【小論文の採点方法】ブラックボックス化した評価の基準を開示します

学び

小論文の採点

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はあまり多くの人が口にしない話をします。

採点者の裏話というのは、公開されるケースがほとんどありませんね。

実際のところ、どのように評価をつけて採点しているのか。

中身はブラックボックスだといっても過言ではありません。

ここからはぼく自身が経験してきた話をします。

今まで、20年以上にわたって、多くの文章を読んできました。

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もっとも多い時期は年に500枚以上の答案に目を通しました。

1年間に添削した枚数も200枚は超えていたと思います。

浪人生が大半でした。

全体を「A」~「D」の4段階に分け、さらにその中間に「上」と「下」をつけました。

最も優れているのが「A上」です。

その反対が「D下」です。

基準値を「C」にしました。

評価する採点ポイントはいくつかに分かれています。

基本は「論理性」「読解力」「独創性」「文章力」の4点です。

文章力の中には誤字、文字数、助詞の使い方などの要素が含まれています。

どのタイプの文章に一番、いい評価をしたのか。

一言でいうのは大変に難しいです。

文章は生きていますからね。

具体的な採点方法

全てを点数化していくのが、一般的な採点方法です。

4つの要素を各25点ずつにして、それぞれの要素に応じて、点を入れ、最後に合計します

大学のレベルによっても、どこを1番重視するのかは違います。

ある程度、内容が理解できる受験生が多い場合は、発展的な要素である独創性を高くします。

その反対のケースでは、より基礎的な文章力などを重点的にみるのです。

まず最初に全体を読みます。

言葉の使い方をみれば、ある程度国語力があるかどうかは、すぐにわかります。

語彙力なども当然チェックします。

あまりにも幼いものはもちろんアウトです。

その反対に、難しい言葉を使ってはいるものの、きちんと理解できていないものものも減点していきます。

合格点は「B」以上という時が1番多かったですね。

点数にして70%以上というレベルでしょうか。

合格者数を何人にするかで数字は違ってきます。

競争倍率の要素が大きく響くのは当然の結果です。

最初に文字数などで足切りをするケースもあります。

制限字数の50%以上書いてなければ、採点の対象にならないといった例です。

さらに設問の指示をきちんと守っているのかという、基本的な点からチェックを始める時もあります。

小論文では、「筆者の考え方を参考にして」などという指示が加わることがよくあります。

あるいは決められたキーワードを、必ず文中に入れなさいといった指示もあります。

こうした問題の場合、自分の論点だけでまとめようとしたものや、決められた表現のない場合は、最低のランクに落とされると考えてください。

そんなことはあたりまえだという受験生がよくいます。

しかし実際の試験ではこうしたケースが実に多いのです。

緊張しているので、つい見落としてしまうのです。

問題提起と理由

小論文は論理性が命です。

美文を書く必要はありません。

最後まで同じ論理で進み、結論をまとめるというのが、正しい方向です。

よくいう、問題提起と理由のセットです。

①取り上げるべき問題は何か。
②それを解決するためにとるべき方法は何か。
③そのための方法として、何が考えられるのか。
④なぜそう思うのか。
⑤結論を明確にまとめる。

