【通信制高校】12人に1人が進学する時代になった背景には社会の認知度が

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12人に1人

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

現場にいると、時代の変化をまざまざと知ることができますね。

最近、特に気になるのは不登校の生徒が増加していることです。

数年前にはコロナ禍で休校が続いたりしたことも、大きな原因となりました。

学校は再開されたものの、なんとなく友人関係がぎくしゃくしたりしたこともあったでしょう。

同じ教室で、授業を次々と受けるという態勢に疲れを覚えることも当然あったに違いありません。

以前よりも住環境がよくなっている家庭においては、むしろ家にいることの安逸さを知ったということも考えられます。

と同時に、リモート授業に対応できない家庭があることも、浮き彫りになりました。

日本の学校教育は、どこまでいっても画一的な指導に重点がおかれています。

独自の視点でテーマを追求しようとしても、なかなか認められないことが多いのです。

性格や、所作などが少しでも集団にあわないと、日常的ないじめや、からかいなどの対象になりがちです。

日々の繰り返しの中で、学校に対する不適応も増幅される傾向があるようです。

その背景には近年の少子化が考えられます。

子どもの頃から集団になじめない生徒が増えているのです。

この傾向はこれからも増え続けていくに違いありません。

毎日のように不登校の生徒の情報を聞いていると、どうしてここまで生徒の耐性がなくなったのかということに驚きを覚えます。

幼年時代から、よほど大切に育てられてきたのかとも感じますが、それだけが原因でないことは明らかです。

不登校は日本の社会の縮図なのかもしれません。

学校は社会の鏡

社会の構造が明らかに変化している、と考えるのが妥当ではないでしょうか。

現代では、中学校から高校へ進学するのはごく当たり前のことです。

しかし経済的な理由や学力的な理由から、それがかなわない生徒がいることも事実です。

そうした生徒は以前ならば定時制へ進学しました。

しかし現在は多くの生徒が通信制を選択します。

全国的に閉校する定時制高校が相次いでいるのです。

東京都でも、拠点になるアクセスのいい学校を残して、他の学校は次々と姿を消しました。

それに反して、通信制高校の生徒数は、公立私立あわせて約18万から19万名で推移してきましたが、2020年度に初めて20万人を超えたのです。

ここ数年は毎年1万人以上の増加が続いています。

昨年8月に発表された調査結果では通信制高校の生徒数が、「26万4797人」(公立校57,255人、私立校207,542人)に達しました。

Wokandapix / Pixabay

前年度から2万6530人増えた計算になります。

特に3年生での伸びが顕著です。

これは途中で通学をやめ、転校した結果によるものと思われます。

とにかく高校卒業の資格が欲しいというのが、その理由でしょう。

公立と私立を比べると私立の方が圧倒的に割合が多いです。

パンフレットを見ていると、名前を聞いたことのない学校があまりにもたくさんあることに驚かされます。

登校拒否の傾向が強い生徒にはさまざまな要因があります。

いじめなども原因の1つですが、それ以外に多いのが発達障害、学習障害の場合です。

以前は表面化しなかったケースもありますが、他に選択肢がなかったため、無理をして全日制へ通った割合も多いと思われます。

その結果として、不適応になり、定時制への転校を学年途中でしたり、退学をすることもありました。

ぼく自身、そういうタイプの生徒を何人か面倒見た経験があります。

現在はそこまで無理をして進学を強制させられることもなくなったともいえます。

社会の認知度

さまざまなことがオープンになり、それを社会が受け入れる余裕もできたのでしょう。

特別支援の少人数教育や、学習障害の生徒を個別に指導するシステムにも、各自治体は力を入れています。

その延長線上にある学校として、通信制が浮かびあがってきたのです。

社会もそうしたシステムを受け入れることに、抵抗がなくなったと考えるのが自然でしょう。

通信制高校はいじめや発達障害に理解があります。

学習環境も自宅近くのサテライト教室を利用したり、リモートでも可能です。

毎日、登校する必要もないので、精神的にもゆとりが持てます。

スポーツや芸術方面、その他進みたい方向が決まっていて、それに専念したい生徒にとってもチャンスがあるのです。

ではどのような学校が実際にあるのか。

近年、大規模な学校が出現したことで、マスコミも俄然注目するようになりました。

生徒数が1万人を超える広域型の通信制高校まで出現したのです。

具体的な名前を挙げてみましょう。

1位:N高等学校 約15,000人
2位:クラーク記念国際高等学校 約11,000人
3位:学校法人KTC学園 屋久島おおぞら高等学校 7,600人
4位:第一学院高等学校 6,200人
5位:星槎国際高等学校 5,300人

生徒数の概算を入れてあります。

この中でもっとも生徒が多いのはN高等学校です。

2位は甲子園野球で校名を聞くこともある、クラーク記念国際高等学校です。

テレビやネットでの広告を見た人も多いのではないでしょうか。

N高校の通学コースの場合、生徒が通えるキャンパスは全国各地に点在しています。

都合のいい、自分の通いたいキャンパスに所属すればいいのです。

本部は沖縄県うるま市伊計島にあります。

HPをみれば、規模の大きさに驚くと思います。

運営の方法は、角川とドワンゴの協力事業という性格が如実にあらわれています。

現在、茨城県つくば市に本部のあるS高校と合わせると、両校で生徒数は27000名を超えているのです。

これがまさに現代なのでしょう。

メリットとデメリット

制服もなく、登校に伴うストレスもかなり軽減されることは十分に想像がつきます。

しかし問題が全くないワケではありません。

➀学費が全般的に高い

②コミュ力のない生徒にとっては、友人がつくりにくい。

③サポート校などあわせて通わないと、学業を放棄してしまう傾向がある。

サポート校というのは、通信制高校の卒業に向けたサポートを行う学校のことです。

元々、学校に興味や関心の薄い生徒や、友人をつくりにくいタイプの人のために、手厚いバックアップをしてくれる学校なのです。

学習計画の作成や1人では進めにくいレポート作成などを、サポートしてくれるのです。

学業の内容だけでなく、精神面のサポートにも取組んでくれます。

マンツーマンの指導があって、はじめて通信制高校の卒業が可能になるのです。

ここまでやらなくてはならないのかと考える人もいるでしょう。

しかしこれが現在の姿です。

黙って手をこまねいていれば、入学した通信制高校も退学してしまうケースがあります。

当然、その後にやってくる社会での自立もままならないことになるのです。

通信制高校にもそれぞれの特徴があります。

大学受験に特化したコースもあれば、純粋に高卒の免許だけに目標を置く学校もあるのです。

考えてみれば12人に1人という選択は、重いです。

120人の在校生がいれば、そのうちの10人が通信制に進学するのです。

この数字は、ぼくの実感とほぼ同じですね。

高校を卒業していないと、社会生活を営むためには、かなりのハンディがあるのは事実です。

通信制高校の存在が、その背後を支えているのは間違いありません。

あるいは先端的な役割も同時に果たしているのです。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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