【地球温暖化】グラフや図表から情報を読み取り的確な論点を示す道のり

学び

地球温暖化

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はグラフや図表を使った小論文の問題を考えてみます。

近年の入試では課題文型の問題が圧倒的に多いのは、このサイトでも指摘している通りです。

しかしグラフ、図表、写真、イラストなどを使った問題もかなり出題されます。

特にグラフと図表は多いですね。

これらの情報を的確に読み取るには、方法論が絶対に必要です

複数の図表をまとめ、自分の意見を短時間できちんと論じるテクニックを学ばなければなりません。

グラフの形には、それぞれ役割があるのを御存知でしょうか。

棒グラフは「数量」、円グラフは「割合」、折れ線グラフは「変化」を示します。

1つの情報をどう処理するのかという時に、どのタイプのグラフを使っているかで、文章の方向性が決まるのです。

特に増減を主題にしたい時には、折れ線グラフで示すことが多いです。

グラフ問題の基本は「差」に着目することにあります。

どこに大きな差があるのかを、見破らなくてはいけません。

それが最も基本的な方法です。

読み取るポイントは以下の通りです。

➀その図は何を示すために作られたものなのか

②項目や要素と全体の内容との関係はどのようなものか。

この2つに着目して関連づけられるものを読み取っていけば、主題がみえてくるはずです。

今回はSDGsと深い関係にある地球温暖化の問題を例にしてみましょう。

毎年、必ずどこかの学校で出題されていますね。

それだけ喫緊のテーマであり、難問なのです。

解決への道のりは決して容易ではありません。

どんな情報が図示されるのか

具体的にどのようなグラフが登場するのでしょうか。

幾つかの過去問を見てみましょう。

グラフとしては「温室効果ガスの中で二酸化炭素の占める割合」がよく例示されます。

円グラフが基本ですね。

温室効果ガスには二酸化炭素の他に、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなども含まれます。

また、身近に存在する水も温室効果をもたらす気体の一種なのです。

これらの中で二酸化炭素の割合がどの程度であるのか。

それを図示するのがグラフの情報です。

ガスの排出量がそれぞれ明確になります。

少し前のデータでいうと、二酸化炭素が76%、メタンが16%、一酸化炭素が6%程度。

その他にフロンなども入ります。

この数字をみれば、圧倒的に二酸化炭素の排出量が多いことがわかりますね。

その次に、どの国がどの程度の二酸化炭素を排出しているか、という棒グラフが提示されるのです。

2012年のデータで中国、27.8%、アメリカ、15.8%、インド、6.0%、ロシア、5.4%、日本、3.7%となっています。

このグラフには同時に1人あたりの排出量も示されます。

圧倒的なのはアメリカです。

1年間に16.4トン、排出します。

基本はガソリンの消費がほとんどです。

それに続くのはロシアが12.4トン、韓国、11.5トン、日本が3.7トンです。

ここから何が見えてくるでしょうか。

基本はこの数字をどう捉えるのかということです。

ここでEV化への流れについて言及することも可能です。

今後の問題

現在の状況について把握したら、次は将来の展望を考えるのが常道です。

これもグラフで示されます。

このケースでは折れ線グラフが1番見やすいです。

問題は「地球の気温は今後どうなるのか」という予想です。

1950年から2100年までの予想数値をグラフで表示します。

これは実にインパクトのある図表です。

2つの折れ線図がよく出題されます。

1つは有効な気候変動対策が全く取られない場合の気温上昇予測です。

最大4.8度上昇という数字は驚異的というしかありません。

もう1つは非常に有効な対策がとられた場合です。

このケースでは現在より1度上昇するという予測が表示されています。

いずれにしても対策が喫緊だという現実に変わりはありません。

それではどの程度、二酸化炭素の排出量を減らしていけばいいのか。

これが4枚目のグラフです。

この数値は通常、RCPシナリオと呼ばれるもので表します。

RCPは一般に代表濃度経路シナリオと呼ばれ、最悪でRCP8.5、最善でRCP2.6と計算されます。

この数字の意味については、各自で調べてみてください。

大切な基礎知識です。

今後、二酸化炭素の排出量の問題とリンクして、必ず出る評価基準です。

覚えておいてください。

最悪の場合は2100年にRCP8.5にまで達します。

反対に最善の場合は、気温上昇の抑制の目標として、産業革命前の数字からの上昇を2度未満に抑制するシナリオに近づきます。

そのためには、現在取りうる最高度の努力が必要なのは言うまでもありません。

この内容が折れ線グラフによって示されるのです。

今、何をするべきなのか

グラフを読み取ったら、ここから何を最終的に論ずべきかを考えましょう。

あなたなら、何を結論として書きますか。

地球温暖化を確実に減らしていかないと、このままでは21世紀末には産業革命以前の2倍近い濃度の二酸化炭素を排出することになるのです。

怖い近未来予想です。

地球温暖化にはメリットが全くないわけではない、という意見もあることは事実です。

例えば北極の氷山が溶け、それによって船舶の貨物輸送が短距離化するという論点です。

もちろん、物資の輸送が今よりも早くなるということは望ましいです。

しかしそれ以上に生態系への悪影響の方がはるかに大きい点が問題です。

多くの種が絶滅の危機に直面すると言われています。

旱魃、森林火災、洪水、熱波などが増すことは間違いありません。

全ての地域での食糧生産量も確実に減ります。

グラフから読み取れることは、二酸化炭素の排出量が一部の国に偏っている現実です。

ここから何を論じたらいいのか。

1番大切なことはエネルギーの選択ということです。

安全性、経済性、安定的な供給、環境への影響。

この4つの項目に合致した方向へ、移行していかない限り、解決への糸口は見出せません。

再生可能エネルギーを考えることは誰でも可能です。

しかし同時に、コスト面からのアプローチも大切なのです。

最近、エネルギーミックスという表現をよく耳にしますね。

経済性を前面に出した時、二酸化炭素はどうなるのかということです。

どのエネルギー使えば、最もその数値が高くなり、その反対はどのような組み合わせなのか。

この論点には具体的な知識が必要です。

太陽光発電、地熱発電、風力発電などといった再生可能エネルギーに任せればいいと、簡単に言い切れないところにこの問題の難しさがあります。

新しいきれいなエネルギーに任せればいいといった方向に進むだけでは、不十分なのです。

現実的な方向を同時に視野に入れてください。

そうでなければ、小論文の解答としては、理想論だけのものになってしまいます。

持続可能な開発目標(SDGs)はいずれも難問ばかりです。

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一朝一夕には達成されません。

その現実をしっかりと捉えながら、文章をまとめてください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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