植木屋さん、ご精が出ますな
みなさん、こんちには。
アマチュア落語家、すい喬です。
このところのコロナ禍にはまいってます。
とにかく高座がなんにもない。
お稽古会も開けません。
仕方がないので、Youtubeで同時配信される落語会ばかり見ています。
随分といろいろな噺家の落語を聞きました。
普段、滅多に寄席の高座でもお目にかからない二つ目さんや真打の落語も新鮮でした。
アベマTVで2回。
これも長い尺でした。
春風亭一之輔のは20日間。
古今亭菊之丞のは池袋と鈴本から合計4回。
風間杜夫の湯屋番までおまけについてきました。
本日金曜日にはフジテレビが深夜枠で2時間半の落語会をやります。
6月5日 25:30~28:10の枠です。
出演者がなんといってもすごいです。
柳家喬太郎「初天神」林家彦いち「熱血怪談部」立川談笑「薄型テレビ算」
桃月庵白酒「茗荷宿」柳家三三「やかん」三遊亭兼好「強情灸」
春風亭一之輔「芝浜」桂宮治「元犬」という豪華版。
興味のある方は、フジテレビのサイトを覗いてみてください。
さらに6月中の土日は上野鈴本から寄席の全番組を無観客でライブ配信するというとんでもない企画があります。
本邦初公開でしょうね。
これは必見です。
完全にバーチャル寄席そのものです。
昼の部も夜の部もあるのです。
なんてことだ。
それも無料なんです。
もちろん投げ銭もどきはありますけどね。
パソコンの前から1日中離れられそうもありません。
コロナ禍の間、どれくらいの噺を聞いたことでしょうか。
やっぱり落語はいいなとあらためて感じ入った次第です。
落語なんていうと、年寄りの娯楽だと思っている方もいるでしょう。
ちょっと待った。
そんなことはありません。
ウソだと思ったらあちこちのぞいてみてください。
夏の落語
夏の落語会でよくやるのは、やっぱり涼しい話か、暑い噺、さらには怪談噺と相場が決まっています。
隅田川がでてくる船遊びの噺に「船徳」があります。
ご存知、放蕩の若旦那が船頭になるという滑稽噺です。
ちょうど、ほおずき市の頃、あんまり観音様までの道が照り返しで暑いので船宿から船でと思ったのが運のツキ。
満足に船を漕いだことのない若旦那が船頭だというのに乗せられることになりました。
暑苦しい噺なんですけど、どこかに川風が吹いているんですね。
扇子を櫓に見立てまして、せっせと漕ぐところまではいいのですが、船がうまく動きません。
そのあたりの様子をていねいに描写していくところが、楽しいのです。
ぼくもこの噺だけはやりたくて、随分稽古しました。
本番では汗びっしょり。
実にくたびれる噺です。
すごくパワーがないとできない落語です。
「反対俥」の次ぐらいに疲れるかもしれません。
それでも噺を終えた後はいい気分でした。
青菜に出てくるお酒は
いよいよ今回の本題「青菜」です。
ぼくもこの噺は稽古しました。
しかしまだ高座にかけたことはありません。
植木屋の親方とお屋敷の主人の会話から始まります。
「植木屋さん、ご精が出ますな」というのが最初のセリフです。
庭に打ち水をし終わった親方に、この家の主人が井戸で冷やした柳蔭を勧めるのです。
このお酒がこの噺のキモなのです。
やなぎかげ。
ご存知ですか。
親方が口にすると、これは江戸の直しという酒だということがわかります。
そもそも柳陰とは何でしょう。
簡単に言うと、みりんを焼酎で割ったカクテルなのです。
そんなの見たことがないという人はこの記事の最後に貼ったリンクをご覧ください。
ちゃんとあります。
昔は夏のお酒として、冷やして飲んだようです。
みりんの甘さが夏の暑さにあったのかもしれません。
とはいえ、誰もが口にしたものではありません。
俗に大名酒と呼ばれました。
「鯉の洗いもあるからおあがんなさい」
旦那に勧められて、下に氷が敷いてある冷たい鯉の洗いも口にします。
「ところで植木屋さん、菜のおひたしはお好きかな」
親方が好きだというと、奥様を呼びます。
すると奥方が出てきて、一度引き下がりますが、しばらくしてこんなことを言います。
「あの~、旦那様。鞍馬から牛若丸が出でまして、その名を九郎判官」
「ほぉ、そうか、それなら義経にしておけ」
植木屋の親方はなんの話をしているのかさっぱりわかりません。
話のワケを聞くと…。
いやあ、親方、実は食べてもらおうと思った青菜がみな食べて無いそうだ。家内が、菜(名)を食ろう(九郎)判官と言ったので、よしにしておけというところを義経にしておけとそう言ったのです。
「いわば隠し言葉のようなもんです」
家に戻ってからの珍事
すっかり感心した植木屋は家に帰りこのことを話すと、女房もそんなことぐらい言えるといいます。
どうしても最後の隠し言葉を使ってみたかった親方。
風呂の誘いに来た友達の竹さんに柳陰だといって酒を飲ませ、鯉の洗いだといってはイワシをふるまいます。
最後に嫌いだという菜を無理やり勧めて、持って来るように奥に向かって叫ぶのです。
次の間がないため、押し入れの中に入っていた女房は汗びっしょりになったまま飛び出してきます。
竹さんが驚いたのなんの。
さらに女房は「鞍馬から牛若丸が出でまして、名を九郎判官義経」とつい言ってしまいました。
植木屋の親方はしばらくうなって「弁慶にしておけ」と叫ぶのです。
付け焼刃ははげやすいの典型的な噺です。
落語にはこういうネタがいくらでもあります。
子ほめなんかはその代表でしょうね。
さて柳陰です。
みりんと焼酎を同率で割ると、かなり甘いみたいです。
ちょうどいいのは1:2ぐらいだとか。
本当のことを言うと、ぼくはまだ飲んだことがありません。
今年は是非チャレンジしてみようと思っています。
みりんも高級なホンモノでないとダメです。
みりん風味というのは合成したものです。
あれはNG。
きちんと醸造したものを用意してください。
それとちゃんとした焼酎。
ちなみに若手落語家がチャレンジした動画がYoutubeにありました。
林家はな平さんの「落語DEヨイショ!」というのです。
【落語講座】柳蔭を作ってみたがそれです。
興味のある方はちょっとググってみていただけますか。
実においしそうに飲んでますよ。
なんとなく飲んでみたいと思った方は、トライしてみてください。
酒屋で簡単に買えるのがどうかわからないので、ネットにあったのを貼り付けておきます。
暇だったら、なんでもやってみようの精神ですかね。
ちょっと試してみてください。
追伸、柳家権太楼師匠の「青菜」はものすごく強烈ですよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。