書かない内容を選ぶ
みなさん、こんにちは。
小論文添削指導歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はいつもの課題文型とは違う、資料分析型の問題を扱います。
受験の小論文で圧倒的に多いのは課題文型です。
これが全体の約60%です。
残りをテーマ型が15%と資料分析型の問題が15%で分け合っています。
その他に英文読解型、理科数学型などもあります。
テーマが1つだけポツンと投げ出されて、考えたことを書けというタイプの問題も確かに苦しいです。
しかしそれ以上に大変なのが資料分析型です。
グラフの出題とあわせて意見を書けといわれると、かなり戸惑います。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/11/undraw_my_password_d6kg-1024x815.png)
データがあるのだから簡単なのではないかと思われる人もいるでしょう。
そんなに甘くはありません。
なかには課題文とグラフがセットになったものもあります。
グラフではなく、資料そのものを箇条書きにしたものなどもあります。
いずれにしてもある種のデータを読み取って、それに対する自分の考えを書くというものです。
やってみればわかりますが、目の前にデータを出されると、ついあれもこれもと手を出してしまいます。
読み取れる情報があまりにもたくさんあるのです。
資料は黙っているようですが、目の前でここはどうだ、あそこはどうだと雄弁に語りかけてきます。
だからといって、あれもこれも書くというのは得策ではありません。
資料分析型の最大の戦略は書くことと書かないことを分ける点にあります。
資料の中から重要な点を抜き出し、そこを徹底的に書き込んでいくのです。
1番大切なのは書かない内容を決めることです。
やってみると、意外に難しいです。
資料は饒舌です。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/08/リテラシー_1565609392-1024x682.jpg)
つい発見したことを書きたくなります。
それがこのタイプの小論文試験のキモです。
資料を観察しよう
まず問題を見た時にすることは観察です。
じっくりと眺めるのです。
大切なポイントを発見してください。
それから記録をします。
ここから書く作業が始まります。
その際に大切なのは余計な憶測を混ぜないこと。
ついこんな可能性があるんじゃないかと書きたくなります。
それはNG。
絶対に類推などをしてはいけません。
あくまでも資料が示す特徴をまとめていくのです。
それもできるだけ簡潔に。
資料分析問題のポイントは発見する能力にあります。
ここが1番大切だと思えるところを重点的に押さえるのです。
数年間のグラフが提示されたとしたら、どこを見ますか。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/07/52e6dd474e52b114a6da8c7ccf203163143ad8e6525476487128_640_書類.jpg)
当然、同じところと違うところです。
この数年間、あるいは数十年間の間に、どこが1番変わったのか。
あるいはどこが全く変わらなかったのか。
そこが大切なポイントです。
その2つを交差させて論じていけば、十分な合格答案になります。
つまり見なくてもいいところはスルーしてしまうのです。
発見のための練習はある程度行っておいた方がいいでしょう。
グラフをみた時、すぐに食いつけるのはどこかを発見してください。
資料の特徴をみつける
資料がその存在価値を持っているのは、それが事実だからです。
真実だからです。
推論はいりません。
その数字を素直に読み込んで考えてください。
自分の考えの通りでないと、資料を無理にねじまげて読み取る人がいます。
本来はこうであるはずなのに、こうではないというような否定形での捉え方を絶対にしてはいけません。
なんのためのデータなのか、全くわからなくなってしまいます。
自分の意見は後で述べればよいのです。
そのデータ通りの考えでなくてかまいません。
しかし資料を読み取る時は、その数字に真摯に向かい合ってください。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/12/undraw_investing_7u74-1024x810.png)
否定形で文末をまとめようとすると、なかなか難しいのです。
「~でない」とせず、「~が十分でない場合もある」というような形でまとめた方がいいでしょう。
資料の読み取りで注意しなくてはいけないことは、針小棒大はダメということです。
ほんのわずかな事実を大きくいかにも重大なことのようにまとめあげてしまう受験生がいます。
その方が自分の論点を述べやすいからです。
しかしその方法はいけません。
必ず行き詰まります。
とにかく資料に真正面からぶつかること。
自分の論点とずれてしまっても仕方がありません。
それが現実なのです。
試験場では焦るに違いありません。
自分の認識とズレがある内容だった場合、どこへ結論をもっていっていいかわからなくなるからです。
だからといって歪曲は許されません。
採点者はあらかじめ、打ち合わせ会議でさまざまな答案のパターンを検討しあっています。
姑息な手段で高い評価を得るのが難しいことを知っておいてください。
表やグラフの読み取り方
資料を十分に読み取れと書きました。
同じところと違うところを徹底的に分析しろとも述べました。
具体的にはどうすればいいのでしょうか。
大切なポイントを3つ書きます。
この方法で切り込めば、表やグラフの問題は読み取れます。
1つ目は時間の経過を徹底的に追うことです。
![](https://suikyoblog.com/wp-content/uploads/2019/11/toys-2561392_640.jpg)
示されたグラフには必ず時間の経過が縦軸か横軸にあらわれます。
その流れの中で何が変化したのかしなかったのかを見抜いてください。
2つ目は複数の事項を同じ条件で比較した時、どうなったのかを見ることです。
3つ目は同じ事項を複数の条件で比較した時、どうであったのかを考えることです。
具体的に少し考えてみましょう。
子供の貧困などの問題と日本の格差社会などをグラフにした問題はよく出題されます。
父親の学歴と子供の学力
母親の学歴と子供の学力
親の社会経済階層と学力
子育て環境と年収の関係
このような内容のグラフが示されたとして、そこから何を読み取ればいいのか。
子供の学力と親の経済力の間にどのような変化があるかを最初にみましよう。
次に父親と母親の学歴と子供の学力の差をチェックします。
すると格差が拡大傾向にあることがわかります。
同時に父親の学歴のみと母親の学歴のみを固定して子供の学力をみます。
母親の学歴が「初等・前期中学」の子供の学力は元々低い傾向があったが、さらにここへきて低くなっていることがわかります。
父母の学歴を同時にみると、両者とも高い層は子供の学力も高いです。
考えられることは父親と母親の学歴がともに同質化しているということです。
父親だけが高い学歴であるというケースは少なく、同じ階層の男女が結婚をして子供を養育する傾向が近年強くなっているということもわかります。
「中」から離れた階層の「下」の子供達も同じ公立学校に通っている中で、なぜ学力の低下がみられるのでしょうか。
そこに子育て環境の違いを見ることができるのです。
子供とゆっくり遊べない貧困家庭では、必然的に学力も落ちています。
こうした内容を次々と読み込んでいくという作業をしてから、自分の考えを書くという次のステップに入ります。
グラフの読み取りは、きちんと真っ直ぐに予断なく。
これが結論です。
大切なことです。
忘れないでくださいね。
諦めずに練習を続けましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。