推薦か一般か
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
勉強の進み具合はどうですか。
今年は4月からイレギュラーなことばかり。
勉強のスケジュールも思うようにこなせないですね。
進路を決めなくてはならない段階になって、いろいろな不安が頭をもたげてきていることと思います。
推薦入試に応募するつもりでいたのに、実績が十分記録されなかったりするケースも多いようです。
その他、本来なら文化的評価なども手にするはずができたのに、それもかなわない。
応募の条件をクリアできず、悩んでいる人も多いと聞きます。
一般入試を念頭に置きながら、それでも推薦を受けるのかどうか。
ここは悩みどころですね。
特に社会や理科まで手が回らず国公立を諦めて私立にしようかという人もいるでしょう。
地方の人は都会への進学が難しくなりつつあります。
本来ならアルバイトなどをして、仕送りとでなんとか学業を続けたいという希望を持っていた人も多いはずです。
しかしそれがコロナ禍で、思うようにいきません。
むしろ今のようなリモート授業だけなら、退学して実家に帰りたいという人まで出てくる始末です。
入学定員厳格化の流れは一部緩和されたとはいえ、まだ続くでしょう。
新学習指導要領をふまえて新しい学力観を問う問題が今後増えていくことも十分に予想されます。
今のうちに入学しておかないと、入試の出題傾向が大きくかわるという不安もあります。
まさに多くの問題が一時に溢れてきた印象があります。
この激動の中でどう対応したらいいのか。
今年はどんな問題が出るのか。
予想するのは大変に難しいことばかりです。
生きることの意味
新型コロナが蔓延して以来、世界の様相はガラリとかわりました。
ここのところ国内ではいくらか発生者数が減ってはきましたが、世界をみると、むしろ増えている国も多いのです。
イギリスなどでは再びロックダウンの可能性も論じられています。
小論文の基本はあらゆる課題を「自分の問題」として捉える力がどの程度あるのかということをみるものです。
世界の中にポツンと砂粒のように存在する自分とは何か。
生きることの意味とは何か。
最も根源的な問題です。
おそらく「生の意味」に関してコロナ禍との関連で内実を問う問題が多く出題されるものと思われます。
感染症の持つ怖ろしさは、時と場所を選ばないことです。
それまで健康だった人が突然倒れ死んでいく。
他者には踏み込むことのできない厳粛な領域です。
その事実の持つ意味をもう1度考えさせたいとするテーマが増えるに違いありません。
ゲームならリセットすれば、そこから再びシステムが立ち上がります。
しかし現実の生は1度限り。
リセットすることはできません。
となれば、「生の1回性」が持っている根源の意味をここで考えてもらおうというテーマが出ても不思議ではありません。
今年は評論家で劇作家だった山崎正和氏が亡くなりました。
おそらく出題者は彼の評論の中で、使えるものがないか探していることと思います。
彼はスケールの大きな哲学者でもありました。
戦後の家族の中で、個人が持つ意味を探ろうとしたのです。
恰好の評論があればそこから「家族対個人」について書いてもらおうという考えが出てきても不思議ではありません。
もう1つの目
もう1つ、間違い違いなく出題されるのは2030年に向けて世界が合意した「接続可能な問題」のテーマです。
今日、大きな意味を全世界的に持ちつつあります。
英語の表現ではSustainable Development Goals。
国連サミットで採択された17分野の目標のどれが入試問題に出ても、不思議ではありません。
逆にいえばこのテーマをおさえておくことが大切になります。
1 貧困をなくそう
2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
4 質の高い教育をみんなに
5 ジェンダー平等を実現しよう
6 安全な水とトイレを世界中に
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
10 人や国の不平等をなくそう
11 住み続けられる街づくりを
12 つくる責任つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさも守ろう
16 平和と公正を全ての人に
17 パートナーシップで目標を達成しよう
実はどれも達成できていません。
イメージは壮大ですが、実行に移すのはそんなに容易ではないのです。
本当に少しずつ先へ進めばいいというのが実情に近いと考えてください。
方法論を示そう
出題する大学側は受験生に解決策を求めているわけではありません。
決められた制限時間の中で、与えられた条件の課題文を読み、そこから引き出せる考えとしてどのようなものがあるのかを導き出す能力を見ているのです。
それでもその中で、何が最良の解決策なのかを自分の頭で考え続けた人だけが合格します。
この中から何が出題されそうか。
自分で予想しておくことも大切です。
できたら全てのテーマについて、何がネックになっているのか。
どこにバリアがあるのかを明らかにしておいてください。
少しでも新書などを読んで知識を広げておくと、小論文に説得力が出てきます。
自分が経験したことを1つでも簡潔に織り込んでみると、それだけでリアリティが出ます。
ポイントは論理構成力です。
どうしてこの結論にまでたどりついたのかということを立証してください。
主部と述部が対応する文章を書きましょう。
そのためには短い文を重ねていくことです。
時事問題については普段から新聞を丹念に読み込むことも大切です。
もうそれほどの時間はありません。
「接続可能な問題」に特化して内容を整理しましょう。
それだけでもかなりの効果があります。
世界の問題を俯瞰してみれば、現在の自分が置かれた立場も見えてきます。
ある程度内容がまとまったら、受験する大学の過去問は絶対に調べておきましょう。
少しずつでもまとまっていれば、可能性が開けます。
合格の2字を信じて先へ進むしかありません。
精一杯頑張ってくださいね。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。