小論文を課す大学
みなさん、こんにちは。
小論文指導歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。
いつも小論文の書き方を解説させていただいてます。
なんといっても難しいですからね。
これといった定番の解法がないのです。
問題によって書き方も違います。
正解と不正解というのもありません。
採点者にとっては一番くたびれる試験です。
ぼくも採点途中でイヤになったことが何度もありました。
しかし時々、目を見張るような文章に出っくわすこともあるのです。
そういう時は疲れが吹き飛びます。
やはり文章は生きているんです。
良い文を読むと、一気に元気になります。
そしてうれしくなる。
これが小論文の醍醐味でしょうか。
現在の入試で小論文が占めている場所はどこでしょう。
基本的に国公立大学の入学試験です。
これはほぼ全国の大学にまたがります。
国公立を受験する人は前期、後期の別を含めて、きちんと把握してください。
どの大学の入試にも全てあるというわけではありません。
志望校が明確になった時点で、確認する必要があります。
私立大学で一般入試に小論文を採用しているところは理系、特に医療関係に集中しています。

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それ以外の学部では、それほどに多くはありません。
しかし医学関係を目指す人にとって、避けては通ることができません。
その他の大学、学部でいえば、代表はなんといっても慶応義塾大学でしょう。
国語の入試のかわりに、小論文を課しています。
この大学の小論文の問題は実に難しいです。
受験するには相当な学力が必要です。
小論文だからなんとかなるだろうなんて、気楽な調子では受けられません。
課題文も高度で、内容を読み解くのも大変です。
パターンの特性
小論文にはどんな型があるのか、簡単に区分けしてみましょう。
2 課題文によるもの。評論文などの一部を読ませ、その内容について考えたことを書く。
3 資料によるもの。グラフや表などを読み取り、考えたことを書く。
バランスからいうと、文系では1の型が20%、2の型が60%、3の型が10%、その他、英文によるものなどがあります。
理系ではこの3種類の型の他に数学の計算問題や自然科学系の知識を問う問題などもあります。

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これは小論文というより、むしろ理科と数学の問題と考えた方がいいでしょう。
私立の一般入試については医療系以外はほとんど小論文がないということはわかったと思います。
では私立大学の小論文ははどこに出るのか。
それは推薦入学試験です。
もちろん、国公立の推薦入試にも小論文は出ます。
だいたい面接とセットになっているのが普通です。
国公立の場合は120分、1600字などというのもあります。
90分、1200字というのもよく見ます。
どの型が難しいのか
結論から言いましょう。
どれも難しいです。
その中でも特に1の型は問題が漠然としています。
どう答えていいかわかりません。
例にあげた「理想と現実」などというのは、どのようにも書けるテーマです。
ぼくの知っているところで書きにくかったのに「表と裏」というのがありました。
こういうテーマ型の問題はその人の持っている知識や経験の質と量が全て表面に出てしまいます。
実に怖ろしい問題です。
どこから書いてもいいということは、それだけ実力が丸見えになるということです。
大変に難しいと考えてください。
では2の型はどうか。
課題文があるだけ、ヒントがたくさんあります。しかしどの内容を使ってもいいというわけではありません。
筆者が一番力をこめたこと。
すなわちキーワードを読み取る能力が必要です。

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これは現代文の読みと同じ力を要求されます。
慶応義塾大学が小論文だけにシフトしている理由はまさにここにあります。
難解な課題文をきちんと理解し、テーマに肉薄する力を持っているということは、即国語力がある
と判断できるからなのです。
つまりそれだけ骨のあるしっかりした文章が出題されるということです。
小論文だから、適当に書けばなんとかなると思っていたら大間違いです。
3の型は資料問題なので、グラフや表の中から突出した部分を取り上げるというのが基本です。
極端に数字に変化がみられるのはなぜか。
その理由を徹底的に追いかけるのです。
そうすることによって、内容を深掘りできます。
出題の傾向
問題の型については見てきたので、内容についても少し考えてみましょう。
自分がどの学部を受験するかによっても、問題の内容は当然違います。
一口に文系といっても人文科学と社会科学では出題の傾向も違うのです。
自分がどの系統の学部を受験するのかが決まったら、とにかく調べてください。
人文系 日本人論、言葉について、国際化、いじめ、芸術が社会に与える影響、少子高齢化問題、豊かさとは何か、学問の意義。
社会科学系 男女共同参画社会の展望、食品の安全、中国の経済進出と世界の関係、インターネット社会の未来、格差社会。
理工系 地球温暖化と異常気象、遺伝子組み換え技術の未来、人口増加と食料危機、地震予知、人工知能の可能性。
医学、看護系 生活習慣病と予防医学、患者と医療の関係、不妊治療、脳死と臓器移植、出生前診断。
その他、全てに共通のテーマとして、消費型社会の限界、社会保障の未来像、政治とメディアの関係など。
さまざまな問題が出題される可能性を持っています。
どれ1つをとってみても、簡単に書けそうな内容のものはありません。
いずれも一筋縄ではいかない、現代の難問ばかりです。

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あなたはここにあげられたテーマに対して、自分の意見を持っていますか。
最低でも800字書けますか。
とにかく書いてみてください。
最初はどうにもならないかもしれません。
しかし書いてみないことには始まりません。
書いているうちに、自分の中から不思議な力が出てくる時がきっときます。
それを信じて歯を食いしばって書いてください。
これだけはここで約束してくれませんか。
採点者の目
採点者は形からみます。
内容はその次です。
問題の条件を全て満たしていなければ評価は下がります。
文字数の制限、原稿用紙の基本的な使い方、文体の統一、「てにをは」の用法。
全てについてOKが出てから読み始めるのです。
9割は必ず書いてください。
どうしても書くことがみつからない時は「類推」です。
それと似たようなことで、自分が体験したこと、聞いたことを頭の中に思い浮かべてください。
それができれば、かなり言葉が出てくるはずです。
受験する大学の過去問を最低5年分はやること。
問題をバラバラにして中身を丸裸にしてください。
そして何度も使われているテーマがあったら、そこに特化して勉強すること。
キーワードを全て並べだして、それで文章を書いてみることをオススメします。
原稿用紙の書き方の規則をもう一度思い出してくださいね。
文末の禁則処理を知っていますか。
まだの人はもう一度確認しましょう。

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過去問は宝箱みたいなもんです。
推薦入試を受験する人は、大学が過去問をくれます。
なければ、進路の先生に聞いてください。
必ずあります。
それを絶対にやること。
みなさんの合格の吉報をお待ちしています。
最後までお読みいただきありがとうございました。