採点は大仕事
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は試験の採点方法について書きます。
約30年以上、毎年小論文の採点をしてきました。
推薦入試のシーズンになると、必ず小論文の採点と面接官がセットになってやってきます。
年中行事でしたね。
面接もくたびれます。
とにかく正確にその生徒の資質を見抜かなければなりません。
わずか15分足らずの時間内にです。
聞いてはいけない質問もたくさんあります。
特に思想、信条にからむ内容のものは一切禁止です。
となると、聞ける内容は自ずから決まってきます。
それでもなんとかやらなくてはいけません。
と同時に小論文も難問です。
毎年、問題をつくるのも教師の役割です。
何度も会議を開いて、過去の問題とあまり差のない、それでいて独創性に富んだテーマを考えなくてはなりません。
これも気骨の折れる仕事です。
試験が終われば小論文の採点です。
数人が同じ部屋に集まり、採点基準を話し合うところから始まります。
答案を何枚か読んでみて、どのような解答が多いのか傾向を探ります。
問題の指示にきちんとあっているか。
具体性が明確にあるか。
表現力はあるか。
字数が足りているか。
誤字脱字は幾つまで許容するか。
それをオーバーしたものはどのように採点するのか。
ありとあらゆることを論じあうのです。
全ての答案に目を通す
採点に偏りがあってはいけません。
特に小論文はどこまで採点基準を細かく決めたとしても、最後はその採点者の主観が混じります。
ここが1番悩ましいところです。
点数のばらつきをなくすための方法はいくつもありません。
まさかAIを使うなどということはできない相談です。
そこで1枚の答案を複数の人間の目で採点するという方法をとらざるを得ないのです。
幸い、推薦入学の場合は合格者数をしぼってあるため、4~5倍という倍率であっても、なんとか全ての答案を読むことができます。
採点者数人で最終的には全部の答案を読み、その合計点で競うことになります。
これがある意味、1番公平な方法といえるでしょう。
もちろん、答案を読む時の体調なども少しずつは違います。
しかしそれを言っていると永遠に採点は終わりません。
字数、誤字脱字、マス目の使い方などに関しては同じ基準を設けます。
これが最もわかりやすいです。
持ち点から減点していくという方式が一般的です。
今までに加算方式の学校に勤務したことはありません。
大きな4つのポイントがあれば、それぞれ持ち点を決めます。
さらに字数、誤字脱字、表記法などで差をつけていくのです。
最初に見るのはなんといっても字数です。
学校ごとに何字までなら何点と決めているところも多いようです。
制限字数の半分以下なら全体の30~50%を最初に引くなどいうケースです。
その反対にオーバーしていたら採点はしません。
白紙と同じ扱いになります。
漢字も要注意
漢字を幾つ間違えたから、その数に応じて次々と引いていくということは普通しないです。
何字までなら何点という決め方をします。
そうでないと、減点が増えすぎてしまうからです。
誤字脱字も同様です。
カギカッコの使い方なども同じ扱いになります。
こうした基本のところで点数を引かれないようにしてください。
ポイントはもっと先です。
このようなとば口で点数を引かれるのは、誠に残念です。
内容を豊かにして、とにかく減点されない努力をしてください。
最初に文章を読んでどこを見るかと言われると、論理性です。
きちんと筋道が通っているかということです。
序論から始まって結論にまできちんと1本の道が通っていればほぼ満点にします。
しかし何のメモもとらずに書き出したような文章は、だいたい途中のところからフラフラしてきます。
この書き出しで、どうしてもこの結論にはならないだろうというのが多いのです。
なんといっても小論文は論理です。
もちろん、独創性も大切です。
その人らしさということでしょうか。
他の人には書けない独自の経験や視点が入っていればいうことはありません。
理由を聞いているのに
なかには理由を書きなさいという設問があるのに、それを飛ばしてしまう受験生もいます。
こういうケースは内容、論理性で減点です。
もちろん表現力も大切です。
言葉の使い方がルーズな答案はここでどんどん点数を引かれます。
「ら抜き言葉」はご存知ですね。
可能の助動詞「られる」の「ら」を抜くパターンです。
食べれる、着れるなどという表現を小論文で使ってはいけません。
「い抜き言葉」というのもあります。
話してる、見てるはダメです。
話している、見ているが正解です。
話しことばでは許されても書き言葉ではNGです。
そうじゃないなどというのもその1つですね。
そうではないが正解です。
本とか読むもダメ。
本などを読むが正しいのです。
日ごろから書きなれていると、こうしたミスがどんどん減っていきます。
もう1つ大切なのは、つねに自分の経験を書き込むことです。
ただしダラダラはダメ。
ポイントになるところをほんのちょっぴり。
これがスパイスになります。
いい味が出るのです。
まさに内容を豊かにします。
文章力では最大の眼目が文章の短さです。
重文、複文はなるべく避けること。
文章の上手な人は少しぐらい長くなってもかまいません。
しかし初心者はとにかく短文を積み重ねて接続詞で繋ぐ。
これが最も望ましい書き方です。
自分のスタイルを身につけてください。
採点者はなるべくいい点数をつけてあげようとしています。
それなのに自分から滑り落ちていってしまうのです。
もったいないではありませんか。
しっかりと頑張りましょう。
今回は採点をどうやって行うのかについて書きました。
最後までおつきあいいただきありがとうございました。