推薦入試の変貌
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
いよいよ、来年度入試の予想をする季節になりました。
近年、小論文の出題傾向は大きく変化しつつあります。
以前と異なる大きな点は生成AIの登場ですね。
chatGPTなどが開発されたことです。
実際に使ってみればその威力がよくわかります。
800字程度の小論文であれば、数分で書き上げてしまいます。
その実力をいちどチェックしてみてください。
どのようなテーマでもこなします。
その能力が日々進化していることにも驚かされます。
近年、年内入試が声高に叫ばれています。
大学経営が非常に難しくなっているのです。
少子化とともに、大学数も増加し、かつてのようなシステムでは受験生が集まらなくなってきました。
受験制度が根本から揺れ動いているのです。
受験生そのものも二極化し、志望校の高望みをしない生徒も増えています。
さらに言えば、いくつもの科目を勉強する国立型の入試に耐えられなくなっているのです。
来年度からは「情報」も入りますからね。
では、私立大学を受けるのかといえば、そう単純ではありません。
かつてのように同じ大学の学部を、いくつも受験するなどということもなくなりつつあるのです。
もちろん、私立中学の入試に挑んでいる生徒も一定数います。
親の意識、経済力などあらゆる面で、階層化が進んでいるのです。
これは歴然たる事実です。
国公立と私立の対比
医学部入試などと簡単に口にしますが、私立大学に進学する場合、学費が数千万円必要です。
難易度の高い大学ほど学費が安く、その反対の場合は確実に高くなります。
国立大学医学部との学費の差は広がる一方なのです。
一般的な文系、理系の学部の場合は少し状況が違います。
国立大学の学費は随分値上がりしました。
現在、国立大学は私立の半額程度、学費がかかります。
かつて、国立大学は非常に授業料が安かったのです。
ところが瞬く間に値上げが続き、今のような状態になりました。
経済格差が大きくなり、保護者の負担も増しています。
奨学金制度もありますが、利子付きのを借り過ぎてしまうと、卒業後の生活が圧迫されます。
そうした環境の中で、なるべく無理をせず、親元から通える大学に進学してほしいという声が高くなるのは当然です。
それを裏で支えているのが、「総合型推薦入試」なのです。
名称がかわりました。
かつてのAO入試です。
このタイプの試験は、高校時代の成績をあまり厳しく要求されず、「探求」と呼ばれる研究レポートをあらかじめ提出し、面接を通れば合格を手にいれることができるのです。
そのためにあらかじめ、chatGPTを使うことなども可能になりつつあります。
大学側もある程度、そのあたりの事情は了承しています。
しかし受験生の絶対数が減りつつある現状の中で、受験生を選別できる大学は確実に減っています。
指定校推薦をいくら出しても、受験生が集まらないとなれば、総合型に移行するしかありません。
年内に受験生を確保したい大学側と、はやく決めたい受験生のニーズが一致した結果といっていいでしょう。
厳しい現実です。
小論文のある大学
現在、試験場で確実に制限字数800字以上の小論文を課す大学は、国公立大学と一部の私立大学に限定されつつあります。
過去の入試問題をチェックすると、非常にレベルの高い問題を出す大学は、自由に学生を選べる立場の強い大学に限られています。
当然、卒業した後の就職状況も良好です。
そこまで、格差社会が深く浸透してしまったのです。
逆にいえば、難しいテーマに挑むためには、並々でない勉強を必要とします。
現在、多くの大学にいえることですが、一般入試で入学する学生数よりも、推薦入学者の方が多いのです。
本当に驚くほどの様変わりです。
したがって、現状の分析が絶対必要になります。
同じ大学でも、事情は学部によって異なるのです。
最初からかなりの人数が指定校推薦などで満たされている大学の現実を、チェックしておきましょう。
附属の高校が多数あれば、かなり充足されている可能性がありますね。
一部の附属高校は、別の大学へ流れるケースもあります。
データの収集分析が必要な所以です。
逆に言えば、残りの枠の中で戦わなければなりません。
だからこそ、倍率などを確認しておく必要があります。
近年は、多くの資料がネット上にあります。
それをみるだけで、希望する大学への道のりがみえてくるのです。
このことは国公立の大学でも同様です。
近年はかなりの生徒数を推薦で確保するようになりました。
データを精査する必要がありますね。
テーマ予想
それでは来年度、どのようなテーマが出題されるのでしょうか。
たくさん参考書がでていますが、最もレベルの高い大学の問題を網羅しているのは、代ゼミの『小論文ノート』です。
毎年最新版を掲載していますので、これを読めば全体の流れがみえます。
2025年版は8月に刊行されました。
アマゾンで買い求めてください。
どんなテーマが来年度に出題されるのか。
予想は大変に難しいです。
基本は「AI」、「ジェンダー」、「労働」、「読解力」、「命」、「スポーツ」、「学問」、「ノーマライゼーション」、「少子化」、「ネット社会」、「若者」などです。
最大のポイントは、「ネット」に関わることでしょう。
AIの登場により、働き方が根本からかわりました。
労働環境の変化は想像以上です。
ネットに関しては、次のような問題が考えられます。
➀デジタル社会における読解力とは何か。
②テレワークにおける労働は十分に機能するのか。
③男性の育児休業がネット社会において持つ意味とは。
④ネットと世論の形成にはどのような相関関係があるか。
⑤インターネットは読書の時間を奪っているか。
いろいろな内容のテーマが考えられます。
この他に「教育」、「格差」、「平等」、「SDGs」、「戦争」、「平和」、「ジェンダー」なども視野に入れておかなければいけません。
今年の内容としては、この他に「アウトプットのあり方」、「能力主義と不寛容の関係」、「異文化社会における相互理解」、「若者の意識の変化」などが考えられます。
さらに「人口減少後の未来社会」、「スマホの可能性」、「市民意識の変化」、「福祉の在り方」、「ネット時代の孤独」。
もっと言えば、「SNSにおける炎上の構造」、「テクノロジーの未来」、「思考を生み出す時間とは」。「民主主義の機能」などです。
このテーマに沿って少しづづでも視野を広げていけば、十分合格圏に入ることができるでしょう。
大変な努力を必要としますが、必ず役に立ちます。
志望校に入れるその日まで、気持ちを緩めずに頑張ってください。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。