「細雪・谷崎潤一郎」桜の放つ悠久への夢を非情の時が消し去ってゆく

谷崎潤一郎の『細雪』はよく源氏物語との類似性が指摘されます。長い小説の中に、人の持つ無常の悲しみが色濃くにじんでいるからです。大人のための小説といっていいのではないでしょうか。ぜひ四姉妹の生きざまを追いかけてみてください。

「浮舟と薫の再開・山路の露」宇治十帖の主人公・薫の後日談が気になる

浮舟と薫の再開は宇治十帖を読んだ人にとっては気になりますね。その後二人はどうしたのか。そのまま別れてしまうか。あるいはどこかで出会うのか。それを解決しようとしたのが『山路の露』という本です。薫の後日談なのです。

「紫の上の死・御法」光源氏最愛の人は養女・明石中宮に看取られて旅立った

紫の上と源氏はどのようにして出会ったのか。その後二人の関係はどうなったのか。大変気になりますね。たくさんの女性に懸想した源氏が最後に戻ったのは、やはり紫の上のところだったのです。何が二人を繋げあったのか。考えてみましょう。

「雨の夜の訪問・いみじう降るをりに・枕草子」男の本心を推しはかるには

雨の夜にやってくる男の本心はどこにあるのか。そこに本当の愛情があるのかどうか。それを見極めることがいかに難しいのか。清少納言は枕草子の中で、そのことを丁寧に解説しています。待つ身のつらさをあらわす女性の立場を考えてみます。

「愛嬌こぼるる女御・建春門院中納言日記」平安の時代のきらびやかな回想録

建春門院中納言日記という懐古記録があります。藤原俊成の娘が書いた本です。対象は彼女が仕えた後白河院の女御、建春門院その人です。平安貴族の時代が去り、当時のことを知っている人も次第に減っていきつつあったのです。

「趣きのある情景とは何か」兼好法師の説を批判した本居宣長の考え方は

徒然草を書いた兼好法師の立場を批判した本居宣長の文章です。どちらの立場を貫くのかによって、見えてくる風景が微妙に違います。しかしよくよく考えてみると、どちらもそれほどに違う立場に立っているようにも見えません。ぜひ、考察してみてください。

「岩橋の契り・俊頼髄脳」修験者の途方もない願い「葛城から金峰山へ橋を」

岩橋の夜の契りという題で有名な葛城山の話です。一言主という葛城山に住む神に役行者が橋を架けてくれと頼みます。金峯山までの石の橋です。ところが一言主は夜の間だけしかやろうとしません。その理由が非常にユニークなのです。

「茶番に寄せて・坂口安吾」日本の文化に道化の観念が希薄なのはなぜか

日本の文化には道化の観念が薄いといわれています。日本人は真面目な民族なのかもしれません。笑いはどのようなシステムの上に成り立っているのか。それを坂口安吾は解析しています。理由をたずねながら、読んでみましょう。

「義家、兵法を学ぶ・古今著聞集」匡房卿の教えを守り伏兵を見破って勝利した

大江匡房に師事した八幡太郎義家は戦いの場で、その教えを守り、伏兵の存在を察知しました。そのおかげで、無事に勝利を収めたという話です。孫子の兵法がどれほどの意味を持っていたのかを、実感する話です。

「発心集・西行法師と娘」出家して数年後粗末な着物姿で遊んでいる娘を見て

西行法師と娘みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回は歌人、西行(1118~1190)を取り上げます。平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての人です。俗名は佐藤義清(のりきよ)。鳥羽院に仕える北面の武士でした。西行は歌人として有名で...

「源家長日記・良経の急死」暗殺説もあるという新古今集を代表する歌人の謎

新古今和歌集にたくさん収められている藤原良経の話です。彼は仮名序まで書きました。しかし若くして突然亡くなってしまいます。その原因もはっきりとはわかっていません。どのようなひとであっのかを少し深堀してみましょう。

「源氏物語・心づくしの秋風・須磨」新たな出逢いの予感と海辺の寂しい日々

源氏の須磨がえりという有名な言葉があります。桐壺から読み始めた人も、須磨の段あたりまでくると、くたびれてしまうのです。実はこのあたりからが本当に面白くなるんですけどね。ぜひ、この本を覗いてみてください。

『源氏物語』は一条天皇の中宮・定子に捧げた鎮魂のための創作だったという説

源氏物語は平安時代を代表する文学作品です。紫式部はこの物語をどのような構成のもとに書き始めたのでしょうか。具体的には誰をイメージしてまとめたのか。それを考えていくと、彼女の周囲にいた人間模様がはっきりと見えてきます。

「別れを告げない」済州島4.3事件を題材にした静かなノーベル文学賞受賞作品

2024年度ノーベル文学賞に輝いたハンガンの小説を紹介します。タイトルは『別れを告げない』です。済州島4.3事件を題材にした静かな小説です。虐殺の話ですが、凄惨な場面は少なく、むしろ散文詩を読んでいる気すらしました。

『紫式部日記』関白藤原道長と紫式部の仲についてヒントになるのはこの2話だけ

紫式部日記は実に興味深い日記です。誰にもみせる予定はなかったはずです。しかし中宮彰子のためにどのような動きをしていたのかということもよくわかります。清少納言に対するライバル心もここにはみてとれます。道長との関係はどうだったのか。

「中島敦・山月記」主人公・李徴は完璧主義と自己実現の狭間で揺れた

中島敦の名作『山月記』は高校で必ず習います。人間の本性を正面から捉えた小説だからです。自尊心と羞恥心の間でもがき苦しむ主人公の姿は、今日の我々に通じるものがあります。その内実を読み取ってください。