採点の方針
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は採点者の目について考えます。
毎年、小論文の問題を採点してきました。
実にくたびれます。
いい加減なことはできませんからね。
合否に関わる重要な仕事です。
採点の方法は加点型と減点型の2つにわかれています。
しかしいずれにしても内容を十分に吟味することについてはかわりません。
採点をする前に、話し合いをします。
どの程度の内容を期待するのかということです。
基本は字数、誤字脱字の許容範囲。
これは必ずやりますね。
その次が内容に関してです。
共通の採点基準を守るというのは非常に難しいです。
それぞれの先生方の考えというのがあります。
それを統一するのには無理があります。
内容が著しく難しい場合は、ある程度議論してから開始します。
ここまでは書いて欲しいというラインを決めておきます。
数人の先生で答案を読み、その点数の平均値を取るのです。
最低でも3人の先生で同じ答案を読みます。
それぞれが自分の持つ価値基準にのっとって読みます。
しかし不思議なもので、いい答案はやはり誰もが高い得点をつけるのです。
ここに文章の持つ不思議さがあるような気がしてなりません。
どこを見るのか
1番はその受験生が使っている言葉です。
小論文はあくまでもその人の持つ国語力を判断する試験です。
どの程度の語彙をもち、言葉を正確に紡ぎ出せるのかどうか。
その論理力をみます。
きちんと問題提起に始まって、結論にまで至っていれば、それほどひどい評価にはなりません。
何枚か読んでいると、ほぼ基準となる答案の質が見えてきます。
あとはそれよりも上か下かで判断していけばいいのです。
さきほど語彙の話をしました。
いたずらに難しい表現を使えばいいというものではありません。
覚えたばかりの言葉を使ってみても、それが自分の身についていなければ、なんにもならないのです。
翻訳語も同様です。
外国語をそのまま使おうとする生徒も時には見かけます。
しかしそれはやめた方がいいでしょう。
こなれた自分の言葉を使うことを第1に心がけてください。
ポイントは段落意識です。
3段落、4段落で構成するのが基本です。
なかには改行もなく、ひたすらマス目を埋めた真っ黒な答案もあります。
問題は文の長さですね。
一文一義主義という言葉をご存知ですか。
1つの文章には1つの内容をといううことです。
接続詞を使って、むやみと文章を長くするのは絶対にやめることです。
長文はダメ
長い文章を書いてはいけません。
特に受験生はそれほど、文章を書く練習をしていません。
あれも書きたい、これも書きたいという気持ちはわかります。
しかし一文は一義が鉄則です。
かざりの部分が長いと、文章は当然複雑な構文になります。
どれが主語でどれが述語なのか、見えなくなってくるのです。
このパターンは最悪です。
主語があって述語がある。
それもすぐ近くにある。
こういうパターンの文を続けて書いてください。
400字詰め原稿用紙でいえば、2行が限度です。
つまり40字を最高の字数と考えましょう。
3行、60字にしてしまうと、もう脈絡がみえなくなります。
あなたは新聞を読みますか。
1文の字数を数えてみればわかります。
実に短い。
その理由はなぜか。
読んだ瞬間に内容が頭に入るのです。
修飾語を重ねた文章をいくら連ねたところで、小論文では成功しません。
論理的な文章は厚着が苦手なのです。
そういう文は評論家にまかせておいてください。
あなたは絶対にやってはダメです。
最高40字の文を粛々と続けていく。
それだけを守ることです。
接続詞を正確に
採点者が見るのは論理です。
明確であれば、高い評価を与えます。
それを支えるものは何か。
ズバリ接続詞です。
順接か逆接か。
それを相手に知らせるものが繋げるための言葉なのです。
これが正確に使えないと、文章は上達しません。
入試国語でもここはガッチリ勉強しなくてはダメなのです。
「だから」「しかし」「つまり」「たとえば」「なぜなら」
これらの言葉をどういう時に使うのか。
それがきちんとわかっていれば大丈夫です。
具体的に示す部分、抽象的に一般化する部分。
指示内容をどこに示すのか。
文章の前半におくのか、後半に置くのか。
話題の転換にはどのような接続詞を使えばいいのか。
1つ1つ研究しながら、文章を書き続けるのです。
必ずうまくなります。
練習しなければ、ポイントを掴んだいい文章は書けません。
やれそうですか。
採点者はそこを見て、論理の整合性をチェックします。
ほぼそれだけで、採点が可能なのです。
文体や、漢字、誤字脱字などのミスは練習すれば消滅します。
とにかく始めてください。
その時になれば書けるというようなものではありません。
採点者の立場に自分が身をおけるくらいの余裕があれば、合格は可能です。
言葉のセンスを磨くことを日々、実践してしましょう。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。