フィルターバブル現象
昨日(4月19日)、全国学力学習状況調査(全国学力テスト)が実施されました。
これは小学6年生と中学3年生を対象に、学力や学習意欲などを毎年調べているテストです。
文部科学省がこの時期に実施しています。
結果は7月下旬に公表される見込みです。
今日の新聞にその試験の内容が掲載されていました。
この中で、もっとも個人的に関心をひいたのは中学3年を対象にした国語の問題です。
テーマはずばり「フィルターバブル現象」です。
これはアルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し、学習する行為をさします。
毎日、たくさんの記事を見ながら、私たちは選択を繰り返しています。
時には調べものをすることもありますね。
興味や関心のある内容を中心に、検索する行動を続けているのです。
その結果、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示されるようになります。
利用者の関心にそぐわない情報はどんどん遠ざけられます。
見たくない内容は、いつの間にか視界の外へ追い出されていってしまうのです。
考えようによっては、自分の考え方や価値観の「バブル」の中に、次第に孤立するという環境に達します。
この現象は誰もが体験しているはずです。
しかし普段はあまり意識していません。
知らない間に、自分の周囲にある情報は、全て自分好みのものに変身しているというワケです。
ネット社会の怖さは各ユーザーにそれと認識されない間に、個人を囲い込んでいくところにあります。
ユーザーを識別する仕組みで構成されているのです。
クッキーの怖さ
最もわかりやすい例がクッキーと呼ばれるものです。
Webサイトで入力したユーザー名などの接続情報、会員情報、買いものかごに入れた商品の情報などをすべて記録したファイルです
過去のクリック履歴や、検索履歴のような、プライベートな情報をクッキーは把握しているのです。
個人情報を記憶した後で、それぞれの検索サイトのアルゴリズムに基づいてユーザーの嗜好を解析し、その人が見たいだろうと思われる情報を選択的に推定していくのです。
逆にいえば、見たくないだろうと思われる情報を遮断します。
同じネットを見ているつもりでも、実際に見ているのは個人的な「フィルター」を介してパーソナライズされた特殊な世界なのです。
つまりアルゴリズムが精緻化していくのです。
すぐれたWebサイトとはどのようもののことを言うのでしょうか。
ユーザーは非情です。
検索のヒット率がよくなければ、すぐに離れていってしまいます。
当然、広告の出稿量と関係してくるので、開発業者は必死です。
各サイトの検索アルゴリズムは、ますます鋭く進化する一方なのです。
自分の欲しい検索結果が瞬時に返って来るようになると、最終的には、必要としている情報以外に触れるチャンスは極端に減ります。
その結果、同じ考えを持つ人々同士だけが心地よく集うことになります。
異端が排除されやすくなるのです。
さらに追求していくと、それぞれの集団が文化的、思想的なバブルの中に孤立するようになっていくことになります。
わかりやすくいえば、「オタク化」するのです。
この現象がある意味で、最も怖いのかもしれません。
全国学力テストの問題
今回の全国学力テストの問題は、国語の時間に「フィルターバブル現象」について学んだ時の話し合いの場面を描写したものでした。
最初にこの現象の様子を説明した文章が、イラストと一緒に掲載されています。
その後に3人の生徒の話し合いの内容が示されています。
話し合いのテーマは本の選択の方法についてです。
1人の生徒は自分の兄が、ネットで趣味の将棋の本を買い始めたという話をします。
するとその関係の本の広告が、次々と画面に出たという事実を伝えます。
そこから「フィルターバブル現象と本の選び方」についての話題に発展していくのです。
1人の生徒は和菓子作りの本を探し始めたら、その関係の本ばかりが出てきたと報告します。
それはそれでいいとしても、他の情報が抜け落ちてしまうことが多くなったというのです。
図書館に行って、思いがけない本との出会いがあるというようなことがなくなったというのが残念だと述べます。
問題に絡む発言は次のようなものです。
ネットの中にはさまざまな人がお勧めの本を紹介しているページがあり、そういうサイトを注意深くみていれば、フィルターバブルの影響を受けにくいのではないかというのです。
ポイントは、これから先、どのようにして本を選んでいけばよいのかということです。
あなたならここてから先、どのような考えを述べますか。
その際に、条件の1と2を必ず入れ、実際に話すように書きなさいというのが指示です。
条件1 フィルターバブル現象の特徴について取り上げながら、これからどのように本を選びたいかを具体的に書くこと。
条件2 話し合いの一部の誰の発言と結びつくのかがわかるようにまとめるのが課題です。
入試問題への展望
全国学力調査の問題なので、突飛な難問というワケではありません。
しかしこの線に沿って、入試問題をつくりあげることは。けっして不可能ではありません。
ネット検索が孕むリスクはどこにあるのか。
あるいはメリットは何か。
自分はどちらの立場にたつべきなのか。
それをあらかじめ明確にしておく必要があるでしょう。
ネット検索の最大のメリットは、時間の短縮です。
調べたい内容がすぐ目の前に登場するということのすばらしさは、他では体験できません。
しかし同時にネットバブル現象の怖さは私たちを新しいアイデア、話題、重要な情報から締め出すことにあります。
個人の中にある広がりや可能性を破壊してしまうことも、十分あり得るのです。
そこで1つの提案を考えておきましょう。
クッキーを排除しながら、検索をするという方法を考察しなければいけません。
検索で履歴などを残さない方法はないのか。
たとえば、プライベートモードで開くという方法も考えられます。
キャッシュ、クッキー、履歴等がウインドウを閉じる度に消去されるというスキルはあげておくべきでしょう。
確かに過去の履歴が消えていて、不便ではありますが、履歴に影響されない状態でブラウズすることができます。
この方法だと、アルゴリズムの嵐にあうことの確率はぐっと低くなります。
その他、意識して、ネットから離れる瞬間を持つことも大切です。
自分がつねに置かれている環境がどのようなものであるのか、ということにもっと意識的である必要があります。
そうした心がけを持つだけでも、かなり「フィルターバブル」現象から離れることができます。
毎日の生活の中に、少しの不便さをいれることの大切さを実感してください。
アナログ的な時間の構成も、ここでは重要になります。
今回の問題は会話体で書けという指示がありました。
試験の場合は、文字数、制限時間などのしばりをきちんと守り、文体の約束を丁寧にフォローすることが大切です。
ぜひ、1度文章化し、添削をしてもらってください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。