【戒老録・曽野綾子】計画通りの人生なんてありえない【痛快な本】

戒老録

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は作家、曽野綾子さんの本を取り上げます。

こういう著書があるのをつい最近まで知りませんでした。

なんということなしに、評論家、佐藤優氏の本を読んでいたら出てきたのです。

彼は神学科で学んだキリスト教に造詣の深い人です。

その中にたまたま、曽野さんの著書の話が出てきたのです。

この本は役に立つと書いてありました。

タイトルが『戒老録』とありますので、かなり難しいことを論じているのかというのが最初の印象です。

元々はノートに本当に自分のためにだけ綴っていたそうです。

そのうち、どういうわけか出版されることになり、その後もずっと改訂を続けたのだとか。

したがって最新刊のタイトルもだんだん長くなってきました。

現在売られている本は『完本戒老録・増補新版』というのです。

昭和47年に出版されてから、現在に至るまで売れているということは、そこに並々でない真実があるということです。

彼女は現在93歳です。

夫、三浦朱門氏はとうに亡くなられました。

ベストセラーになったエッセイ『誰のために愛するか』が時代をリードしたこともありましたね。

彼女によれば、年をとるということは「もらい」「与え」「もらう」の第3段階に入ったということなのだそうです。

赤ん坊の時はひたすら親から「もらう」ことを繰り返します。

その後、今度は自分が誰かに与える時代が続き、やがて老年になります。

そこからは再び「もらう」時間が始まります。

つまり老いるとは「もらう」生活が再び始まったことを意味するのです。

人間は最後まで不完全

彼女によれば、人間は自信がないまま、生涯を享受して亡くなる、ただそれだけの存在だということです。

だからこそ、感謝を忘れてはいけないんでしょうね。

いつも1つのプロセスの上を歩いているワケです。

その過程を愛するしかないというのが真実でしょう。

確かにそんな気がします。

完全な人生などということはあり得ません。

老年になって「人間の生涯」をたくさん眺めてみると、秀才も凡人も一生にしてきた仕事の量はそれほどかわらないといいます。

きっと人間にはできることの限度というものがあるのでしょう。

社会的に功績の多かったひとは、家庭人としては失格だったとか。

あるいはその反対もあります。

持ち時間の総量はそれほどに変化がないのかもしれません。

結局自分の一生をコントロールする能力が身についているのかどうか。

そこが1番のポイントになるのでしょう。

この本にはたくさんの小見出しがあります。

大きくは「きびしさによる救済」「生のさなかで」「死と馴れ親しむ」の3つの章に別れています。

最も面白かったのは、最初の2つでした。

最近、和田秀樹氏の本がよく売れているそうです。

70歳、80歳、90歳と次々に年齢の入った新書がベストセラーです。

かつてはこのような数字を入れた本は全く売れなかったとか。

これも時代なのでしょうか。

高齢化社会、ここに極まれりということなのです。

若い世代の人との付き合い方

誰でもが口にする言葉があります。

それは何か。

若い世代は自分より忙しいのだ、ということを肝に銘じなさいという内容です。

だからこそ、人にしてもらうのを当然と思ってはいけません。

話をきいてもらえるということは、相手の人生の時間を奪うことです。

そこで過去の自慢話などをするのは、もっての他ですね。

グチも同じ。

聞いていて愉快になるグチはありません。

当然、人が寄ってこなくなります。

若い人はとにかく忙しいのです。

身体も俊敏に動きます。

彼らと同様にできるワケがありません。

嫉妬してもムダです。

bgphotographyllc / Pixabay

年齢を重ねると、自分が正しいとつい思いがちになるものです。

これもNGですね。

なにかとマウントをとろうとしたりすると、それだけでもうアウトです。

仲間に入れてもらうなどということは考えられません。

なるべく話を聞く役に回ることです。

そうすれば、相談にのってくださいと相手から、声をかけられるケースもあります。

簡単に書きましたが、やってみると、ここに示したことは非常に難しいのです。

なんとなくできそうで、できません。

過去の経験がつい顔を出して、余計なことを言わせてしまいます。

それをモグラたたきのように自分で潰す。

その繰り返しなのです。

1人で遊ぶ

自分1人でできないことをやってはいけないのです。

これも大きなテーマですね。

例えばペットです。

自分で世話のできない生き物を飼ってはいけません。

お互いに不幸になります。

鳥も大変です。

メダカでも大変です。

ましてや、犬猫となると、これは日常の生活をかなりのレベルで浸食してきます。

草花も同様です。

ていればかりしていると、老化が早まるそうです。

もうひとつは、ものを残さないことです。

とにかく捨てる。

残された人々は、あとで往生します。

古着の類いはきっと着ないものばかりでしょう。

和服もそうです。

自分史も書くのは自由ですが、送られた方はどうなるか。

まして銅像などは論外ですね。

日々の暮らしは食べて寝ることから始まります。

きれいに食べる。

下着なども不潔にしない。

タオルも新しくする。

これに尽きるでしょう。

最後は歩くことです。

足から老化が始まりますのでね。

肉を食べ、仕事をやめず、免許も返納しない。

雨風を気にしていると、外出もままならなくなります。

会いたい人には早く会っておくことです。

沖の干潟遥かなれども、磯より潮の満つるが如し、とはうまいことをいったものです

冠婚葬祭もご遠慮する時代なのかもしれません。

年齢を重ねるのが、本当に難しい時代になりましたね。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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