不登校なんて怖くない
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は興味ある本を読んだので、その話をさせてもらいます。
タイトルは『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳になれた理由』です。
著者は田中慶子さん。
カドカワから2016年に出版されました。
なんか「ビリギャル」を連想させる題名ですね。
ここまで同じにしなくたってよかったのに。
最初2匹目のドジョウを狙った本かと思って手にとってみました。
しかし中身は全く違います。
面白かったです。
不登校の女子高生といってもこの人は日本人型の右向け右方式が嫌だっただけなのです。
勉強が嫌いだったわけじゃありません。
むしろできたのです。
だからこそ、息苦しいまでの集団主義がイヤだったんでしょう。
芝居の世界にのめりこもうとしたものの、それも中途で挫折。
偶然、アメリカのツーソンに拠点をおくNPOプログラムに参加します。
世界中から集まる600人の参加者たちが1年間旅をしながら、学んでいくというものです。
ホームステイやボランティア、ミュージカル公演などを通じて能力を伸ばすというすごい企画です。
とにかく英語漬けの日々が始まりました。
しかしそれにもやがて終わりがやってきます。
その時にはじめて心から学校にいきたいと思うようになりました。
あまりにもなんにも知らないことに気づいたのです。
ホストファミリーの応援
高校卒業後に大学に行かなかったことを夕食の時に話したのが彼女の運命を変えました。
だったらアメリカの大学に入ればいいと言ってくれたのです。
お金がないなら奨学金をもらえばいいんだからというワケです。
息子さんの通っている学校に話までつけてきてくれました。
アメリカの底力ですね。
たった2日間しか泊まらなかった家のファミリーが全部アレンジしてくれたのです。
こんなことがあるんですかね。
しかしホストマザーが話をつけてくれたのは、大学ではありませんでした。
息子さんの通っていた高校なのです。
英語力が十分でなかった彼女のために高校3年への編入を手続きしてくれました。
22歳で再び高校3年のやり直しです。
窮屈なルールの何もないアイダホの自然の中で彼女がどれほどのびのびと勉強できたのかは、本を読んでください。
そこからいよいよ本格的な勉強が始まります。
必要なのはTOEFLの点数です。
ある程度のスコアをとらなければ大学に進学できません。
さらに留学生にも奨学金をくれる大学を探す必要もあるのです。
詰め込み式の受験勉強を必死になってやりました。
最低でも550点は欲しいところでした。
しかし結果は530点。
アイビーリーグも州立大学も無理です。
奨学金なんて夢のまた夢。
周囲の人達が親身になって調べてくれました。
その結果、奨学金をもらえる小さな私立大学に入学できました。
しかしここからがまたすごいのです。
さらに転学
あまり勉強熱心な学生が多くなかったせいか、彼女はいつの間にか優等生になってしまいます。
この頃からもっと勉強したいという気持ちが募っていきました。
もっと厳しい大学に入るためにはさらにTOEFLの点数をとらなくてはいけません。
知らない単語を見るたびに必ず書き留め、歯磨きのたびに覚えて捨てるという単純作業を続けます。
ついに600点をとりました。
転学した時に最初に言われたことは、この大学では留学生といえども英語のハンデはありませんというものでした。
ものすごい量の予習をしないと授業に出られません。
何冊もの本を原語で読み通すのは無理です。
仕方なく、目次と結論だけを読み取る綱渡りのような作業を続けました。
自分の意見を言わない限り、評価に結びつかないのがアメリカのシステムなのです。
ここでも成績優秀者リストに名を連ねることができました。
本当ならそのまま大学院に残ってアメリカで暮らすことも考えたそうです。
しかし1度日本に帰って自分の力を試してみたいという気持ちもありました。
最初に就職した衛星放送の会社は企画は男性、パソコンの入力は女性という時代錯誤そのもの職場でした。
それでも企画を出し続けているうちに配置転換になったものの、結局会社が赤字で退職。
次に移った外資系のニュース専門チャンネルもやはり肌にあいません。
そんな時に昔お世話になったNPOからオファーがありました。
やっと自分の活躍する場ができたと仕事に本腰を入れた頃、突然予算不足で活動が休止してしまいます。
それからは残務整理の日々でした。
その後、偶然CNNの同時通訳に応募したところ、見事に合格。
やはり1匹狼的なところがある人なのかもしれません。
その後の活躍はどうぞチェックしてみてください。
とてもすばらしいです。
その彼女の言葉だけに英語を勉強することの本質を言い当てた数々の表現は重いですね。
CNNを聞いても上達なんかしない
英語がうまくなりたいというのはどういう意味で使っているのかと彼女はいいます。
「うまくなるって何?」ということなのです。
なんのために英語を学びたいのか。
それが明確でないと、絶対に挫折すると明言しています。
自分の生活の中で英語を何に使うのか。
ネイティブ信仰に凝り固まっていると、必ず失敗するというのも彼女の持論です。
「ちゃんとした英語」なんてないというのです。
人類始まって以来2か国語で詩を書いた天才はサミュエル・ベケットただ1人らしいです。
ご存知ですか。
あの実存主義にあふれた芝居『ゴドーを待ちながら』を書いた劇作家です。
本当の意味で語学に精通するなどいうことは考えない方がいい。
つまりほどほどにしなさいという話です。
恰好をつけていくらCNNを見ても理解できないといいます。
みんなつらくなってやめてしまうのです。
プロでも倍のスピードに伸ばして、それをさらに細分化して何度も聞き、やがてちよっとだけ切れて聞こえるようになるというレベルなのです。
それくらいに早い。
しかし何を語るのかということはいくらでも修正がききます。
これは母国語で本を読み学び続ければいいのです。
極端なことをいえばなまっていたってかまいません。
日本人の英語でいいのです。
ネイティブ英語の呪縛から抜け出ることが最も大切なのかもしれません。
その英語で何をするのか。
そこがまさに1番のポイントでしょう。
つい先日NHKのビジネス英語講座をやめた杉田敏さんは今でも知らない単語がでてくると、すぐに調べるそうです。
あれだけ英語の達者な人がです。
絶え間ない努力しかこの道にはないようです。
ネイティブではない人がつまらないジョークを言ってもおかしくありません。
そんなことより、自分の能力で真面目に一生懸命語りかける姿こそが人を感動させるのでしょう。
今回はつい最近読んだ本の感想を書かせてもらいました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
英語は自分にあった形で勉強するのが1番ですね。