【小論文・八王子東高】意味を理解する能力を持つには【AI時代】

小論文

AIに代替されない人材

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はAI時代を生き抜く力をどのようにして手にいれればいいのかというテーマについて考えます。

大きな問題ですね。

あなたは「シンギュラリティ」という言葉をご存知ですか。

AIが人間の知能を超える時のことをそう呼びます。

つまり人間がAIに支配されるのです。

geralt / Pixabay

あらゆる行動が制御され、場合によってはAIが戦争を始めます。

現在では、ドローンなどを使っての無人戦争も十分視野に入りつつあります。

それを全てコントロールするのがAIなのです。

緊縛した時代状況の中で、人間にできることは何か。

それを考えようというのが今回の小論文の問題なのです。

今回の問題は平成31年度の入試に出題されました。

制限時間は2問で60分。

半分の時間を使うとして、30分で500字を書かなければいけません。

課題文を全文ここに載せます。

まずじっくりと読んでください。

その際に大切なのは設問の指示をきちんと守ることです。

いい加減な解答の仕方をすると、得点が低くなります。

ここでは設問だけを最初に取り上げてみます。

次のAとBの文章を読んでそれぞれの内容に触れながら学ぶとはどういうことかあなたの考えを500字以内で述べなさい。

文章の構成は3段落か4段落とし、主張の説明として具体的な例を示すこと。

ここでのキーワードは何か。

それをしっかりおさえることです。

課題文

A

AIに代替されない人材とはどのような能力を持った人なのでしょう。

それは、意味を理解する能力です。

AIは意味を理解しないからです。

「1、3、5、7の平均はいくつか」と問われると、日本では大学進学希望の高校生のほぼ100%が(1+3+5+7)÷4=4と正しく答えることができます。

国民の半分以上が平均の公式を運用できる国は、日本とシンガポールくらいしかないかもしれません。

ではその平均の意味はわかっているのでしょうか。

ある中学生の3年生の生徒100人の身長を測り、その平均を計算すると163.5cmになりました。

この結果から確実に正しいと言えるのは次のうちどれでしょう。

①身長が163.5cmよりも高い生徒と低い生徒はそれぞれ50人ずついる。

②100人の生徒全員の身長をたすと163.5cmかける100イコール16350cmになる>

③身長を10cmごとに「130cm以上で140cm未満の生徒」「140cm以上で150cm未満の生徒」というように区分けすると「160cm以上で170cm未満の生徒が最も多い。

正解は②だけです。

大学生の4人に1人は正しく答えられませんでした。

公式は知っている。

でも意味はわかっていないのです。

今後、統計解析ソフト、統計に基づく機械学習ソフト群を使いこなす人も増えていくでしょう。

けれども本当に重要なのは平均と中央値が異なるように、それが何を意味しているか、それがどんなリスクを含んでいるのかを理解する人材です。(新井紀子『教科書が読めない子供達』)

B(論語)

学んで思わざれば則ち罔く、思いて学ばざれば則ちあやうし。

「学んで」すなわち外からの習得だけにつとめて自分でよく考えることをしなければ、ものごとははっきりしない。

反対に「思いて」自分で思索するだけで外からの知識の習得につとめなければ、かってな独断に陥って危険だという。

「学」と「思」とが車の両輪のように併行することが必要だというのである。

ここには学問のあり方についての重要な提言がなされている。(金谷治『論語の世界』)

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ポイントは何か。

八王子東高校の問題はある意味で大変ストレートなテーマです。

高校生になり、さらに複雑な思考を加えていくことによって、知識の量は当然増すことでしょう。

つまりそれだけ知が増していくのです。

中学校で習ったことの上にたって、内容は複雑になるに違いありません。

しかしそこからが大切だとこの課題文はそれぞれに論じています。

キーワードをまず探しましょう。

設問の中にありますね。

意味を理解する能力です。

知識がいくら増えたにせよ、それが何を意味しているのかをきちんと理解していなければ、なんの役にも立ちません。

自分がなんのために知を得るのか。

つまり世界の全体像の中で、今獲得している知識がどのような意味を持つのかということです。

難しくいえば、パースペクティブですね。

現在地を冷静に読み取る力をつけていなければ、知識は断片に留まってしまいます。

それでは何にもならないというのが、Bの文章に出てくる『論語』の言葉なのです。

学ぶことと考えること

結論はやはりここにやってくるでしょうね。

孔子の言葉の通りです。

この小論文はYesNoで答えるタイプのものではありません。

筆者の論点を自分の体験を元にして深掘りしていくのです。

設問をもう1度よく読んでください。

段落の数の指定を守らなければダメです。

評価がワンランク確実に下がります。

それと同時に主張の説明として具体的な例を示せとあります。

ここで点数の差が出ます。

どんな具体例をイメージできましたか。

自分が過去に経験してきたことの中で、反省も認識も深めずにただ突っ走って失敗したことはありませんか。

それを短くまとめてください。

500字しかありません。

許されるのはせいぜい150字までです。

geralt / Pixabay

できたらもっと短い方がいいです。

そこから課題文の内容が自分にこれだけ沁みたのだということを強くアピールしましょう。

AIに負けないために、自分だけの鳥瞰図をつねに意識することを宣言してください。

それがこれから高校で学ぶことの意味なのだということを前面に出すのです。

採点者はたくさんの小論文を続けて読みます。

つまり文章が光り、採点者に刺さらなければ、高い評価は得られないのです。

だからといってプロパガンダではダメです。

自分の腹の中から、自分が本当にそうだと思った原石をそのまま書き込むのです。

わずかな言葉であっても、腹におさまっていることをそのまま吐露したものは、採点者の心を打ちます。

人間というのはそういうものなのです。

恰好をつけてもムダです。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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