入試に必要な表現
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は小論文と語彙との関係について語ります。
論文を読んでいると普段あまり使わない表現がよく出てきますね。
しかしわからないからといって曖昧なままにしておいてはいけません。
それがキーワードになる場合がとても多いのです。
知らなかったら、残念な結果を導きます。
大切な表現は意味を含めて、自在に使えるようにしておきましょう。
小論文には哲学的なテーマがよく出題されます。
どう生きるかについて問うような問題には必ずそれに伴う難解な表現がつきまとうのです。
それらを全く知らないというのは論外です。
小論文に挑む姿勢が不十分だと言わざるを得ません。
この言葉は聞いたことがある、読んだことがあるという受験生はたくさんいるでしょう。
しかし意味がよくわからない。
使ってみようと思っても、残念なことにお腹に入っていなくては無理です。
完全に咀嚼しきれていないままではダメなのです。
中途半端なままにしておくとどうなるでしょうか。
自由にはならないですね。
誠に無念です。
この言葉を小論文の中へうまく取り込めたら、もっとわかりやすい文章になるはずなのに。
そう思いながら、書き終わったりしたことはありませんか。
現代を論じるということは、まさにこうしたキーワードと対峙することを意味しているのです。
では具体的にどのような表現があるのでしょうか。
少しだけ例をあげます。
ここに提示した言葉の意味がわからない場合は、それを使った文章とともに理解してください。
ただ言葉だけを暗記しただけではNGです。
必ず使い方をきちんと把握しておくことがポイントです。
代表的な表現
いくつかあげてみます。
どのくらい意味がわかりますか。
ここにあげた言葉を使って短文を作ってみてください。
すぐにできるようなら既に十分な実力を持っています。
①パラダイム、②ポストモダン、③アイデンティティ、④モード、⑤アーキテクチャー、⑥リテラシー、⑦アプリオリ
漢字のものではなく、全て横文字の言葉ばかりを取り上げました。
すぐにアルファベットで書けるくらいの人なら、ある程度内容の理解は進んでいることと思われます。
英語力とも連動していることがよくわかりますね。
直訳すればすぐに使えるものもあります。
論文の中で最もよくでてくる表現はやはり③アイデンティティでしょうか。
自己同一性と訳していますが、その内実は多様です。
わかりやすくいえば、自分が自分であることをどう証明するのかということです。
現代を生きる私たちはつねに自分らしく生きるための方法を模索し続けています。
それだけにこの表現はずっとついて回るのです。
その他、よく使われるのが⑥リテラシーですね。
読み書き能力のことです。
メディア・リテラシーといえば、メディアの持つ真偽をきちんと判断し把握できる能力を持っているかどうかということを判断する時に使います。
⑤と⑦は辞書の意味そのものです。
ご自身で調べてみてください。
ポストモダン
②のポストモダンは使い方が少し難しいです。
近代(モダン)が終了した後の次の時代をさします。
文化や思想の考え方を再検討し、高度資本主義社会、情報化社会の中での人間の生き方を考える時に使います。
通常は20世紀後半からポストモダンが始まったと言われています。
急激な価値の転換が起こりつつある時代の中で、人はどう生きればいいのか。
まさにポストモダンを生き抜く知恵はどこにあるのかというテーマなどの時によく使われる表現です。
過去問の中にこの表現があったかどうかを調べてみてください。
無理に使い慣れない言葉を入れる必要はありません。
むしろ課題文に出てくる可能性が高いという理解をしておいて欲しいです。
問題は①パラダイムと④モードです。
特にパラダイムという表現は使いなれない言葉ではないでしょうか。
わかりやすく言えば、広く共有されている思考の枠組みや考え方のことを言います。
時代の変化に対してパラダイムを転換するといった使い方をします。
今までの考え方が通用しなくなるということが多くおこっています。
ジェンダーの問題など以前にはそれほど大きく論じられませんでした。
それが今ではごく普通の日常的な会話にも登場します。
マイノリティだった人々が自己主張をし始めたということもパラダイムの転換と考えていいでしょう。
ポストモダン社会になって従来のパラダイムから脱却する必要があるというテーマがいくつも出題されています。
その中のどれか1つを取り上げるだけで、小論文の課題になる重要な問題です。
大切な言葉の周囲には多くの現実があります。
きちんと認識しておいてください。
モードの意味
最後に④モードについても考えてみましょう。
簡単にいえば様式のことです。
ある時代、社会、集団において、生活、文化などの面で共通してみられる型のことです。
高度資本主義社会の前提となる大量消費は、広告などでモードを作り出すことによって作られています。
消費の欲望を新しくかきたてることに支えられているのです。
もちろん、ファッションだけに使われる言葉ではありません。
何がはやっているからいいというのではなく、人為的にそれをはやらせることで、社会の雰囲気を作り出していくのです。
広告の打ち方をみていれば、その企業がどのような方向で時代を感知しているのかを知ることができます。
ただ安い衣料品を売るのではなく、そこに企業のコンセプトをどう織り込むのかということが大切です。
ユニクロなどがいい例ですね。
ただのファーストファッションの衣料メーカーだと考えていると、突然斬新なデザイナーとコラボして広告を打ちます。
時代に対する感覚が研ぎ澄まされているのです。
そこに消費者は新しさを感じます。
全てのものが欲しいというのではなく、特定の自分らしさを強調してくれる商品にだけ、現代人は群がります。
まさにモードをきちんと読み込んだ商売がなされているワケです。
同じことは無印良品などにもいえます。
ニトリなどと競合しないように、商品の微妙なズレをいつも意識しています。
そこに新しい生活に対するニーズがあると読み込んでいるからです。
北欧テイストの暮らしが新しいモードであると判断したら、一気にそこへ照準をあてるのです。
言葉はその背後に現代の現象そのものを抱え込んでいます。
自分の知らない新しい単語が出てきたら、必ず調べて自分の頭の中の辞書に格納してください。
その繰り返しが本番でも劇的な効果をあげます。
言葉をもて遊んではいけません。
しかし知らない表現を効果的に使うことはできない相談です。
どうぞ勉強を続けて下さいね。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。