「なぜならば」のヒミツ
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
文章を書くのは大変に難しいものですね。
誰でもトライしていますが、書いては消しての連続です。
とくに小論文は短いとはいえ、論文です。
なにより大切なのは論理の筋道なのです。
どこへ結論がいくのかがみえないようじゃ、どうしようもありません。
もちろんキーワードも大事。
しかしせっかく考えついたいい言葉も、論理がアイマイでは正しく評価してもらえません。
とにかく文章を明るく書ききることです。
「明るく」という言葉の意味がわかりますか。
誰が読んでもわかりやすいということです。
一点の曇りもない。
必ずこの結論に達したことが当然だと思わせなければダメです。
いやあ、この文を読んだら、こういう結論もありなんじゃないと言われてはNGです。
とにかく明晰であること。
そのために必要な言葉を惜しんではいけません。
ところで英語の文章を読んでいて気になる言葉がありませんか。
あるいは会話でもいいです。
自分が外国人と話していて、気づかずによく使っている単語。
少し考えてみてください。
そうです。
「~は~だ。なぜならば~だからだ」の「なぜならば」です。
becauseです。
それまでにそんな単語を使ったことのない人が、英語を喋ると突然このbecauseをよく使います。
そのワケは理由の説明がしやすいからです。
意味のわかりやすい文
とにかくbecauseで文をつなげると、簡単に説明できます。
わたしは犬が好きだ。
なぜならば~だからである。
聞いている人は、「なぜならば」の後は説明だなということがすぐにわかります。
こうした単語が接続語と呼ばれるのです。
もっとわかりやすく説明しましょう。
接続語とは、①語句と語句、②文と文、③段落と段落をつなぎ、前後がどんな関係であるかを表す言葉です。
ポイントは前後がどんな関係かを説明するということです。
ではどういうものがあるのでしょうか。
逆説 「しかし」「だが」などのように前と逆の事柄が後にくる関係をあらわすもの
説明、補足「つまり」「ただし」などのように前の事柄を説明あるいは補足するもの
ところで、接続語とまぎらわしい文法用語に接続詞、接続助詞というものがあります。
これらは、似たような用語ですが、文法的にははっきり区別しなければなりません。
接続語は文節の働きを指します。
接続詞・接続助詞は単語の種類を指すという点にあります。
接続詞と接続助詞は、接続語をつくることができる単語です。
「だから」は接続詞ですが、接続語になれます。
しかしここでは細かい文法の説明は省きましょう。
今回のポイントは接続語のことだけです。
とにかくわかりやすい文章を書くためには、前後の文の関係がはっきりしていなければいけません。
ところが日本語にはアイマイなものが多いのです。
受験生はその表現を使いたがる。
なぜか。
便利だからです。
頭の中がきちんと整理できない時、突然この表現を使いたくなるのです。
それはなにか。
「そして」です。
「そして」って何の意味?
実はあんまり文章のうまくない人の論文にはこの「そして」がよく出てきます。
何がそしてなのか。
前の文章からどういう関係で「そして」が出てくるのか、よくわかりません。
当人はきっといい気持ちで書いたんでしょう。
読む方は戸惑うばかりです。
「そして」は難しくいうと、「添加」の接続語です。
前の内容にさらに付け加える時に使うのがこの表現の基本です。
しかし多くの受験生は「そして」を「順接」の接続語と捉え違えています。
だからテーマが先にどんどん進んでいく時、イエスを繰り返す時、「そして~だ」を連発するのです。
読んでいる方は、それでもなんとか想像しながら先に進みます。
意味が全くわからないワケではありません。
解釈もします。
しかし元々の意味に順接はありません。
あくまでも付け加えて言う時の表現なのです。
これはNG。
全部即刻消去しましょう。
別の表現に書き換えます。
どのようにすればいいのか。
時間経過 その後 やがて かくして かくて こうして
結果 その結果 したがって そのため
言い換え つまり すなわち 言い換えれば
これらの言葉になおしてください。
なんでも「そして」を連発して文を書くのは即刻やめること。
添加というのは、別の言葉でいえば、「よって」「以上のことから考察してみると」などという意味です。
けっして順接の意味ではありません。
ぼくは結論を導く時よく「すなわち」を使います。
いろいろと意見を述べた後に「すなわち」このような結論に達したと書くと、文章が引き締まってみえます。
絶対にユルユルした文を書かないでください。
とくに小論文でこれをやられると、読まされる方はたまったもんじゃありません。
接続語をきちんと
いい文章は論理の組み立てがしっかりしていると書きました。
そのため、文章の前後関係がはっきりしていなければいけません。
短文を推奨します。
一文は40字までという記事も書きました。
ここにあげておきますので読んでください。
そうなると、ますます短文どうしの関係が重要になります。
特に順接なのか、逆接なのかはとても大切です。
その時の判断をする基準が接続語なのです。
このような表現を使ってください。
同じ表現を重ねないこと。
文章が冗長になります。
リズムが悪いと、読んでいる人が飽きます。
ここまで書いてくると、なぜ「そして」がダメなのかわかってくれたと思います。
あまりにも文の関係がアイマイなのです。
こうした接続語は他にもあります。
「あるいは」などという「選択」の接続語を並列の接続語と間違えて使うケースもあります。
似た言葉にはどんなものがあるのでしょう。
「または」とか「もしくは」などというのがあります。
「もしくは」は複数のうちそのいずれかを選ぶ場合のみ
「あるいは」は二者択一かどちらも同時に成り立つ場合
厳密に言葉を突き詰めていくと、アイマイな言葉を使うことの危険性を感じますね。
しかし受験小論文の場合はここまで、複雑に考えなくてもいいのです。
とにかく接続語をうまく使って、前後の文を正確につなげてください。
それだけで十分です。
同じ表現を絶対に繰り返さないことです。
採点官の印象がガラリとかわります。
今回はたった1つのことをいろいろな側面から説明しました。
もしあなたの文章に「そして」があったら、即刻消去。
別のもっといい、文章の関係が正確に伝わる表現を選んでください。
いい小論文が書けるようにお祈りしています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。