解決策を考える
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は問題提起をどうしたらより強調できるかについて考えてみましょう。
昨今の小論文では課題文型の出題がほとんどです。
なかにはかなり長い評論などもあります。
筆者の論点に対して、考えるところを書きなさいという形式が中心です。
字数は800~1200字。
制限時間は60~90分です。
小論文は解決策を考える入試だと思ってもらって間違いありません。
何らかの糸口を示さなければいけないのです。
なぜその解決策を勧めるのか。
必ず理由があるはずです。
それをきちんと書き込むことで、評価がつきます。
なんとなくそう思う式の文章はNG。
なんにも書かなかったのと同じです。
きちんと論理的に説明をする必要があります。
採点者はその部分をメインに読みます。
そこで評価が決まるのです。
しかしそこへいくまでにどうしても問題提起が必要です。
何を解決しなくてはならないのか。
中心の主題は何か。
これが読み取れなければ意味がありません。
課題文には常識的な世間知が登場するケースも多くみられます。
だからこういう問題が起こるのだというワケです。
解決するにはこういう考え方があるという筆者の論点も同時に示されます。
常識を否定する
最初に問題提起をすると書きました。
採点者は書き出しをじっくり読みます。
なぜなら、どの程度の読み取りができたのかをここで判断するからです。
筆者の論点のポイントがきちんと把握できているかどうか。
国語力の判定をするのです。
筆者の文章に頭からNOをいうのはかなり難しいでしょうね。
しかしあえてやってみる価値はあります。
はっきりとNOを言いたい時はどうすればいいのでしょうか。
いくつかテクニックがあります。
そのうちの方法を1つご紹介しましょう。
課題文に反論するのはそう簡単なことではありません。
しかしうまくいけば高い評価を得られます。
目立ちますからね。
たくさんの答案を読んでいると採点者も疲れてくるのです。
そんな時にキラキラした文章が目に飛び込んでくると、ついいい気持になってしまいます。
採点者も人間です。
そのためにはどうしたらいいのでしょうか。
課題文を甘くみてはいけません。
入試のために多くの評論文や新聞などを読み、多くの先生方が納得して決めた文章なのです。
いいかげんなものはありません。
それだけにきちんとした対応が必要です。
直感が大切
いくつか問題を解いているとわかりますが、直感に頼る部分がかなりあります。
背景になる知識も必要です。
これはいけるなと思ったら、思い切り正面からNOを言いましょう。
そのためにはどうすればいいのか。
世間の意見や考え方を前提として書かれた文章の場合はそれが可能です。
世の中の大勢はこういう意見を持っているという内容に対して、自分はこう考えるというパターンの書き方をします。
課題文の中で通説はこうであると示されているものの、自分はそう考えないという構成を前面に出すのです。
筆者はなるべく多くの賛同を得るために、社会的に認知された考え方を前提として使うケースが多いです。
それが自分の考え方と相容れない場合は、そこをズバリと指摘しましょう。
どっちつかずの文を書くよりアピールします。
採点者は内容についての良し悪しよりも、論点の組み立て方の方に目が向きがちです。
課題文と対立するワケですから、その分、シルエットがくっきりと映し出されるのです。
もちろん、言うほどに簡単ではありません。
少し具体的な例でみてみましょう。
昨年から今年にかけてSDGsに関する問題がよく出ていますね。
17の目標に対して、正面から反論するのは非常に難しいです。
どれも直球ど真ん中の速球ばかりです。
しかしもし自分に可能だと思ったら、トライしてください。
試みに1つのテーマを考えてみましょう。
17の目標の中に「安全な水とトイレを世界中に」というものがあります。
「すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」というテーマです。
そのターゲットの1番目には「2030年までに、全ての人々の安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する」とあるのです。
反論の余地なし
目標としては実に立派なもので、文句のつけようがありません。
つまり反論の余地はないのです。
しかしこの社会的に認知された考え方を実施するための道のりの遠さは計り知れません。
サハラ以南の国の現実は、この表現とは程遠いものです。
あなたはJICA(国際協力機構)をご存知ですか。
日本の政府は世界中の国にODA(政府開発援助)政策の一環として、莫大な予算を使っています。
前身は1974年月に設立された特殊法人国際協力事業団です。
有償や無償資金協力を行っています。
青年海外協力隊などの活動については聞いたことがあるでしょうね。
令和3年度の事業規模は総額1兆4000億円と言われています。
日本の国民1人あたり1万円以上という巨額なものです。
その予算の中でJICA水道も敷設しているのです。
JICAが「水の防衛隊」の派遣を始めて、今年で10年を迎えました。
安全な水を安く供給することで、伝染病や感染症から人々を守ることができます。
しかし目標の達成にはどれくらいの歳月が必要なのか。
ターゲットそのものには文句をつけようがありません。
もちろん、目標ですから、それが誤りだという気持ちもないのです。
可能な限り早くターゲットに示された状況になれば理想的です。
しかし道のりの遠さを考えた時、あと18年足らずでそれを実現するのは大変に難しいことだと感じます。
SDGsは必要な目標をきちんとかかげてすばらしいものです。
しかしそれが達成される時のイメージがなかなか思い浮かばないのです。
1日1.25ドル未満で生きている人をなくすという目標と、安全な水道という概念がどう交わるのかを示しましょう。
SDGsの考え方を十分理解しながらも、目標の達成が容易ではないことを主張していけばいいのです。
だから不必要だと言っているワケではありません。
その困難度に着目して問題提起を行うのです。
現実の様子を新聞の報道などできちんと把握していれば、実感のこもった強い文章になるはずです。
正面から論じられるのです。
しかしそこまでいかなくても、関心を強く持っていれば書くことはできるはずです。
政府開発援助のあり方やNGOなどの現実とあわせて、問題提起をすれば、他の受験生の文章とは全く違った切り口になるはずです。
リアリティの強さが違います。
切り口からもう力がみなぎっているのです。
それには日常の勉強が必要です。
学び続けてください。
大学に入った後も、その力が必ず役に立ちます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。