この5つの流れをきちんと書けば、必ず高い評価が得られます。

なるべく前進する態度をみせてください。

よくあるのが、いかにも評論家風の文章を書くケースです。

一般論を次々と展開していくのです。

こういう問題があって、それは大変に困るといったようなことがまとめて書いてあります。

そこからどうしたら抜け出られるのかという、解決に対する熱い方法論が見られません。

ただ問題が羅列してあるだけなのです。

受験生の立場に立ってみれば、無理のないところもあります。

突然、その場で解決策を考えろと言われても、頭に浮かばないということはよくあるでしょう。

しかし、これはダメです。

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どこまでもその場で考えてください。

あまりにも突飛な発言でない限り、評論家風の文よりも評価は高くなります。

なぜか。

自分の頭で考えたからです。

大学はそういうタイプの学生を待っているのです。

どんなことがあっても、とにかく自分の思考力を全開にして、与えられたテーマにぶつかってください。

評価の低い小論文

一番評価の低いのは主語と述語の関係が曖昧で、「て、に、を、は」が不明瞭な文です。

文章力がないというのは致命的です。

その次が課題文の内容を繰り返したタイプのものです。

読解力がなく独創力もありません。

自分でどの程度テーマを掘り下げられたのかという以前の問題です。

このレベルの受験生は、相当心して勉強しなければならないでしょうね。

最善の方法はとにかく文章を書くことです。

毎日200字程度の要約を続けることで、かなり進歩します。

題材は新聞のコラムが適当でしょう。

購読していない場合はネットのコラムでもかまいません。

ただし信用度の高いソースから引用したものに限ります。

内容は人文科学的なものがふさわしいです。

家庭、格差、教育、心理など内容はどれでもかまいません。

短い文章をさらに短くするというのは、相当な国語力を必要とします。

短時間で内容を読み取り、まとめる以外に力を養う方法はありません。

その次が課題文と同じ内容を繰り返す文章です。

これは読んでいてすぐにわかります。

なんの独創性もないのです。

同じことを別の言葉で言いかえただけのものです。

新しい視点がどこにもありません。

geralt / Pixabay

少しでも違った角度からものを見る目を養ってくれたのなら、少しは評価を高くすることもできます。

しかしそれができていない。

基本的に自信がないのでしょう。

ほとんど同じ内容で、テーマを繰り返しておけば、それらしい恰好の文にはなります。

しかし「独創性」のない文は評価が低いです。

そうでないものと比べたら、自分らしい内容を書いた文章の方を高く評価します。

なにが自分らしいと言えるのでしょうか。

人間の精神の問題を前面に出してください。

生き方の手本となる考え方を示すことを、採点者は好みます。

現代人はどうしても損得でものごとを考えるという傾向が強いようです。

それだけは避けてください。

地位とか名誉とか金銭などといったファクターを入れると、文章の質が下がります。

学校側は、あくまでも個人の資質が、教育の中で高いものになることを願っています。

それなのにどちらがどれだけ得だからというような発想では、悲しくなってしまいます。

対に経済の発想だけで、小論文を書かないこと。

やはり「生」の持つ意味をどう構造的に読み解いていくのかということが、大切でしょう。

もちろん、経済問題が重要なことは当然です。

しかしそれはあくまで、「生」を充実させるための手段だと考えるべきです。

現状の肯定はNO

小論文のテーマは様々です。

今日の複雑な社会を読み解き、そこからどうしたら少しでもいい社会を作れるのかということを考えさせる問題がよく出題されます。

2024年度入試の主な主題は何になるのでしょうか。

「AI」は確実ですね。

チャットGPTなどの登場がそれに拍車をかけました。

さらに「戦争」です。

ロシアのウクライナ侵攻によって、世界は先の見えない時代に入っています。

「少子高齢化」も喫緊のテーマです。

子供が少なくなり、国力が下がる懸念は日々増しています。

その他、SDGs、言葉、ジェンダー、多様性、教育。

テーマはいくらでもあります。

これらの課題に対して、あなたはどの立場で臨みますか。

日常的に自分の意思を確認しておく必要があります。

あなたの答案を採点する人は、どのスタンスにいるでしょうか。

今のままでよいとする人は少数です。

ここから抜け出すにはどうしたらよいのかという問題に、正対しているはずです。

それなのに、あなたの答案が現状肯定型だったら、最悪の評価になるのはあたりまえです。

この受験生には、現状を改革していこうとする意志がないと判断されてしまいます。

新しい思考は現状を追認するのではなく、そこから少しでも抜け出すための道のりを探ることです

批判力を蓄えて、テーマに向かうという姿勢を強く持ってください。

今回は少し長くなりました。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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