「源氏物語・心づくしの秋風・須磨」新たな出逢いの予感と海辺の寂しい日々

源氏の須磨がえりという有名な言葉があります。桐壺から読み始めた人も、須磨の段あたりまでくると、くたびれてしまうのです。実はこのあたりからが本当に面白くなるんですけどね。ぜひ、この本を覗いてみてください。

『源氏物語』は一条天皇の中宮・定子に捧げた鎮魂のための創作だったという説

源氏物語は平安時代を代表する文学作品です。紫式部はこの物語をどのような構成のもとに書き始めたのでしょうか。具体的には誰をイメージしてまとめたのか。それを考えていくと、彼女の周囲にいた人間模様がはっきりと見えてきます。

「別れを告げない」済州島4.3事件を題材にした静かなノーベル文学賞受賞作品

2024年度ノーベル文学賞に輝いたハンガンの小説を紹介します。タイトルは『別れを告げない』です。済州島4.3事件を題材にした静かな小説です。虐殺の話ですが、凄惨な場面は少なく、むしろ散文詩を読んでいる気すらしました。

『紫式部日記』関白藤原道長と紫式部の仲についてヒントになるのはこの2話だけ

紫式部日記は実に興味深い日記です。誰にもみせる予定はなかったはずです。しかし中宮彰子のためにどのような動きをしていたのかということもよくわかります。清少納言に対するライバル心もここにはみてとれます。道長との関係はどうだったのか。

「中島敦・山月記」主人公・李徴は完璧主義と自己実現の狭間で揺れた

中島敦の名作『山月記』は高校で必ず習います。人間の本性を正面から捉えた小説だからです。自尊心と羞恥心の間でもがき苦しむ主人公の姿は、今日の我々に通じるものがあります。その内実を読み取ってください。

「枕草子28段・にくきもの」観察力の鋭さと独自の感受性が反映された段

枕草子28段には清少納言が嫌いだったものが、取り上げられています。彼女の鋭い視線は、人間の持ついやらしさを見事に掬い上げています。特に複雑な宮中の中で生きていくことり難しさを感じさせるものが多いのです。

「本居宣長・同じ人の説」真面目に学問に取り組めば学説も変化するのは当然

学問の研究というものは真面目にやればやるほど、自分の考えが次々と変化していく事実につきあたるものです。それを正しくないということはできません。自分に正直になればなるほど、学説の変化を知ることになるのです。

「枕草子・大納言殿参り給ひて」定子サロンの雰囲気が色濃くにじむ章段

枕草子にはさまざまな章段があります。今回とりあげるら日記的な段落には、当時の定子サロンの様子が実によくわかります。衰亡していく一族の悲しみがみてとれます。清少納言の観察力の鋭さには舌を巻きますね。

「無名抄・腰の句の末の手文字」名声に甘んじていい気になっていると

鴨長明の歌論書『無名抄』のなかにある面白い話です。和歌の腰の句に「て」の文字を入れると、それだけで歌が台無しになるという話を土台にして、当時の歌人がやり取りをするというストーリーです。ご一読ください。

「5分後に意外な結末」日常の中で起こったドラマがちょっと快感になる日

短い小説というのはよくありますが、すべての話が5分で読める本というのはユニークだと思いました。生徒が好んで借りていくのだと図書の先生が教えてくれたのです。こわごわと中を覗いてみました。

【国語力低迷の危機】読書はタイパが悪すぎる「本なんか読まなくたって」

本を一月に一冊も読まない人の数が60%を超えました。はじめてです。その背景にはネットの普及があります。スマホでゲームをする時間はあっても、本は読まないという現実は何を意味しているのでしょうか。

【をかしげなる猫・更級日記】古典文学に描かれた猫の生きざまはしたたか

『更級日記』は平安時代を代表する日記文学です。その中に出てくる猫の話をここでは紹介しましょう。夢に出てくる話の中に猫が登場します。その面影をしのぶたびに、猫がよりかわいらしくなっていったのです。

【安元の大火・方丈記】都の大半が燃え焼死者数千人を数えた未曽有の災害

都の大半が燃え、焼死者数千人を出した火事が、安元の大火です。鴨長明はその様子を子細に書き留めています。平家が滅亡していく時代の様子を無常観とともに描いています。

【水魚の交わり】劉備玄徳は漢室再興の志を参謀である諸葛孔明に委ねた

水魚の交わりという言葉をご存知でしょうか。本当に親密な仲のことをいいます。劉備玄徳は 漢室再興の 志を参謀である諸葛孔明を得たことで大きく前進させました。三国志は実に楽しい本です。

【唐土の后の兄・閑居友】放浪をやめなかった兄が目指した救済の形とは

中国で聞いた話だそうです。王の后の兄が、みすぼらしい恰好をして、諸国を遍歴しました。何をいっても帰ってきません。そこで后は貧しい恰好をしている人に対して、やさしくしてあげるようにという宣旨を出します。その結果、生活困窮者が助かったというのです。

【宮内卿の君・増鏡】千五百番歌合に呼ばれて名を連ねた栄誉は夢の続きか

歌合というのをご存知ですか。左右に分かれて和歌を詠みあい、優劣を判定する遊戯です。かつて1500首の歌を判定した歌合が後鳥羽院によって開かれたことがありました。それに呼ばれて若手歌人の緊張はいかばかりだったでしょうか。