【小論文】環境問題のキモはゼロ・エミッションとプラスチックフリー

学び

エントロピーを低くする

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は環境問題をさらに深く掘っていきます。

今日的課題として、いつ出されても不思議のないテーマです。

一緒に考えてみましょう。

この問題は近年ますます深刻になっています。

1番の基本はどうしたら環境を保ち続けられるのかということです。

しかしクリーンな状態にしようとしても、人類が生存する限り、環境を破壊しないワケにはいきません。

ここが環境問題の最大のポイントです。

人間が生きている限り、消費は続きます。

石油をはじめとした膨大なエネルギーを使います。

そして環境を汚染していくのです。

しかしだからといって生存をやめてしまうことはできません。

どれほど自然が豊かに見えても、我々はその内側を次第に汚しているのです。

誠に罪深い存在だともいえます。

エネルギーを消費せず、エントロピーの値を高くしないで生きていくことは可能なのでしょうか。

エントロピーという単語をご存知ですか。

westerper / Pixabay

簡単にいえば乱雑さの指標です。

エントロピーが高いということはすなわち、混沌が増しているということと同じなのです。

世界は日々、その数値を高くしています。

本当のことをいえば、どこから手をつけたらいいのか、わからないほどなのです。

ゼロ・エミッションの効果

ここで大切な考え方を覚えておいてください。

それがゼロ・エミッションです

廃棄物ゼロをめざすという考え方です。

それぞれの工場で廃棄物を極力なくす取り組みです。

実際、そんなことが可能なのでしょうか。

あらゆる産業で、何かを作ろうとすれば、必ず廃棄物が生まれます。

そこで、ある工場から生まれたものを別の工場へ移し再利用しようというのです。

これがゼロ・エミッションの概念です。

Simon / Pixabay

この循環がきちんと行われれば、環境が汚れることはありません。

1つの工場で出た産業廃棄物を、別の工場で再利用する。

まさに理想的ではありませんか。

以前は燃やしたり埋めたりして捨てていました。

しかし処分場がもうないという現実に直面した時、この考えが現実の問題として浮上してきたのです。

1つの例をあげます。

アサヒビールではビールの生産の途上で、年間37万トンの廃棄物がでます。

約80%は仕込み過程で発生する麦芽の皮です。

それを主に牛の飼料として再資源化するだけでなく、有機肥料などに転用。

また発酵工程でできる余剰酵母は医薬品や加工食品の原料にしています。

このことにより、100%の達成率を実現しました。

まさにゼロ・エミッションを実現した好例だといえます。

しかしそこまでいくには想像を超えた資金が必要です。

どの分野でも簡単に実行できるということではありません。

効率を重視する社会が進むと、再利用するより、新しく作ってしまう方が安くできるという現実もあります。

DDTの怖さ

レイチェル・カーソンは名著『沈黙の春』の中でDDTの怖ろしさについて論じています。

DDTのことを知らない世代にとっては、なんのことかという話かもしれません。

正式名称はジクロロ・ジフェニル・トリクロロ・エタンといいます。

ある年齢以上の人ならば必ず知っている強力な殺虫材です。

この薬品の名前はよく出て来るので覚えておいてください。

日本では30年前に使用禁止になりました。

しかし世界の国では今も使われているところがあります。

蚊によって蔓延するマラリアの患者を激減させたことでも有名です。

戦後、進駐軍が日本人のチフスやシラミ撲滅のため、DDTを直接身体に噴霧しました。

これでチフスが日本から消えてなくなったのです。

その結果、使用開始から30年で約300万トンが散布されました。

その怖ろしさをいち早く伝えたのが『沈黙の春』なのです。

環境問題を考える時には基本となる本です。

DDTは大変に安く、有効な薬であるため、マラリアなどを駆除するための薬として発展途上国では現在も使用されています。

どんな副作用があるのかといえば、1番厄介な点はDDTが難分解性で自然界に何百年もとどまるということです。

3D_Maennchen / Pixabay

合成化学物質の怖さは想像を絶するものです。

微量のDDTは空中に散布され、やがてプランクトンに摂取され、魚、鳥、人間と続くうちに繁殖を阻害することが明らかになっています。

猛禽類などの鳥の卵の殻がもろくなり、ヒナの死につながるという事実もきちんと把握しておかなければいけません。

北米では以前に禁止されたDDTの成分が今も五大湖で発見されるという話もあります。

何百年も自然の中にとどまる薬の怖さを想像してください。

分解しないということの良さとその怖さは表裏一体なのです。

ここにこのテーマの深刻さがあります。

プラスチックの課題

DDTと全く同じレベルで語られるのがプラスチックです。

現在、海鳥の60%からプラスチックが発見されています。

今のままの生産量が続くと、2050年までに海鳥の99%からプラスチックが発見されると想定されているのです。

Couleur / Pixabay

何が1番怖いのかといえば、生殖器系の発達に影響を及ぼすことです。

子供のおもちゃにはプラスチックがたくさん使われています。

これらがやがてごみになり、海に捨てられるということも考えられます。

さらにマイクロプラスチックとなって、海中に流れこみ、そのまま腐らずに沈殿していく可能性もあります。

永遠に腐ることはないのです。

それを海中生物が体内に取り込むことは容易に想像できるでしょう。

物質文明はとどまるところを知りません。

便利さを知った人類はそれを簡単に手放すとも思えないのです。

だからこそ、環境の問題が深刻にならざるを得ない下地があるワケです。

最も効果的なのはバイオテクノロジーの開発でしょう。

どの国でも必死に研究を続けています。

プラスチックを完全に分解する微生物が発見されるかもしれません。

しかし研究にはかなりの開発費を必要とします。

と同時にバイオ研究の怖さは、これが兵器に転用される可能性をつねに持つということです。

細菌兵器をイメージすれば1番わかりやすいでしょう。

日本軍もかつて中国大陸で細菌をばらまくという計画を真剣に画策しました。

いつの時代もバイオはつねに兵器開発とともにあります。

それは核が平和利用と同時に兵器転用への可能性を持っているのと同様なのです。

開発のための予算が莫大に必要だということになれば、どういう結果がみえますか。

現状では安くて便利なものを使ってしまうことの方が手っ取り早いという考え方もありうるでしょう。

それならばやはりリサイクルにたよるしかないのでしょうか。

これも実はなかなか完全に機能しないのが現状です。

リサイクルには人的な投資も必要です。

工場などの大規模な施設もなければなりません。

まさに現代はどこを向いても難問ばかりというしかないのです。

だからといって手をこまねいているワケにはいきません。

環境問題の難しさをまず学んでください。

どのような側面から課題文が出てもいいように準備をしておいてください。

プラスチック・フリーについては以前書いた記事があります。

最後にリンクしておきますので、あわせて読んでください。

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つねに新しい情報を仕入れること。

これに尽きます。

勉強を続けてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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