のターゲットは「1日1.25ドル未満で生活している極度の貧困をなくす」なのです。
このことがどれほど難しいことか、実感して下さい。
全ての生活の基礎を1.25ドルで賄うことの意味を。
そこにはもちろん食費も入ります。
日本円にしていくらですか。
150円にも満たないのです。
そのお金がなくて日々の生活を賄えない人が世界にはどれくらいいるのか。
自分で調べてみてください。
どの地域に貧困層が1番多いのか。
それを調べるだけで、小論文のテーマに対する認識がガラリとかわります。
アフリカだと単純に決めつけではいけません。
アフリカの中も多様です。
サハラ以南とよく言われます。
しかしその内側にも種々の違いがあるのです。
17の目標をただ知るだけでなく、相互の繋がりがどのように関連付けられているかを考えてみてください。
一方を重視しすぎると、他方に大きな犠牲が出ます。
この繋がりの実感を持っている人は、今年の入試に強いと断言できます。
脱炭素社会・ジェンダー・プラスチックフリー
ここにあげたテーマは全てSDGsの中にとりこむことが可能です。
つまりそれだけ持続可能な開発という表現には深い内容があるということなのです。
今年も高校、大学の入試小論文を通じて環境、人権問題がたくさん出題されました。
なかには大変に難しいテーマが含まれています。
17の目標を知っているなどというレベルではダメです。
プラスチックをやめて紙をつかえば解決するという単純な話ではありません。
海は確かにきれいになるかもしれません。
しかしその結果森林資源が減少していきます。
一方が解決しても他方にしわ寄せがあったのでは意味がありません。
全てが関連づけられているのです。
それが見えていなければダメです。
少子高齢化、教育改革などは日本だけに固有の問題ではありません。
しかし日本のテーマとして紐づけられている要素もあります。
年金や、社会システムの問題とからめて、論点を整理しておくことが大切です。
特に韓国、中国などにおいても高齢化は日本以上のスピードで始まっています。
少子化と高齢化はつねにセットで論じられる傾向が強いです。
自分の中で何が問題なのか、きちんとまとめておいてください。
脱炭素化、水素エネルギー問題なども喫緊のテーマです。
エネルギーの枯渇と安全性と両面から内容を精査する必要があります。
原子力発電は炭素を出さないものの、高い危険性をつねに孕んでいます。
廃炉へのコストが予想を超えるというのも、これからの社会の負の財産になる可能性もあります。
福島原発が想定を超えた多額の国費を必要としているのかをみるだけでそれは明らかです。
2021年度にはコロナ禍の中をどう生き抜くかという心の問題も登場しました。
アイデンティティの喪失をいかに抑制するのかというのも喫緊のテーマです。
自殺者の数も若年層に広がっています。
生きることそのものへの懐疑も消えていないのです。
ここまで幾つかのポイントを書きました。
どの視点からも書けるように、勉強を続けてください。
テーマに対する理解の幅を広げることが大切です。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。