大学はどこを見ているか
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。
試験は設問があって答えがあるというのが原則です。
どんなにすぐれた文章であっても、トンチンカンな答えをしたのでは評価がガクンと下がります。
当たり前ですね。
しかし現場で添削をしていると、この当たり前のことが守られていないと感じることが多いのです。
そんなことはないでしょうと普通思いますよね。
ところがさにあらず。
自分の意見を勝手に書いて字数を稼ごうとする答案が大変に多いのです。
受験生本人は自分の意見のつもりで書いているのかもしれません。
しかしたいていの場合、感情の方が先行しています。
イヤだとか好きだとか面白くないとか。
つまりそういうことです。
そのことを必死に訴えてきます。
少しも論理的ではありません。
小論文の基本は合理性です。
途中まではすごくいいなと思って読んでいると、突然心棒が揺らぎます。
そしてありきたりの結論になってしまうのです。
それだけなのかとつい聞いてしまいたくもなります。
あるいは全く関係のない結論になってしまうものも多いです。
首尾一貫した文章がいかに少ないか。
採点していて呆れることの1つです。
なぜそうなるのか
答えは1つ。
与えられた課題を読み取る力が弱いのです。
きちんと内容を把握できない。
あるいは自分の意見と対立する意見のいいところを捕まえるだけの力をもっていない。
だからすぐに拒否します。
頭脳の柔らかさがないのです。
自分の意見を理由とともにきちんと述べられる人というのは、相手の論理も正確に把握できる人です。
それができない受験生は、もうまっしぐらに自分の論理だけで全体を貫き通してしまおうとするのです。
こうした態度からはなんの収穫もありません。
つまり自分の意見を客観的に捉える力がないのです。
だから論理的に書くなどということができるワケもありません。
悲しいことですが、これが現実です。
不合格答案の大部分はこのバターンなのです。
採点者は相手の立場にたって、なんとかその論理を理解してあげようと必死になります。
しかし途中で裏切られ、断念せざるを得ません。
もしこの論理でまっすぐ走っていったら、この結論には絶対にならないのにというパターンが多いのです。
受験生は前しかみていませんから、もうそれ以外の世界は見えません。
ひたすら猪突猛進するばかり。
文章をわかりやすく構成するなどということは二の次です。
ここまでで結論がわかりましたか。
小論文では分析力、論理力、表現力などをいかにその設問に対応したものとして扱ったのかということが大切なのです。
設問にきちんと適応していない文章は、どんな名文でも不合格としなければなりません。
何の力が必要か
設問の中によくあるのが、「あなたの見聞」「あなたの経験」という言葉です。
必ずこれを制限字数の中に入れて書けという問題があります。
というより、きわめてこのタイプのものが多いのです。
設問の中に「見聞」「経験」という表現があったら、それを文章の中に必ず入れなければ、評価は格段に下がります。
設問の条件をフルに満たしたところから採点は出発するのです。
それ以前のものはフルイにかけられてしまいます。
簡潔で統一感のあるいい文章であっても、何の見聞や経験が入っていないと判断された途端、評価は一気に落ちます。
これが入学試験の現実なのです。
求められていないことをいくら丁寧に書いても、それは何もないのと同じです。
試験というのは厳しいものです。
相手が求めている形に添うという基本事項をきちん把握してください。
そのためには何が必要なのか。
一言でいいましょう。
瞬時の現場対応力です。
問題の主旨を正確に読み取り、設問にふさわしい解答の仕方を工夫するということです。
この3つのキーワードを必ず入れなさいとあるのに2つしかいれなかったとか、1つも入れていないなどというのは言語道断です。
試験を受ける資格もありません。
設問の意図を徹底的に把握すること。
これが瞬間的に求められます。
とはいえ、入試というのは非常に特殊な環境で行われます。
どんな人でも舞い上がってしまうものです。
設問に線を引きながら、必ず必要なアクションをまとめてください。
文字数を間違えずに
当たり前のことですが、制限字数を間違えてはいけません。
そんなことはわかってるという人もいるでしょう。
ところがそうでもないのです。
字数をオーバーした答案は採点しません。
少ないものも採点はしますが、非常に点数が低いです。
450字~600字以内などという書き方をされるととても悩みますね。
多い方がいいのか、少ない方がいいのか。
書けるのならギリギリまで書き込んでください。
その方が内容が濃くなります。
多くの情報をもりこめるのです。
9割を確保しましょう。
450~600字なら540字以上を目指してください。
その方が採点者の心証もいいものになります。
小論文は出力の連続です。
つまり書き続けるのです。
この練習には終わりがありません。
しかし出力だけをしていると、必ず燃料切れを経験します。
言葉が出てこなくなる瞬間があるのです。
時には入力をしてください。
あらゆる媒体に目を通して、現在という時間が何を最も必要としているかをチェックしましょう。
新聞のコラムでも投書欄でもかまいません。
短い時間でいいです。
入力をし続けた後に、ふっと読むと、非常に新鮮な力をもって身体の中に入ってきます。
それが今自分にとって必要な情報なのです。
時代のキーワードをつねに探りましょう。
小論文は知識を多く持っている人にとって有利な試験です。
つねに社会を展望し、これから先に何が起こりうるのかを想像してください。
友人と語り合うことにも意味があります。
設問の内容に肉迫すること。
設問の指示をはずさないこと。
これが現場対応力そのものです。
課題文を読んだ瞬間、この前に読んだあのネタは使えないか。
あの経験はここにあてはまらないか。
どんなことでもかまいません。
脳をフル稼働して動かしてください。
それが現場での瞬発力に結びつくのです。
最後までお読みいただきありがとうございました。