【小論文・教育格差】経済の視点から学力の問題に切り込む【労働倫理】

学び

教育格差

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は格差社会の問題を経済の視点からみていきます。

教育予算に関するテーマです。

諸外国に比べて日本の教育水準は非常に高いです。

一時はPISAショックなどといわれ、日本の教育の未来に不安を投げかけました。

日本人の多くは教育に対して、少なからぬ関心を抱いています。

入試においても小論文によく、教育格差の問題が出題されます。

特にコロナ禍において、さまざまな問題が浮き彫りになりました。

このテーマは2023年度入試においても、確実に問われることとなります。

過去問をチェックしながら、コロナ禍との関連をみていきましょう。

この問題は『財政から読みとく日本社会』という本が出典です。

長文なので、ポイントだけを抜粋します。

問題は次の2問です。

問1 内容を400字で要約しなさい。

問2 文章に述べられた格差の問題を踏まえた上で、日本の公的な教育支出のあり方、財源とのバランス、さらに社会に広く受け入れられるための方策について、あなたの考えを800字以内で論じなさい。

というものです。

特に問2は3つの条件が出ていますね。

それぞれをきちんと把握して答えないと、評価は低いものになります。

課題文

教育予算はもっとも関心のある問題のひとつかもしれません。

日本の教育水準は非常に高いにもかかわらず、日本の政府が行なっている公的な教育支出は先進国の中で最低水準なのです。

まず公的な教育支出がGDPに占める割合はOECD加盟国の中で下から3番目、そして公的支出全体に占める教育支出の割合は下から4番目です。(中略)

さらに大学に行くための費用の6割以上が、政府ではなく各家庭の負担であり、この割合はOECD加盟国の中で、韓国に次いで2番目に大きな数値となっています。

このように私たちの社会は子どもや若者の教育を社会全体で何とかしようとするのではなく、それぞれの親が自分たちの子供に教育の機会をあたえることが前提となっていることがわかります。

社会意識に関する世論調査の中には、子育てのつらさの内容を訪ねる項目があります。

この中で1位なのは「子供の将来の教育にお金がかかること」です。

そして2位が「子供が小さい時の子育てにお金がかかること」となっています。

1996年をピークに一世帯あたりの所得が減りはじめました。

もしピーク時の所得を保つことができていれば、この20年間でおよそ1500万円以上の貯金ができていた計算になります。

高校入学から大学卒業までの入在学費用は平均で900万円といわれています。

ちなみに入在学費用とは、授業料、通学費や塾代だけでなく、入学金、寄付金、受験費用などを合計したものです。

さらに自宅外通学となる場合は、仕送りや新しい部屋の敷金、礼金、家財道具の購入などのお金がかかります。

この平均額はおよそ545万円です。

20年間で失った貯金の額は子供一人分の高校、大学でかかる費用とほぼ等しかったわけです。(中略)

教育にかかるお金をみんなで負担しあう社会ではなく、自己責任でなんとかする社会は、当たり前のことですが「所得の格差」が「教育のチャンスの格差」を生んでしまいます。

ちなみにパートやアルバイト、契約社員などの非正規雇用の場合、15歳から24歳までの若い人たちの非正規雇用者比率は男性25%、女性36%です。(中略)

働くことは私たちの義務だという考え方があります。

これを少し難しく言いますと「労働倫理」と呼びますが、残念なことに統計的にみると、所得の低い若者ほど、この労働倫理が失われていくことが分かっています。

労働倫理の低い人たちは人生が運やチャンスで決まるという考えがちだということも知られています。(中略)

また、25歳から34歳までの男女それぞれが大学教育を受けた割合を見てみますと、男性が女性の割合を上回っている国は日本とトルコだけです。

ただトルコは両者がほとんど同じ率で、大きく前者が後者を上回っているのは日本だけです。

子供の頃に勉強の出来た人たちが大学に行くということはそれほど不思議なことではありません。

実際どの国でも女性は男性以上に大学で教育を受けているわけですが、なぜか日本だけはそうなっていないのです。

解答作成のポイント

問1に関しては特に難しいことはないでしょう。

要約をきちんとするということが、小論文成功のカギだということは何度も述べてきました。

教育機会が損なわれる原因は親の所得格差にあります。

この論点をきちんとおさえてください。

日本の公的な教育支出は最低水準で、各家庭の自己負担が中心であることも大きな特徴です。

世代間の格差が「未来への希望」に大きな影響を与えていることも問題です。

さらに男女の性差による教育格差についても言及しなくてはいけません。

ここにあげたポイントを全て網羅すれば、ほぼ確実に得点できます。

問題は問2です。

①日本の公的な教育支出のあり方、②財源とのバランス、さらに③社会に広く受け入れられるための方策の3つがきちんと解答に書き込まれていなければいけないのです。

ポイントは公的な教育支援の拡充でしょう。

施設、人員が十分に確保されることで、少人数教育なども可能になります。

さらに社会に受け入れられるためには、無償化に進む方向を示しつつ、無利子の貸与型奨学金を拡大する必要があります。

教育は各家庭の自己責任ではなく、社会全体で支えるものでなくてはなりません。

子供を産みたくてもうめないという家庭が多くなれば、国力も落ちます。

少子高齢化社会の構図が永遠に続くことになるのです。

それだけは絶対に避けなければなりません。

コロナ禍の格差

最後に新型コロナウイルス感染拡大がもたらした影響についても要点を述べておきます。

直接、この問題とリンクする点が多いからです。

教育格差と深く関連し取り上げられるのが、子どもの貧困問題です。

日本における子どもの貧困は「相対的貧困」という指標により割り出されます。

近年よく言われることとして、日本には貧困状態にある子どもが多いという事実です。

その影響がほとんど教育にのしかかっています。

家庭の社会経済的条件は子どもの教育機会を圧倒的に左右します。

どの家庭に生まれたのかということで、教育格差は広がります。

子どもの最終学歴から就業率、就業形態(正規・非正規)までにも影響を及ぼすのです。

怖いのは持続的な貧困連鎖です。

特にコロナ禍の中で、母子家庭などでは収入が著しく減りました。

仕事がなくなってしまったのです。

その結果、学力の確保も難しくなっています。

その一例が2020年3月から始まった臨時休校の要請です。

その後4月の緊急事態宣言以降、休校が続きました。

自宅で学習を続けることが求められたことは当然です。

しかし家庭環境が大きな差をつくりだしてしまいました。

共働きやひとり親世帯では、生活リズムが崩れやすくなったという報告があります。

さらにリモート授業を進めたくても、通信環境がないという現実もありました。

家で勉強できる環境が整っていなかったのです。

休校中の学習を左右したICT環境については、はやくから予想はされていました。

インターネット回線、パソコン・タブレットなどの教材を使える家庭と、そうでないところの格差は想像以上です。

塾へ通う財源もなく、公立と私立の差もはっきりと出ました。

あらゆる格差をコロナがあぶりだしたのです。

この問題は非常に本質的なテーマです。

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教育格差の問題とリンクさせて、認識しておく必要があるでしょう。

今回も最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

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