感動のサービス
みなさん、こんにちは。
ブロガーのすい喬です。
毎日、コロナ関連のニュースばかりですね。
ワクチンの接種も思うようには進んでいません。
日本の国じたいが沈没してしまうかのようです。
オリンピック開催は狂気の沙汰だと楽天の社長がCNNのインタビューに答えたとか。
あと2か月の間にどういう動きがあるのか。
全く先が見えません。
まさに五里霧中です。
水面下ではさまざまなシナリオが描かれているのでしょうね。
しかし船頭が多すぎると船は先に進みません。
ワクチン接種の現場も難問の山です。
電話回線をしぼるとか、郵送に切り替えるなどという話が聞こえてきます。
昔からクレームは宝の山だといういい伝えがあります。
そこに商機が宿っているのです。
ものを販売する会社には必ず苦情処理担当の部門があります。
もちろん、目的化してしまったクレームでは困りますけどね。
しかし少しでもよかれと思ってメールや電話をしてくるお客を大切にしなければ、企業は生き残れません。
商品に対する思い入れが強いからこそ苦情もあるのです。
解決さえすれば、必ず良質の顧客になってくれるのはまちがいありません。
少し関連の本を読みましたので、それとあわせて最近身近にあったことを書きます。
帝国ホテル
『帝国ホテル・感動のサービス』(宇井洋・ダイヤモンド社)という本はなかなか含蓄の深い本です。
読みながら、何度もうなってしまいました。
副題に「クレームをつけるお客様を大切にする」とあります。
それぞれの担当者が開業130年を迎えたこのホテルについて語っているのです。
ぼくは以前、雑誌記者をしていましたので、いわゆる都市型ホテルへパーティや、記者会見などの用事でよく行きました。
学生時代は幾つかのホテルのドラッグストアでアルバイトもしました。
英語の勉強をしたかったのと、ホテルのシステムそのものが好きだったからです。
6月に営業を中止する九段のホテル・グランドパレスでは開業準備の時から働きました。
ここは金大中元韓国大統領が誘拐されたので有名なところです。
最初に訪ねた時はまだ絨毯にビニールの覆いがかかっていました。
ホテル・ニューオータニや新宿京王プラザホテルでも働きました。
それぞれのホテルには独特の雰囲気があり、そこで働いている人の印象も違います。
とくに関係者以外通行禁止と書かれたドアから先に入って行くわけですから、それぞれのホテルの差がよくわかります。
社員食堂もホテルによって全く雰囲気が異なってみえました。
ニューオータニの食堂は地下で、長い厨房の廊下を歩いていった先にありました。
いつも大変安くしかもおいしかったです。
洋食が多くレストランで出すようなしゃれたものが多かった記憶があります。
ご飯の量などいつも加減してくれました。
一方、京王プラザホテルの食堂は9階で、こちらはごく普通の和食を中心としたメニューでした。
今回、この本を読んでいて一番面白かったのはなんといっても客室清掃に関するところです。
今まで随分色々な外国のホテルにも泊まりましたが、本当に国によってそのサービスのレベルに差があります。
寸分の隙もないというところもあれば、実に雑なホテルもありました。
客室清掃
日比谷の帝国ホテルでは3人1組で清掃をします。
部屋に入った時、まず匂いを嗅ぐことからするそうです。
人間は案外微妙な匂いを嗅ぎ分ける能力を持っています。
そこで前泊のお客の匂いの元をすぐに消さなければなりません。
タバコ、香水、お酒など少しでも匂いがあったらすぐに客室整備係がオゾン脱臭機や脱臭液を使って完全に匂いを消すのです。
それでもダメなときはカーテンや絨毯を丸洗いすることもあるのだそうです。
これが客室清掃の第一歩でしょうか。
次はお客が残したゴミの始末です。
ゴミ箱に棄てられたもの以外は全て保管するのです。
どんな紙一枚でも大切なメモが書いてあるかもしれません。
あるいは薬や新聞、レシート、使いかけの化粧品、ボタン。
すべてがひょっとしたらお客にとってかけがえのないものである可能性もあります。
客室の冷蔵庫などに入っていたものは、保管用の冷蔵庫にしまうそうです。
1日100件近くの忘れ物にこれだけの神経をホテルは使っているのです。
本当に頭がさがります。
それだけ入念にクリーニングをした後、点検係が全く違う視点から、全てを見直し、さらに各階ごとに配置されたフロアマネージャーがもう一度最終点検をします。
床、テーブルなどの細かい汚れ、冷蔵庫の異音、見た目だけではわからない塵、ほこりなどを入念にチェックするのです。
清掃係は研修のため、自分たちもお客として何度か部屋に泊まることもあるそうです。
お客の立場から冷静に見て、どこに問題があるのかを分析します。
鏡1つでも、清掃だけしている時とお客の立場では見え方が違うといいます。
ここまでやることではじめて帝国ホテルのブランドを保てるということなのでしょう。
これに似たことがホテル内の全ての部署で行われているワケです。
クリーニング、ベルボーイ、フロント、料理人、それぞれがプライドを持って働くことで帝国ホテルという老舗の看板を守っているのです。
最善をめざす
これだけ細かい気配りをしてくれるホテルはそうはありません。
というより何事にも完璧を期す日本人だからできることなのでしょうか。
マニュアルももちろんあるそうです。
しかしそれで対応できない事例も起きます。
そんな時にもお客の立場に立って、何をしてあげることが最善かということを第一に考えていくのです。
徹底してお客の側に立ち、サービスに徹し、その結果として代価を支払ってもらうという思想がこれだけ見事に貫かれている業種は本当に珍しいと思います。
ところでぼくが一番好きだった風景は、ホテルオークラのロビーです。
ボーイが人を呼び出すためのメモをプラカードにはさみ、脇の可愛い鈴を鳴らしながら、お客の間を黙って歩いていく姿でした。
老舗にはプライドが必要なのです。
話はかわりますが、つい最近、買って半年ほどした洗濯機が不調になりました。
脱水がうまくいかずに洗濯槽が横にぶれてしまうのです。
すぐサービスに電話をしました。
数日後にやってきた担当者は実に丁寧に説明をし、必要な交換部品にすぐ取り替えてくれました。
それ以降、全ての問題は解決し、今は順調に脱水をしてくれます。
クレームの電話担当者もきちんとした対応でした。
まさにそこにこそ、商機があるのです。
何が問題なのかをすぐに察知し、丁寧で迅速な対応をすれば、再び理解ある消費者になってくれます。
ネットの時代だからこそ、表面にはあらわれない細かな配慮がますます必要になっているのではないでしょうか。
クレーマーと熱意あるコンシューマーとは明らかに違います。
その線引きも会社側はきちんとしなくてはなりません。
このあたりが今の商売では1番難しいところでしょうね。
電気製品を売っている店と、ネット販売のショップで同じ商品の価格が違うのは当たり前です。
残されたのは、まさにアフターケア、付加価値の勝負しかありません。
そこにこそ、生き残る可能性があるのです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。