【青いバラ誕生】科学の力と美との争いは【キメラ・遺伝子・AI】

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存在しなかった青いバラ

みなさん、こんにちは。

ブロガーのすい喬です。

今回は20年も前に出版された本について書きます。

なぜかどうしても文章にしてみたかったのです。

『青いバラ』がその本のタイトルです。

著者はノンフィクションライターの最相葉月さん。

彼女はこの本の前に『絶対音感』という本で小学館ノンフィクション大賞を受賞しました。

その勢いにのって書いたのが『青いバラ』なのです。

最相さんはこのノンフィクションを書くために3年をかけたそうです。

どうしても青いバラの存在が気になって仕方がなかったのだとか。

なぜそれほどに惹かれたのでしょうか。

その理由は実のところはっきりしないのだそうです。

それにもかかわらず興味を持ちました。

ちなみにカーネーションにも青はありません。

実際、この品種を作り出せたらそれだけで数億円の値打ちがあると言われてきました。

その後の特許料を考えると、法外な利益を生み出せるという話だったのです。

みなさんは花屋さんで青いバラをみかけたことがありますか。

きっと探せば目の前にあるんでしょうね。

ぼくはあまり気にしたことがありませんけれど。

ネットなどで調べると確かにあります。

ただし値段が高いです。

バラはもともとそれほどに安い花ではありません。

しかし赤いバラに比べると明らかに値が張ります。

なぜなのか。

そこにはいろいろと謎があるのです。

不可能

現在世の中に出回っている青いバラは、正確に言うと藤紫色です。

青いバラの話はギリシャ神話にも出てくると言います。

長い間、ずっと不可能の代名詞として使われてきました。

ちなみに英語ではズバリありえないことを意味します。

彼女はどうしてもその秘密を知りたくて、バラの育種家では世界屈指の鈴木省三さんをアポなしで突然訪れます。

品種改良の可能性を直接、鈴木さんに会って聞こうとしたのです。

なぜ青いバラが世界に存在しないのか。

その理由は、色の要素となる特殊な物質、アントシアニンがもともとバラの品種の中にないところから来ているようです。

バラの遺伝子に酵素の発現命令がないということは、既に随分前からわかっていました。

しかしそのことより一番衝撃的だったのは、鈴木さんが最初に呟いた一言でした。

「もし青いバラができるとして、あなたはそれを美しいと思いますか?」

この問いかけの前に最相さんは何も言えなかったそうです。

現代の科学は不可能を次々と可能にしていきます。

最先端では怖ろしいような研究をしています。

その1つが動物と人間との合成です。

今年、中国と米国の研究チームが、世界で初めてヒトの細胞をサルの胚に注入して異種の細胞をあわせもつ「キメラ」を作り出しました。

キメラとは同一個体のなかに遺伝子型の異なる組織が互いに接触して存在する現象をいいます。

カニクイザルの受精卵を分裂が進んだ胚の状態まで成長させ、ヒトのiPS細胞を注入したのです。

サルとヒトのキメラをつくり、培養皿で育てました

1日目には132の胚でヒトの細胞が確認され、10日目でも103の胚が成長を継続していたといいます。

19日目には3つにまで減りましたが、成長した胚には、多くのヒト細胞が残ったままだったというのです。

考えてみれば怖ろしい話です。

この研究の持つ意味がわかりますか。

明らかに人間は神の領域に達しようとしています。

科学の力

科学は次々と不可能を可能にしてきました。

2004年、サントリーの子会社、サントリーフラワーズとオーストラリアの植物工学企業との共同研究開発により、世界で初めて完成した青色の色素を持ったバラが生まれました。

遺伝子組換え技術により誕生したのです。

2008年には正式に承認を得ました。

2009年から「アプローズ」のブランドで切花として全国の花屋さんで発売されています。

アプローズは拍手喝采を意味します。

その時から青いバラの花言葉は「夢かなう」になりました。

「不可能」からの転身でした。

kbt1016 / Pixabay

長い間、育種家として生活してきた鈴木さんには、むしろ他の人には見えない科学の先端が見えていたのでしょう。

まだ青いバラが地球上になかった時、それが出現したら、美しいと感じる心が存在するのかどうか。

それを最相さんに訊ねたというワケです。

日本でも代理出産などの話はかなり耳にするようになりました。

初めに注目されたのは、2003年にアメリカで女優の向井亜紀さん、元プロレスラーの高田延彦さん夫妻に双子の男児が生まれた事例です。

国内では現在も認められてはいません。

生まれた子供に対して、愛情をどうコントロールすればいいのか。

誰も教えてくれないのです。

訴訟も起きています。

科学は時に残酷な結果をもたらします。

AIの時代

青いバラを作り出せることと、それが美しいのかとは全く別のものであることを育種家の鈴木さんは教えてくれました。

それと同じことがAI時代を生きる人間にとっても深刻な問題になろうとしています。

人工知能が広まるにつれ、職業の選択も隋分と変化していくでしょうね。

かつてあった仕事がどんどん様変わりしていくのは間違いありません。

自動運転が可能になれば、多くのドライバーが失職します。

その他、コンピュータにできることは全て任せるということになるでしょう。

会計、監査、事務、法律、医療などの多くの分野にどんどん進出していきます。

店舗の従業員にしても今ほど必要がなくなります。

既に1部の店では全てのレジ処理を自動でカメラとコンピュータが行っています。

セミセルフレジの普及も急ピッチで進んでいます。

これからも消えていく職業が増えるでしょうね。

バラの話に少しだけ話を戻しましょう。

厳密にいえば、バラは青いワケではありません。

赤紫だと書きました。

現在もより青くするための研究は進んでいます。

それではなぜ花屋さんで売られているバラには真っ青なものがあるのか。

染色しているのです。

花びらの繊維質の中に青い顔料を吸わせるのです。

だから葉は緑ではなくなります。

それでも人は不可能を可能にし、さらに「夢かなう」と呼びたかったのです。

ここにもしかしたら科学と人間の根深い溝があるのかもしれません。

キメラの研究がやがて人間の存在を脅かす危険もあります。

生物学的な問題だけではありません。

倫理的な課題になり得ます。

現在のコロナ禍をみれば、あっという間に人間の世の中が変化していくのがわかります。

怖れることが同時に必要である所以ですね。

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今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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