Noの立場は強い
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。
今回はインパクトのある結論に向けて最後のツメをどうしたらいいのかについて考えてみましょう。
自分の意見を提示するチャンスをきちんとものにしましたか。
俗にいう起承結の「承」の部分です。
ここでYesNoをはっきりさせるのです。
この部分が弱いと、この受験生は何が言いたいのだろうということになります。
採点者を迷わせてはいけません。
どんなテーマでも同じです。
CO2の削減目標に対して、実効性のある方法論がいくつも述べてあったとしましょう。
その中の1つに風力、太陽熱、地熱などのクリーンエネルギーがあります。
その将来性について論じた文を読み、あなたの意見を書きなさいというのが設問です。
石油、石炭などの化石燃料と原子力に比べて、これほどに安全なエネルギー供給源はないとする視点です。
これに対してどのような考えを述べればいいのでしょうか。
基本的には反対の立場からの文章の方が、訴求力が強いです。
筆者の考えの通りですとただ言ってしまったのでは、後ろからついてきただけという印象が残ります。
そうではなくて、確かに筆者の論点も理解できるが、しかし自分はこう考えると新たな視点から切り返した方が新鮮です。
自分の頭脳で考えようとしたというパワーを感じます。
具体的にこういうケースが考えられるからだと理由を述べるのです。
その時に具体的な話題を入れながら文をまとめれば、社会に対する広い知見を持っていることを示せます。
絶好のチャンスになりうるワケです。
これが次の展開に大きな効果をあげます。
理由を可能な限り1つに絞る
字数には自ずから制限からあります。
いくらでも長く書いていいというのではありません。
とするなら、ここは反対の理由を幾つも書くべきではありません。
採点者はメインの理由の筋が通っていればそれでいいのです。
ここで持論を述べてもらおうなどとは思っていません。
ただ論理的に展開することのできる能力をみているのです。
つまり、クリーンエネルギーの拡充は十分に意味があるとまず課題文に対する敬意を示します。
頭から否定するのはよくありません。
むしろ感情的な文章になってしまいがちです。
これは絶対に避けましょう。
①確かにクリーンエネルギーが二酸化炭素の排出量を減らすことは事実である。
②しかしそれらのエネルギーで、現在の需要をまかなうことが可能だろうか。
ここが1番大きな問題点です。
そのための前提をつけましょう。
経済中心のままで世界は今後もいいのであろうかと疑問を投げつけるのです。
いいわけがありませんね。
必ずいつかは破綻してしまうに違いないと書いてから、それならば物質の豊かさだけにとらわれない生活をするべきだとします。
③しかしそれが本当に可能になるのであろうか。
④現実はそれほどに単純には進まないのである。
現実と理想のギャップを書き、ここからクリーンエネルギーにテーマを運びます。
⑤課題文にある通り、二酸化炭素の排出量を減らすことは地球温暖化を防ぐための大きなテーマである。
⑥確かにエネルギーをより自然からのものに転換することにも意義がある。
しかしと文章を続けます。
新しい論点を見出す
⑦現実に太陽光のエネルギーなどによって、十分な電力をまかなうことはできるだろうか。
⑧電気を使えないということの不便さを私たちは知らないに等しいのである。
⑨スイッチをつければ、すぐに部屋が明るくなり、テレビもエアコンも使える快適な空間を生み出せる。
⑩そうした生活を犠牲にしてまで、クリーンエネルギーに転換することが可能なのだろうか。
⑪モノをたくさん持たずに心の豊かな生活をしようという考え方があるのはよく知っている。
⑫しかしそれをクリーンエネルギーにばかり求めるのではなく、むしろ資源を無駄に使わないという省エネルギー型の社会へ転換していかなくてはならない。
どうでしょうか、この論点は。
ただ問題文にNoをいうだけでなく、新たな方向がここにあるということを示すのです。
そこでリサイクルなどの具体的な例を挙げるということもできるでしょう。
腐らないプラスチックからオーガニックな資材を利用した新しい社会のありようを考えてはどうかという視点もあります。
ここで現在話題になっているプラスチックフリーの生活へテーマを導くことも可能です。
あるいはユニクロなどに代表される資源再利用のあり方を問うこともできます。
つまりここでは反対の理由を多く書かないのです。
それをやると、1つ目の理由は~で、2つ目の理由は~だというような羅列化が目立ちます。
その分だけ、文章の力が弱くなるのは明らかです。
これは絶対に避けなくてはいけません。
それならばむしろ、別のかたちで自分の知識を紹介していくことの方がいいでしょう。
先ほどの論理も、先進国ならば可能だが、開発途上国にはそれほどのゆとりはないという指摘もでてくる可能性があります。
その時は援助の姿勢をみせていくということになります。
持続可能な社会の構築
コロナ禍の後は地球を一体として考えなければいけないところへきています。
国家単位で問題に臨んでいると解決がつかなく怖れもあります。
事実、プラスチックに対する需要は、コロナ後に増加することが予想されています。
食品の包装などについても、再びプラスチックに依存するようになりつつあるのです。
少し前まではコーヒーなどをマイボトル単位で売るという新しい販売方法もありました。
しかしコロナウィルス蔓延を避けるために、スタバなどでは現在は取りやめています。
あるいは小中学校の給食などについても、生徒に配膳をさせるという行為を禁じています。
児童たちはあらかじめ、パックに入った食品をそのまま手にとり、自席に戻るという食事のとり方です。
せっかく社会に定着しつつあったプラスチックフリーの流れが、たった1つのことから、また元に戻るというのが社会の現実なのです。
これらのことを先進国が自分たちの都合だけでやっているとはいえません。
全てが地球全体のテーマになりつつあります。
環境問題はどのような形でも出題することが可能です。
広がりと深さをもった喫緊の話題なのです。
小論文は自分がどのような関心を持っているのかを披歴できる場です。
関連があれば、話題をどこまでも自分の土俵へ持ち込めるのです。
それだけにある程度きちんとした型を持っていると強いです。
最後にもう1度確認しましょう。
課題文に対して反論する時は、できるだけ理由を1つに絞ること。
どうしてもⅠつでは無理だという時には、2つまでが許容限度です。
制限字数が短ければ短いほど、理由は絞ってください。
そうしないと、文書のパワーが落ちます。
理由を書いたら、残りは具体例などでよりわかりやすい文章に色付けしていくこと。
これさえ守れば、とんでもなくメチャクチャな文にはなりません。
何度も練習して、自分のスタイルをつくり上げて下さいね。
最後までお読みくださりありがとうございました。