「PRのキモ」数字を上げるにはマスメディアの裏側を知り尽くすのが近道

ノート

PRマン・下谷一良

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はマスメディアの最前線にいるPRマン、下谷一良さんの著書『ずるいPR術』の話を書かせてもらいます。

ぼく自身、若い頃は雑誌の編集部や広告代理店の現場で働いていました。

今でもマスメディアには大変興味があります。

ここ数か月、ジャングリア沖縄やSNS関連の記事や動画をチェックしているうち、ユニークなYoutubeを発信し続けている彼のことを知るようになったのです。

一言でいえば、マスメディアの裏側から今日の状況を分析した動画といっていいと思います。

テリトリーが広いので、テレビの裏事情とか、雑誌その他のメディアについてもかなり詳しく知ることができます。

下谷さんはテレビ東京という他社とは一線を画す会社のディレクターから出発しています。
それだけに、ものの見方が実にユニークなのです。

詳しいことは彼の名前で検索すれば、いくらでも記事が出てきます。

かつてあった有名な番組が次々と消えていく理由や、その背景を人、モノ、金の視点から見事に切り取っています。

現在はPRの仕事をメインにしている会社を立ち上げているとか。

さて本の主題です。

ニュースリリースについての記述は、ぼくも仕事として扱っていたので、非常に興味深く読みました。

タイトルの『ずるいPR術』というのはやや斜めからつけたものです。

誰もがあまり費用をかけずに、効果的な宣伝をうちたいと考えますね。

しかしその時に名前を連呼したり、成果をこれ見よがしに述べ立てても、誰も見向きもしてくれません。

もちろん、テレビ局も取材にはきてくれないのです。

食いついてはこないネタです。

そういうときに、この手を使えば、お金をかけずに宣伝ができますという例をいくつも書き込んでくれています。

実績ゼロ

まったく実績がなくても、すごい会社だと思わせる手法がこれだなどといわれると、素人は眉唾ものだと感じます。

それでもやってみる価値があるPRとはなにか。

どうしようもない時は、ドラマ性のあるアピールをしていけばいいというのです。

手始めに創業者のストーリーから。

社長の原体験からはじまり、そこに多くの人の感動をよびこむ物語があれば、必ずテレビは食いついてくれるというのです。

その典型がソフトバンクの孫正義氏であり、楽天の三木谷社長でした。

孫氏は高校を中退し、単身アメリカに渡って現地の高校に編入。

カリフォルニア大に入り、はじめて雑誌でコンピュータの集積回路の写真を見ます。

ITの時代が必ずくることを予感し、そこからパソコン分野の起業を思い立ちました。

楽天の三木谷社長は日本興業銀行に入社したあと、ハーバード大に留学します。

そこで垣間見たのがインターネットの世界でした。

その後、会社をやめ、自ら楽天を起ち上げます。

PRのコツは事業とセットで社長という人間そのものを売り、共感を集めるが有効です。

そのやり方が経営者の野望と志に裏打ちされていると、多くの人が関心を抱きます。

なんにもなければ、ゼロから始めるという伸びしろを見せるワケです。

ただし、なにもないゼロの状態は長く引っ張り切れません。

ごく短い間にそのパワーをフル回転させる必要があるのです。

それでもうまくいかないときは、最後の方法があります。

それが再起動です。

つまりここから「本格スタート」を開始すると宣言します。

それ以前の失敗はあくまでもチャレンジの段階にすぎなかった。

ここからです、本当に旅立つのはと宣言するのです。

どんな時でもマスコミをうまく使う手を、彼らが欲する形で提供するのが、新しい時代のPR術だと彼は言います。

SNSをあなどらない

「ジャングリア沖縄」が開業して以来、ぼくは関心を持ち続けています。

森岡毅社長のマスコミ掌握術には毎回驚かされてきたからです。

ハリーポッターをもってきたUSJの成功は誰もが知っていますね。

その彼が700億円の融資を得て、沖縄にどのようなレジャー施設を展開するのか。

成功するのか、失敗するのか。

その成り行きにも興味があります。

さて、オープン初日は天候も悪く、スタートはかなり苦しいものでした。

ぼくの関心は、彼がマスコミをどう利用しようとしたのかというところにあります。

ギリギリまで情報をおさえ、マスメディア関係者に披露したのは本当にオープン間際でした。

さらにインフルエンサーと呼ばれる多数のフォロワーをかかえた有名人を特別に入園させ存分に宣伝してもらいました。

もちろん、彼らには待ち時間などありません。

メインのアトラクションを十分に堪能してもらったのです。

彼らからの生な情報をSNSに反映してもらうのが目的でした。

しかしその後に訪れた一般客との落差が激しすぎたために、かえって反感だけが広がってしまう結果となりました。

ここまではさすがに森岡CEOも読めなかったのではないでしょうか。

さらには来場者の送信した口コミを、一時的にグーグルが消してしまうというアクシデントもありました。

400件以上の評価が寄せられたものの、翌日の午前にこれらは一桁まで激減し、ほとんどが閲覧できなくなったのです。

探知システムがポリシー違反の口コミの大量流入を検知したという話です。

それが森岡CEOの作為的な戦術ではないのかという疑問符までつきました。

このレジャー施設には国の予算もかなり投入されています。

そこから彼個人のファミリー企業にコンサルタント料が入っているという情報も漏れてきました。

以前手がけた西武園遊園地のリニューアル案件や、丸亀うどんのブランディング劇も十分に機能していないという事実も明らかになっています。

大手企業の失墜

今年はいくつかの事件がマスコミをにぎわせましたね。

数社の企業の信用が大きく失墜してしまいました。

フジテレビ、ビッグモーター、ジャニーズ事務所の3つはその代表ともいえます。

週刊文春が次々と放った矢は、あっという間にこれらの企業を暴風雨に巻き込みました。

以前なら考えられないことです。

もちろん、文春砲だけでは不可能だったでしょう。

その背後にあるSNSの力があまりにも巨大になりすぎました。

ものすごい数で襲いかかってくる人々の反応に足をすくわれたのです。

危機管理という意味で、十分な目配りができていなかったというしかないでしょう。

まさか、これほどまでにSNSが力をもつとは誰も思わなかったにちがいありません。

反感だけを前面にだして、日常の不満をぶつける匿名の人たちも相乗りしました。

さらに課金を狙い、襲いかかってきたのがYoutuber達です。

彼らはいわゆるコタツ記事を量産しました。

あちこちの記事をまとめて、いかにもそれらしい記事をつくるのです。

自分で取材にいくことはありません。

コタツに入りながら、キーボードをたたくだけの存在です。

しかしそこから入る金額は馬鹿になりません。

この種の動画が今も目立ちます。

内容も過激になる一方です。

負の連鎖が続けば、どれほど大きな企業でも倒れかねません。

株式を上場していれば、沈黙で逃げることはできないからです。

時代は急転直下で動いています。

天上にいた人間が落ちてくるのを、多くの人は手を叩きながら喜んでみているのです。

それほど、ネットの時代は人間の距離感を変えてしまいました。

現在も同じようなことが、あちこちの場所で繰り広げられていることでしょう。

ぜひ、下谷氏の動画を覗いてみてください。

メディアの裏側が、実に見事に切り取られています。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


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