【フェルマーの最終定理】300年間も数学者を悩ませ続けた話【完全数】

数学の奥深さ

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はいつもと趣向をかえて、数学の話をします。

以前、ぼくの履歴にも書きました。

実は大学2年生まで数学を勉強していたのです。

しかし最後に挫折。

3年生の時、一念発起して文学部へ転部しました。

そのあたりの事情は、プロフィール欄を読んでいただければ、よくわかります。

そんなわけで、時々、数学に関する本も読みます。

何が愛読書かと問われたら、ズバリこれですね。

新潮文庫の100冊にも載っているサイモン・シン著『フェルマーの最終定理』です。

イギリスのテレビ局BBCが制作したTVドキュメンタリー『フェルマーの最終定理』の評判が大変よく、彼は多くの賞を受けました。

その勢いにのって翌、1997年に刊行された著作なのです。

今も世界中でも読まれています。

内容はけっしてやさしくはありません。

しかし門外漢が読んでも面白く、思わず唸らされてしまいます。

数学の世界の底の深さを知ることができるからです。

多くの人が、この定理の名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

フェルマーの定理は300年以上にわたり、数学者を悩ませ続けた難問中の難問といってもいいのです。

それを1人で子供の頃から考え続け、ついに証明したのがアンドリュー・ワイルズという数学者です。

1980年代にアメリカにわたり、プリンストン大学で数学を教えるかたわら、妻以外のだれにも、自分がこの定理の解法を研究していることを告げませんでした。

この本にはそうしたワイルズ自身のドラマとともに、今までどういう問題が数学的難問とされてきたのかという紹介もあります。

読んでいるうちに、数字そのものに秘められた不思議な魔力にひきつけられていきます。

それだけ数学の世界は奥が深いということなのでしょう。

科学の分野というより、もう哲学そのものだといえます。

フェルマーの最終定理

フェルマーの定理とはそもそも何なのか。

それを著者はピタゴラスの生い立ちから書き始めています。

三平方の定理と呼ばれるこのすばらしい数の発見は、その後の数学にとってひとつの難問の入り口でもありました。

この本の面白さは後半のところに、それぞれの証明を載せてくれているところです。

背理法や、数学的帰納法などの説明も同時に書き込まれています。

さてフェルマーの定理にスポットライトをあてましよう。

それは次のようなものです。

17世紀を代表するフランスの数学者フェルマーが本の余白に書き入れたという数式が、300年以上にわたって人々を悩ませ続けたのです。

わかりやすく書くと、これがその定理の内容です。。

3以上の自然数nに対して、xのn乗+yのn乗=zのn乗にあてはまる数字、x、y、zは存在しないというものです。

voltamax / Pixabay

何のことを言っているか、わかりますか。

普通はそこに存在することを証明するのですが、これは全く正反対です。

絶対に存在しないということを証明するのです。

ピタゴラスの定理はnが2の場合であり、これにあてはまるx、y、zが存在していることはよく知られています。

たとえば、3、4、5の組み合わせはもっともポピュラーなものです。

ちなみにこの定理に当てはまる数をピタゴラス数と呼んでいます。

その数は無限個、存在しています。

5、12、13などもそうですね。

3、4、5のようにそれぞれが素数の数字の場合、原始ピタゴラス数と呼びます。

ちなみに素数とは1とその数字以外には割れない数字のことです。

それでは、どのようにしてフェルマーの公式が解けたのでしょうか。

その解法のために日本人が2人、大きな予想をたてていたということだけは書いておきます。

それが谷山豊と志村五郎という2人の数学者です。

彼ら2人はモジュラー形式という数学的分野で、大きな業績をあげ、それが結局フェルマーの定理とつながっているという予想を、アンドリュー・ワイルズに予感として与えたのです。

証明は誤りだった

アンドリュー・ワイルズが最終的な解法の証明をしたと発表した時の衝撃は、ものすごいものでした。

しかし同時に、彼は信じられないような誤りを犯していたのです。

その後、いつまでたっても本当に解けたのかどうかの結果は公にされませんでした。

その間に調査委員会の複数の数学者達が、彼の解法が真であるかどうかの検証を行っていたのです。

その結果、どうしても証明できない部分が残りました。

ここからが、ワイルズにとって本当の戦いだったのです。

それからの1年間、彼はただ自分の部屋にこもりきり、ただ一つの最後のテーマと格闘し続けたのです。

その頃になると、世間はフェルマーの定理のことなど、完全に忘れ果てていました。

ところが、ついにある日、問題は解決しました。

その解法を証明するための講演が、ケンブリッジ大学で行われることになったのです。

1993年6月23日、この日をもって難問中の難問から、全てのヴェールがはがされました。

数学者である彼にとって、戦いの終わりを示す記念すべき日でした。

直角三角形の斜辺の2乗は他の2辺の2乗の和に等しいという単純なフレーズが、なぜ3乗以上になると、イコールでなくなるのかという、ただそれだけの問題に300年以上の月日が費やされたのです。

数字の秘密

この本の巻末には、面白い補遺がたくさん載っています。

ルート2が無理数であることを証明する方法や、ゲーム理論の話など、どれも興味あるテーマばかりです。

数学の苦手な人にも楽しく読めます。

ぼくは完全数の話に大変興味を持ちました。

自然数aで、a以外の約数(1を含む)の和がaに等しいとき、aを完全数というのです。

例えば、6の約数は、1、2、3、の3つで、その合計が1+2+3=6 ですから、6は完全数です。

そのほかに、28、496、8128、33550336、8589869056などが見つかっています。

完全数は、連続した自然数の和で表すことができるのです。

美しいですね。

例えば 6=1+2+3、28=1+2+3+4+5+6+7などです。

現在までに発見されている完全数は、メルセンヌ素数と同じく51個です。

研究は今も続いていますが、完全数が無数に存在するのか、有限なのかもよくわかっていません。

ここに出てくるメルセンヌ素数というのも不思議な数字です。

聞いたことがありますか。

以前、高校生で研究を続けている人の話が新聞に載っていました。

「2のn乗-1」という形の数を「メルセンヌ数」といい、素数のメルセンヌ数を「メルセンヌ素数」と呼んでいるのです。

最初に「2のn乗-1」のサンプルを出しましょう。

1、3、7、15、31、63、127、255、511、1023、2047。

これはずっと続きます。

わかりますか。

2を何度もかけて、そこから1を引いていくのです。

ところがこの中で素数だけとなるとどうなるか。

3、7、31、127、8191、131071、524287。

実はまだ51個しかみつかっていないのです。

51番目はコンピュータで計算し、なんと2400万桁を超えることがわかりました。

数学は果てしないです。

それだけに魅惑的でもあります。

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ぜひ、チャンスがあったら、この本を手にとってみてください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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