【令和7年度】共通テストの試作問題を分析してみた【新学習指導要領】

学び

2025年度大学入学共通テスト

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は3年後に実施される入試の傾向について考えます。

現在の高校1年生が受験する年です。

その影響が今年の受験に関係するのかどうか。

それは誰にもわかりません。

では、なぜそんなことが今、気になるのでしょうか。

新学習指導要領が今年発足しました。

3年後には完成します。

つまり満を持して、新しい学力観を試す場になるワケです。

そのため、今から問題が準備されているのです。

大学入試センターは、11月9日、各教科の試作問題と正解を公表しました。

今回の発表は令和7年度入試からのためのものです。

2025年1月の大学入学共通テストを受験する生徒にとっては、関心の高い内容だと考えられます。

出題教科、科目ともに変更があるので、注意しなければなりません。

HPには参考問題として、幾つかの問題が公表されています。

関心のある人はダウンロードし、解答を試みてください。

25年度の共通テストからは、新学習指導要領に対応した本格的な試験になります。

教科、科目は新たな教科「情報」を加えた6教科8科目の受験が原則です。

このサイトでは国語の問題に特化して、変更点などを考えてみます。

国語の試作問題は大問が2問、ネットに公開されました。

従来の4問構成が5問になり、制限時間も10分のびて、90分になります。

今回の公開にあたって、留意点として次のような内容が示されていました。

必ずしも、同じ内容、型式になるとはいえない。

問題の作成は今後決定する「問題作成方針」にのっとって検討される、ということです。

しかし基本はおそらくここに示されたとおりのものになるでしょう。

追加されるという近代以降の文章についても、具体的なイメージは今回の試作に準じると考えた方がよさそうです。

解答の試み

公開された2つの大問をさっそく解いてみました。

特に最初の問題は実用的な文だといってしまえば、まさにその一言に尽きます。

複数のグラフや図から内容を読み取るという気候変動を主題とした問題です。

2問目は役割語がどのような経緯で習得されるのかといった問題でした。

問1には比較的に長い資料文が2つ添付されています。

その他に図が1枚とグラフが3図。

いずれも気象に関するものばかりです。

年平均気温偏差の変化、年降水量、台風の発生数と日本への接近数です。

気候変動に関する問題がかつて国語の入試の設問として出題されるということは、あまりなかったように記憶しています。

気候の変化は自然災害の発生だけでなく、感染症や精神疾患のリスクなどを増加する可能性があるという内容です。

温室効果ガスと大気汚染が熱中症を引き起こし、私たちの生活、行動様式に変化を与えるという論点を強調しています。

さらに気候変動が健康に影響を与えることを知ったあとに、レポートを書く設定になっているのです。

そのためのレポートの内容をまとめながら、友人による助言の内容をさらに検討していくという問題の構成です。

最初に読んだ時、小論文の課題文に酷似していると感じました。

SDGsの大きな流れの1つに地球温暖化の問題がありますね。

それがそのまま載ったという印象です。

ある意味では小論文を書く時の、まとめ方にそって設問をつくっていったパターンともとれます。

書かせる作業に似ている試験

新しい入試のコンセプトは、文を書く力ということを大きく掲げています。

その意味で、従来とはかなり違う印象が強いです。

以前のセンター入試や、ここ数年の大学入学共通テストとはかなり違うものになっていると感じました。

こういうタイプの問題が増えてくると、記憶を中心とした学習をしても、なかなかついていけないのではないでしょうか。

解答は全て5択です。

単純に書かせる力を試すという問題ではありません。

annca / Pixabay

その場で与えられた資料を読み取り、内容を精査する能力が必要です。

正確に文章の構成を読み取れる能力があれば、けっして難しくはないです。

しかし雑に読んでいると、思いがけない穴に落ちる結果になります。

従来型の勉強だけをしているだけでは、内容に追いついていけないかもしれません。

正確な読み取りが要求されています。

主人公はクラスメイトに目次と資料を示し、レポートの内容を説明します。

すると友人が助言をしてれたという設定なのです。

助言の内容に誤りがあるものはどれかというのが最後の設問です。

具体的に5人の発言内容が掲げてあります。

その中から間違いを1つだけ選ぶのです。

内容が前後するために、いい加減に読み飛ばして最後までくると、正誤問題としては苦しくなります。

試される読解力は、あくまでもこの文章の中で考えるということです。

あらかじめ知っている情報は役にたちません。

その意味で、集中力も必要です。

言葉遣い

もう1つの問題は「言葉遣いについての自覚」というテーマで役割語の内容をチェックしていくものでした。

資料が3つに分かれ、こちらの問題の方が、従来の形式にやや近いものといえるかもしれません。

しかし、従来の問題より言語活動を重視することに関しては、さらに前進した印象が強いです。

言葉による記録、要約、説明、話し合いなどの言語活動を重視している点が特徴です。

例として「このバスに乗ればいいのよね」という表現は、どのような人の話し方だと感じるのかをアンケートにした内容から質問しています。

ある特定の言葉遣いにおいて、その人物がいかにも使用しそうな言葉の遣い方をなぜ思い浮かべるのか。

その仕組みを分析しようというものです。

漫画やアニメ、小説などのフィクションにおいては、役割語が非常に発達しています。

それを自分の周囲からひろいあげてみようという試みです。

男女間の言葉遣いの違いがどこからきたものかという点を、チェックする内容もあります。

配点は近代以降の文章が3問で110点、古典が2問90点(古文、漢文各45点)です。

今回の試作問題では、新たな大問の例として複数の文章や図、グラフを基にレポートの内容や構成を考える設定の問題2例が紹介されていました。

voltamax / Pixabay

まだ実施までには時間がありますので、より精度があがり、問いが複雑化する可能性もあります。

その場で考え、会話をし、書くという流れは、ほぼ定着したと考えていいでしょう。

従来のような評論がそのまま出題されることは、少なくなるかもしれません。

「文学国語」「論理国語」に分かれるカリキュラムがいよいよ来年の春から始まります。

現在の高校1年生は、次々と新しい指導要領の中に組み込まれていくのです。

その意味で、「情報」などの授業とあわせて、ポイントをきちんと整理しておかなければならないでしょう。

国公立、私立をまじえた大学のこれからを占う試験です。

少子化の中、全入も可能になりました。

推薦入試の多様化とあわせて、今後の受験のあり方も大きな曲がり角に立っています。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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