林業の問題
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
前回に続いて、国際高校のIBコース用入試問題を取り上げます。
小論文です。
グラフと数字を読み取りながら、内容を分析していくというタイプの問題です。
採点の基準は正確に表が読み取れているか。
独自性のある観察眼がそこにあるかという点です。
600字でまとめなくてはいけないので、よほどポイントだけに着目しないといけません。
国語的な読解力が必須です。
問題は以下の通りです。
東京都は平成21年に「森林づくり推進プラン」を策定し、森林循環を促すとともに、林業の経営力強化を図っている。
資料1は東京都多摩地域における人工林と天然林の割合を示している。
資料2は東京都における人工林の樹齢構成を示している。
資料3は東京都産の丸太価格の推移を示している。
資料4は「森づくり推進プラン」に掲載されている、東京都の森林施策における具体的な取り組みの例を示している。

資料1、資料2、資料3から読み取れる、東京都の林業における課題を1つ述べなさい。
次に資料4を参考に、あなたが挙げた課題に対する解決策を1つ考え、具体的に述べなさい。
その際、資料4に掲載されている「取組例」とは異なる解決策を述べること。
ここでポイントになるのが、「取組例」と違う視点を導入することです。
簡単に書いてありますが、見方を変えるというのは、それほど簡単なことではありません。
数字の流れを全体的に見た上で、資料4に全力であたる必要があります。
取組例が1~3まで示してあります。
それぞれ全く性格の異なる内容なので、正確に把握することです。
1 ブランドイメージの構築
2 効果的な情報発信
3 企業等の林業への参画の促進
ここからもう一歩飛躍して、あなたなら何をキーワードにできるかを考えなくてはなりません。
おそらく合否はこの部分の評価に大きく影響をうけるものと思われます。
どんなことがあっても、他の受験生とは違う新鮮な視点を導入することです。
notebookLMの利用
さっそく、新しいアプリのnotebookLMを利用してみることにしました。
必要なのは国際高校のHPに掲載されている過去の入試問題のPDFファイルです。
それをコピーして、そのままアプリに貼り付けます。
しばらくすると、要約がすぐに出てきます。
その内容は次の通りでした。
2024_essayquestionこの資料は、2009年に東京都が策定した「森づくり推進プラン」に関連するものです。
このプランは、森林の循環を促進し、林業の経営能力を強化することを目的としています。
小論文の課題として、資料1、2、3から林業における問題を一つ特定し、資料4からその解決策を一つ提案することが求められています。
資料1
東京都の多摩地域における森林は、総面積51,671ヘクタールです。
そのうち、人工林が59%(30,710ヘクタール)を占め、天然林は39%(20,301ヘクタール)です。
資料2
東京都における人工林の齢級構成を示しています。
特に、11齢級以上(伐採の目安とされる)の森林が非常に多く、11-14齢級が6,030ヘクタール、15齢級以上が6,647ヘクタールとなっています。
これは、成熟した人工林が多いことを示唆しています。
資料3
東京都で生産された木材(ヒノキとスギ)の価格の推移を示しています。
全体的に木材価格が下落傾向にあります。
例えば、ヒノキ材は1989年の52,500円/m³から2021年には12,474円/m³まで大幅に下落しています。
スギ材も28,410円/m³から22,418円/m³に下落しています。
資料4
「森づくり推進プラン」における東京都の森林施策の具体例が示されています。
これには以下の3つの取組が含まれます。

取組例1: 多摩地域で生産された木材(多摩産材)のブランドイメージ構築、PR活動、「東京」の名称認識、品質認証制度の導入。
取組例2: 木材製品を展示するショールームの設置、情報発信、多摩産材や国産材の積極的な利用推進。
取組例3: 企業等の森林への参加促進。企業の森づくり活動への参加を通じて、多摩産材利用による二酸化炭素吸収量の数値化と都による認証付与。
これらの資料は、東京都の森林、特に人工林の現状と、林業振興に向けた具体的な施策について情報を提供しています。
この他にポイントをまとめた8分ほどのポットキャストがあります。
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実になめらかな会話になっているので、驚くことでしょう。
生成AIはここまで来ているのです。
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森林問題の解答例
東京都の林業における問題点として、木材価格の長期的な低迷が挙げられる。
資料3が示すように、1989年以降、主要な国産木材であるスギやヒノキの価格は大幅に下落している。
2021年にはヒノキが12,474円/m³、スギが22,418円/m³と低水準である。
この価格の低迷は、林業経営の収益性を著しく悪化させ、適切な森林管理や木材の搬出・利用を困難にしているのだ。
その結果、資料2が示すように、東京都の人工林の多くが伐採期(11齢級以上)を迎えているにもかかわらず、経済的採算が取れないために伐採が進んでいない。
森林資源の循環が停滞しているという問題が生じている。
この問題に対する解決策として、資料4に示される「ブランドイメージの構築」「情報発信」「企業参画の促進」とは異なるアプローチを提案したい。
それは、東京都内で伐採された木材の加工・流通体制を強化し、都内での地域材利用を促進する「地産地消型サプライチェーン」を構築することである。

具体的には、都内に高性能な木材加工施設(製材所や乾燥施設など)の整備を支援し、中間流通コストを削減することを意味する。
さらに、都内の公共建築物や民間建築において、地域材の使用を義務化または奨励する制度を導入する。
その結果、安定した需要を創出し、供給側の採算性を向上させることができる。
これにより、林業経営の安定化を図り、豊富な人工林資源の有効活用を促進が進むに違いない。
森林の適切な維持管理と持続可能な循環型林業を推進することが可能となるのである。
独自の視点が大切
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しかしこれで合格と簡単にいえるかどうか。
そこがこの試験のカギでしょうね。
どこまでいっても生成AIには限界があります。

ここでは、論点以外の方向として地産地消を推進しています。
中間マージンの削減は確かに大切なことです。
その内容をあなたはどこまで実感を持って書き込めるか。
それもここでの課題となります。
かなりの知識が必要なことはいうまでもありません。
今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。