【セグメンテーション】階層化された個人が群衆の中で孤独になる時代

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セグメント戦略の功罪

みなさん、こんにちは。

ブロガーのすい喬です。

今回は階層化ということを少し考えてみます。

つきつめていくと、格差社会ということになるのかもしれません。

セグメンテーションという言葉を御存知ですか。

市場を細かく分け、ニーズごとにグループ化することを言います。

元はマーケティングの用語ですけど、今ではもっと広い意味を持っています。

例えばテレビのコマーシャルもそうですね。

どの年代のどの人たちをメインのターゲットにしているかによって、広告の打ち方がガラリとかわります。

テレビの視聴の仕方が以前とは違うといわれている昨今、人々の嗜好はどう変化しているのでしょうか。

ここにあげたのは今までのマーケティングによる階層イメージです。

C層 男女(4歳~12歳)

アニメ番組の人気が高く、クイズ番組やアイドルやお笑いタレント出演のバラエティ番組が人気。

T層 男女(13歳~19歳)

音楽番組、お笑いタレントによるバラエティ番組、ドラマ番組などに人気があるのが特徴。
近年は一定の層で子供向けではないアニメも好まれる。

F1層 女性(20歳~34歳

21時以降の時間帯を中心に、バラエティ番組、ニュース番組、スポーツ番組を好む傾向。

M1層 男性(20歳~34歳)

ドラマを中心に、音楽番組、情報系のバラエティやクイズ番組などが人気。

F2層 女性(35歳~49歳)

スポーツ番組の人気が高い。ニュース番組、映画、ドラマなどを好む傾向。

M2層 男性(35歳~49歳)

ドラマ、ワイドショー、クイズバラエティなど、多様なジャンルを視聴する。

F3層 女性(50歳~)

スポーツ中継、時代劇、ニュース番組、早朝の情報番組・ニュースなどが人気。最近はBSが好まれる。

M3層 男性(50歳~)

ワイドショー、ドラマ、時代劇、ニュース番組など比較的早い時間帯またBSを好む。

ネットの影響が大きい

今までならこのイメージにそって広告を流していればすみました。

しかし昨今はそう簡単な話ではすまなくなっています。

実感からいえば、F1、M1層などは内部がもっと細分化されていますね。

雑誌のターゲットの絞り方などを見ても、こんなに広い枠組みではもう売れないと感じます。

趣味嗜好が驚くほど細かくなってしまいました。

少しそのターゲットをはずれると、もう全く何も通じなくなります。

食べるものから好きな音楽まで、共通のものがなくなりつつあるのです。

もちろん、ネットの影響も大きいです。

今ではテレビに流す広告の量よりも、ネットに流れる方が多いのです。

それだけ力関係がかわったということなんでしょうね。

ちなみに昨年度のインターネット広告費は2兆1,048億円。

6年連続で2桁成長を達成しています。

一方、テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)は1兆8,612億円。

これがどういう変化と意味をもたらしているのかということを正確に読み取らなくてはいけません。

当然ネット広告とテレビ広告の質の違いやターゲットの差なども正確に見抜かなくてはならないのです。

テレビとの違い

両者の1番の違いはなんでしょうか。

最大の特徴は消費行動のスビードです。

ネットは購買アクションまでの動線がものすごく短いのです。

欲しいとなったらその場でスマホに打ち込みます。

場合によってはアプリをインストールします。

それで完了なのです。

後日、店にいって実物を手にとって確かめる必要もありません。

ネット通販の勢いが止まらない最大の理由はこれにつきます。

つまり回りくどいステップがないのです。

テレビCMは当然アクションの獲得を狙って打たなければ負けてしまいます。

かつてのようイメージCMだけを流していても効果がないということになります。

さらにネットをうまく使えない層と、日常的に使える層の分離もあります。

シニア層にはなかなかハードルの高い購買方法も出てきます。

逆にいえば、「孫目線」で商品を売るという通販型のCMの出番になるのです。

細かいことはわからないけれど、この会社でいいというものを買っていれば間違いがないという信頼を手にすれば百人力です。

ジャパネットなどは典型的な「孫目線」の通販と言えるでしょう。

孫がこれがいいよと言ったものを、シルバー層は値段を気にせずに買うという心理です。

似たような商品があまりに多く、選択するのもかなり難しくなっていますからね。

ダイレクト販売の業態ですから、売上が即時に把握できます。

テレビCMの費用対効果の検証はさらにしやすい環境となっています。

費用の安い地方のネット局やケーブルテレビなどを使い、高齢者にターゲットを絞る展開も可能です。

geralt / Pixabay

ぼくはかつてある広告代理店に出入りしていたことがあります。

瞬時にテレビの視聴率が出るのを見ていると、ある種の怖ろしささえ感じました。

どのタイミングで1番視聴率が上がるのか。

その時に出演していたタレントは誰か。

その全てが数字になっていきます。

現代は効率第一主義の時代です。

ターゲットをしぼりきれれば、そこへ向けて広告を打てばいいのです。

単純に男女や年齢だけでよかった時代はすでに過去のものです。

今はさらに細分化し、住まい、学歴、収入、職業などあらゆる要素を分析して広告を打ちます。

階層の先鋭化

かつて出版社に勤めていた頃、ある会社のマーケット戦略について記事を書かされたことがありました。

もちろん、そういう類いの勉強をしてこなかったぼくとしては、全てが新しい課題だったのです。

取材前の準備段階として、書店に飛び込み、片端からマーケット関係のキーワードを探してまわりました。

とにかく横文字が多く、こうした分野の研究はアメリカ主導なのだというのを実感したのです。

その時、学んだ言葉の一つがこのセグメンテーションという表現です。

分割するという言葉がなぜ大切なのかといえば、それによってマーケティングの質が劇的に変化するからです。

潜在する客層のニーズにあわせて、こまかく丁寧に商品を展開していくことが、最大の眼目でした。

なるほど大学で学ぶよりも、必死になって書店の棚の中を駆け回った方が、血になり肉になるのかなと自分でも納得したものです。

近年、マーケットがあまりにもセグメント化されすぎてしまいました。

その結果、人々は狭い共通の話題だけが通じる蛸壺の中に閉じこもっています。

かつて専門馬鹿となじられた研究者と同じ地平になぞらえることができるでしょう。

セグメント化された人々は、お互いに使う表現も違い、感情の表出の方法も違うのです。

あえて言えばバカの壁に代表される「異文化非理解」型路線です。

少しでも領域が違えば、何も共通の話題がなくなります。

オタク文化よりも状況はもっと悲惨です。

ある作家を好む人が、別のタイプの作家のものを読むかと言われれば、それは残念ながらありません。

こうして、全世代に共通して好まれるアニメも映画も歌も消失してしまいました。

紅白歌合戦が80%の視聴率をとった時代ははるか彼方です。

軸のなくなった時代。

共通の言葉を失った時代。

人々はますます自分の穴の中へ首をつっこみ、そこへ言葉を紡ぎ出さざるを得なくなっています。

コマーシャルだけではありません。

知の階層化も進んでいます。

マーケットのセグメント化が、ニーズの激しい変化を引き起こし、その結果として、あらゆる世代に共通する感情を喪失したと言えるのかもしれません。

その先に何があるのか。

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今はまだそれをみつめるゆとりもないのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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