【チャットGPT】国語の授業で試みに扱ってみたという新聞記事を読んだ

学び

全方位外交のアプリ

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はちょっと自分の言いたいことを書きます。

ここ数か月の間にチャットGPTの記事を何本か書きました。

最初はどの程度のものかわからなかったので、手探りでした。

しかしいろいろな質問を投げかけ、解答を得る作業を何度か繰り返しているうちに、次第に熱が冷めてきたのも事実です。

なぜか、自分でも考えてみました。

理由はある程度わかっています。

つまり回答があまり面白くないのです。

どの方面からも批判されないように、いい顔をしすぎるし、誤りも結構あります。

全方位外交といえば、それまでかもしれません。

悪い言い方をすれば、役人の書く文章に似ています。

絶対に突っつかれないように、周囲にたえず目を配っているのです。

ちょっと痛々しい印象を受けます。

それだけならいいのですが、最も味わいの出る独創性の部分を全て削ぎ落してしまっています。

今日の新聞に、チャットGPTを使った授業の実践例が載っていました。

題材は『枕草子』の中の類聚段を応用したものです。

必ず教科書にいくつか取り上げられていますね。

「うつくしきもの」「にくきもの」など、清少納言の目にとまったものを1つ1つ取り上げて、それを批評した段です。

たくさんありますので、彼女のセンスの幅を読みとるには最適なのです。

それを自分の言葉で考え、さらにチャットGPTにも答えさせようというのです。

これと同じ試みは「春はあけぼの」「夏は夜」といった序段の一部分をAIに答えさせ、それを批評しようという試みをした例もありました。

新聞記事本文

これは2023年6月9日、毎日新聞に掲載された記事です。

その一部分を簡単に紹介しましょう。(教員名、学校名などは伏せてあります)

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国語教師が対話型人工知能(AI)サービス「チャットGPT」など生成AIの活用に乗り出している。

古典の作品を読んでAIの判断と生徒の感性を比べる授業に取り組んだり、オンライン勉強会を開いて授業法の研究を進めたりしている。

専門家は「活用はさらに広がるだろう」とみている。

5月下旬、とある中学の2年生の教室。

国語科のW教諭が自身のパソコン画面をスクリーンに映し、古典「枕草子」を読む授業を進めていた。

作中に出る「うつくしきもの」(かわいらしいもの)の表現から、清少納言の美意識を考える内容だ。

生徒たちには「自分がかわいらしいと思うもの」を作文にまとめてもらい、授業の冒頭で先生が一人一人の回答を紹介した。

「ハムスターのあくび」「自分のしっぽを追いかける犬」「推し(好きなアイドル)がかわいい」。

感性あふれる回答に、生徒からは笑いも起こったが、授業の本題はここからだ。

「同じことをチャットGPTに聞いたらどう答えるだろう」

W教諭が生徒に課した内容と同じ文面をパソコンに入力した。

「一般論しか言わない」

<小さなパンダの赤ちゃんが、木の上でひょいひょいと身軽に動き回っている姿。その手足のしなやかさと無邪気な表情は>

瞬く間に打ち出されていくAIの作文に「おお」「すごい」と声を上げる生徒たちに対し、先生は「AIと人間の答えは何が違うと思いますか」とさらに問いかける。

その後グループごとに話し合うよう促した。

生徒たちは、「AIは一般論しか言わない」「人間の答えの方が個性がある」と自身や友人の答えとAIの文章を見比べながら、「かわいらしいもの」の判断基準を巡る議論に熱中した。

「推し」のアイドルやキャラクターに抱く感情からAIとの考えの違いを探ったTさんは「世の中で『かっこいい』と思われている人に対して自分は『かわいい』と感じることがある。

多数派を想定したような意見を出すことが多かったAIからは、私のような答えは出てこないかもしれない」と話した。

「春はあけぼの」の授業例

もう1つの実践例をあげます。

「春はあけぼの。ようよう白くなりゆく山ぎわ少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」という文章は誰もが知っていますね。

中学校で最初に習う古文の1つです。

それを小学校6年生を相手に教え、さらにそこから自分の文章を作るという授業をした例です。

最初にチャットGPTを使い『枕草子』の序段を作り替えたら、どのようなものになるかを実践しました。

古語などを知らない生徒にとっては、ユニークな体験だったでしょうね。

英語の文章を翻訳したものが中心で、プログラムもそれに対応しているということを知りさらにいろいろと試したそうです。

その結果が次のようなものでした。

春の日差しに包まれた山道を歩き出す。
道の隅々には新緑が芽吹き、そよ風に揺られている。
そんな中、山頂に向かって踏み出す足音が響き始めた。

これが1つの着地点だったとか。

westerper / Pixabay

ここまで到達するのにかなりの時間を費やしたそうです。

古文の文法は全て抜け落ち、完全に現代の言葉になっています。

いろいろと試行した結果、生徒たちは結局自分で創作してみようという話になったようです。

きっと教師はその結論を狙っていたのかもしれません。

結果は以下の通りです。

小学校6年生の生の声です。

夏はアイス。日差しでのぼせたその体、覚ましてくれるシャーベットやアイス。かき氷でも良き。だが急げばアイスクリーム頭痛を引き起こすのが玉に瑕。食べても食べても腹の虫が騒ぎゆる、腹痛まで起こしたくないため打ち切りなり。

春はあげもの。からっとあがりゆく油は少し明りて金色たる衣が旨さをひきたてる。からあげを食らいて次に手を出すはポテトなり。Mの店で、ビックマックとともに少ししなびゆくポテトを二つ三つと共に食らう。

冬は正月。雪が降り、寒い冬休み、こたつの中でみかんをを食べて過ごすのもをかし。皆でかまくらをつくりて、雪合戦で冷えていた体に汗を流し、負けても楽し。夜に鍋を食べ心も温まり、しめにうどんを食べるも美味し。

人間の持つ想像力の豊かさに脱帽ですね。

生成AIの未来

チャットGPTと多くの人達が日々格闘しています。

ぼく自身も小論文がどの程度のレベルになるのかは、非常に関心があります。

行政系の諸機関も、将来の可能性を感じているに違いありません。

現状が不十分だからといって、甘くみるのは危険です。

人間を超えるかどうかというレベルではなく、相当程度の内容まで踏み込んでくる可能性を持っていると思います。

AIをなめてかかっては危険です。

しかしだからといって、ひどく怖れる心配あるのかどうか。

現状では全くわかりません。

これから様々な場面で利用されることは間違いありません。

学校現場でも使われるでしょう。

しかしあくまでも補助的な役割にとどまるのではないでしょうか。

誤認のケースが少なくなっていっても、そこに人間の持つ複雑な感情を全て網羅することは難しいと感じます。

AIがシナリオや芝居を書く時代もやがては来るかもしれません。

しかし肯定形を使いながら本心では否定し、否定形を使いながら、肯定するといった人間の感情の複雑さまでを追いきれるとは思えません。

おそらく清少納言が生きていたら、新しい段を設けて、そこにチャットGPTとの対話を書き上げたことでしょう。

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それも読んでみたい気がしてなりません。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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