共通テストは難しい
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は大学入試の動向について書きます。
直近の生々しい試験の話です。
「共通テスト」の志願者が減り続けています。
2024年度「共通テスト」の最終志願者数は49万人でした。
50万人を下回ったのは32年ぶりなのです。
なぜか。
試験が難しくなったからです。
知識の有無を問う問題が格段に減りました。
記憶にたよる勉強が通用しなくなりつつあるのです。
「共通テスト」はその場で考えさせる内容に移行しました。
時代はまさにグローバル化の波の中です。
記憶力だけに頼っていては、生きていけないというメッセージなのでしょう。
もちろん知識がいらないワケではありません。
それは基本的な大前提です。
その上にたって、思考力、理解力、応用力を問う試験へと変化してきたのです。
2025年度から「情報」を加えて科目数が7教科21科目になりました。
もうそんなに勉強したくないという悲鳴も聞こえてきますね。
最後までこの試験にこだわるのは、ごく一部の最優秀層の受験生だけになりつつあるのです。
地方のトップ校の生徒などは今も、当然のように「共通テスト」を突破するための勉強一直線で突っ走っています。
都会でもそのあたりの事情は似ています。
コスパとタイパ
しかし本音を言えば、みんなコスパやタイパを求めたいのです。
試験の内容をみれば、そのことがよくわかります。
かつて「センター入試」の問題に添付されたイラスト、グラフ、表の点数はそれほど多くはありませんでした。
しかし「2022年共通テスト」で使用されたイラスト、グラフ、表の点数は大幅に増加しています。
問題のページ数も同様です。
かなりの増ページになっています。
多くのイラストやグラフから、素早く、的確に情報を処理する学力が求められているのです。
これが私立を受ける都会の生徒には、苦しいと感じる要因になっています。
センター入試の時代は、受験対策がそのまま私立大受験の基礎的な勉強になりました。
ところが状況は大きく変化しつつあります。
ここで「2024年度共通テスト」の志願状況がはどうだったのかみてみましょう。
前年度より志願者が2万人減少しました。
総出願者数は49万人です。
私立大で「共通テスト」を利用する大学は530校で、5校減っています。
それでも一定の数があることはよくわかります。
受験生の本音は次の内容に集約できます。
複数の私立大や学部、学科に出願できるために、受験が1度で済むから楽だ。
つまり大学の併願が簡単だから受験するというワケです。
これ以上、コスパの良さはないですね。
では私立大の側にとってはどうか。
国公立大に志願している受験生を、自分の大学に取り込める可能性があるから実施したい。
全く違うタイプのテスト
ところが、「共通テスト」になってから私立大の一般選抜の対策とは別に、共通テストのための対策をしないと得点ができなくなりました。
簡単に言えば2度手間になってしまったのです。
全く違うタイプの勉強をしないと、国公立と私立の大学を受験できません。
つまり、私立大専願者にとっては、共通テストを受けるメリットがなくなったのです。
しかも、都市部には私立大専願者が少なくありません。
この状況に追い打ちをかけたのが少子化です。
今年の出生数は半期で35万人でした。
おそらく年間の新生児出生数は70万人を切るでしょう。
ちなみに2023年度の受験人口は、現役生と浪人生を合わせて約65万人。
2024年度は約63万人でした。
少しずつ減っていますね。
人口の70%が受験をするとしたら、18年後の受験人口は49万人です。
80%が受験しても56万人。
現実には60%程度で推移すると思われます。
すると42万人しか、受験生はいなくなるのです。
2024年4月の入学定員は約64万人です。
それに対して、志願者は約62万にとどまると見込まれています。
今のままでは全入です。
「共通テスト」の志願者数が減った原因としては、少子化だけではありません。
ここ数年、急速に増えてきた「年内入試」があります。
どうしてこの流れが加速したのか。
はやい段階で合格を決めたいという受験生の思惑以上に深刻なのが、大学側の事情なのです。
入学定員の確保
受験生が想像を超えて減り、入学定員を確保できなくなりつつあります。
募集停止を予定している大学はまだ表面化していないものの、ここ数年が正念場だと言われています。
定員が確保できないのです。
今までは不安もありましたが、なんとか数あわせで生き延びてきました。
それももう時間切れになりつつあります。
短大、女子大が特に苦しいことは誰もがよく知っている通りです。
そこへもってきて、出題形式の変更で「共通テスト」のコスパが一気に下がりました。
都市部では特に、「共通テスト」を敬遠する傾向が強くなりつつあります。
浪人までして大学に入りたいという生徒数は、明らかに減っているのです。
すなわち、私立大の一般方式や年内入試に流れる受験生が多くなりました。
現在、総合型選抜や学校推薦型選抜が広がりつつあります。
11~12月に合否が決まるからです。
入学定員の50%以上がこの「年内入試」で決まるとも言われています。
年内入試は、面接や小論文、探求などが評価のポイントとなっており、早めに合否が分かるというのがメリットです。
面接や、小論文などが得意な生徒にとっては、朗報に違いありません。
人物重視で評価されることが多いで、活躍する場が多かった受験生にとっては、かなり有利です。
しかしそれなりに対策が必要です。
志望理由書、小論文、面接、探求などに時間をかけなければなりません。
大学のレベルによって、内容は千差万別です。
そこまできちんとリサーチできる人ならば、この試験にチャレンジすることは合格の確率をあ
げるための有効な手段になるに違いありません。
少子化と「共通テスト」の変質が、まさに現在の状況そのものなのです。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。