ショパンコンクール
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はつい先日NHKBSで放送されたショパンコンクールの話を書きます。
ご覧になりましたか。
ぼくは全く見る気などありませんでした。
なんとなくテレビがついていたのです。
そこから1時間半、とうとう最後まで見てしまいました。
目が離せなかったですね。
元々、ピアノは大好きです。
ショパンのピアノ曲はどれも美しいです。
ピアノの作曲をするために生まれてきた人です。
本当の芸術家というのは自分が好むと好まざるとに限らず、1つの道をたどっていくものなんでしょう。
恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』をお読みになったことはありますか。
ショパンコンクールの話ではありません。
3年1度、浜松市で開かれるピアノコンクールの話です。
浜松国際ピアノコンクールというのが正式名称です。
この本の中には演奏家の不安と自恃がきっちり書きこまれています。
映画にもなりました。
内容的には小説の方が厚みがあります。
文字の中にこれだけ音楽と演奏家の世界を描きこんだ作品はないような気がします。
以前、記事にしたのでリンクを貼っておきます。
読んでみてください。
音楽関係では、1988年にチャイコフスキーコンクールのことを書いたものを読んだことがあります。
亡くなったピアニスト、中村紘子さんの著書です。
彼女はコンクールの審査員でした。
つまり採点する側からみた演奏の実際です。
この本は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。
牛田智大
ショパンコンクールが開かれたのは今年の10月でした。
ポーランドの首都ワルシャワで開かれます。
ショパンの生まれた国なのです。
結果は日本人のピアニストが2位と4位に輝きました。
このコンクールには日本人も多く挑戦しました。
その中の1人が牛田智大さんです。
12歳でデビューしたピアノ王子と呼ばれた才能ある青年です。
浜松国際ピアノコンクール10回大会で2位を受賞したのが牛田智大さんなのです。
小説家の恩田陸さんは2006年の第6回大会から、ほぼ全参加者の演奏を聴き続けたと言われています。
恩田さんは彼をかなり強くイメージしたようです。
その彼も今回ショパンコンクールにエントリーしていました。
番組では5人に密着しています。
オーケストラを作って盛んに活動している反田恭平さん。
前回のファイナリスト、小林愛実さん。
Youtubeで登録者90万人近くを数えるという角野隼斗さん。
医学とピアノをともに学んでいる沢田蒼梧さん。
最後のもう1人が牛田智大さんです。
たまたま彼が取り上げられたことで、ぼくの興味も増したことは言うまでもありません。
コロナ禍
コロナの影響で演奏会も満足に開けないのが現状です。
多くの芸術家たちが苦しんでいます。
そうした環境の中で開かれたのが、今回のショパンコンクールだったのです。
第4次審査はショパンのピアノコンチェルトです。
2曲あります。
どちらも名品ですね。
何度聞いてもとろけてしまいそうです。
特に第2楽章のやさしさは絶品です。
どうしてこのような曲が作れるのかわかりません。
協奏曲の1番か2番を通過した11人が全曲弾くのです。
審査員も本当に疲れると思います。
審査結果が発表されたのは深夜2時だったとか。
その時の様子はニュースにもなりました。
結果は2位が反田恭平さん。
4位が小林愛実さんでした。
特に反田さんはこの瞬間から一躍時の人になりました。
演奏会のオファーだけでなく、取材も殺到したようです。
その時に彼がインタビューに答えた内容が実にすばらしかったですね。
驚きました。
彼は4歳の時にヤマハ音楽教室に通い始めたことがきっかけでピアノを始めたそうです。
12歳から本格的にピアノを学びました。
高校在学中に第81回日本音楽コンクール第1位入賞と、聴衆賞を含む4つの特別賞を受賞します。
2年後(2014年)には、チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学。
翌年(2015年)イタリアで行われた「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝したのです。
これがきっかけで「ロシア国際音楽祭」に招待されロシアでのリサイタルデビューを果たします。
日本でのリサイタルデビューは、2016年サントリーホールの大ホールででした。
2000人の観客で埋め尽くされたそうです。
目的を逆算する
彼のすごいところは、目的のために今、行動するということなのです。
誰にでもできるものではありません。
全てを逆算をしたところから現在が生まれます。
夢は日本にコンセルヴァトワール(音楽院)を作ることだそうです。
こちらから外国へ行くのではなく、世界中から日本にきてもらいたい。
彼はピアノの響きをよくするために、体重を増やし、身体を大きくしたのだそうです。
よく声楽家で太い体型の人がいますね。
彼らにとっては身体そのものが楽器なのです。
心地のよい振動をする肉体をつくることも音楽には必要なのでしょう。
ピアニストも同様です。
腕の力が鍵盤にのります。
それが響きをよくするのです。
将来のために多くの音楽家と知り合うというのも1つの目的だったそうです。
彼らに日本に来てもらって教えてもらう。
その目的も今回のエントリーにはありました。
ソリストを作るのは並大抵のことではありません。
オーケストラを率いるのもコンクールに出るのも、彼の中では同じ目的のためなのです。
練習場を自前で作ったという映像もありました。
全てが逆算によって進むという人生の厳しさはあるでしょう。
しかし夢の大きさに羨ましさが募りました。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。